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主張

 

全国交流会の成果をふまえ、
部落解放共闘運動をいっそう前進させよう

「解放新聞」(2018.12.03-2885)

 11月13、14日にかけて徳島市で、部落解放共闘第35回全国交流会・部落解放地方共闘会議第35回総会が開催された。今年は、部落解放中央共闘会議結成(1975年12月)から43年、部落解放地方共闘会議結成(1997年10月)から21年を迎える。

 安倍政権は憲法をふみにじる集団的自衛権行使容認の「安全保障関連法」=「戦争法」を強行可決、成立をさせた。日本を戦争のできる国へと変節させた悪法であり、私たちはこのような暴挙を決して容認することはできない。

 さらに安倍首相は昨年、臨時国会の冒頭解散を強行する暴挙をおこなった。解散の理由は、「北朝鮮の脅威から国を守る」とか「消費税の使い方の変更などを問う」とするものだが、まったく解散理由にならない。森友・加計(かけ)学園問題で、自身との不透明な関係や関係省庁の疑惑隠しなどについて臨時国会での追及をのがれるため、自身の首相3選のため、身勝手な「大義なき」解散を強行した。総選挙の争点は、安倍政権の暴走を止め、安倍政権を退陣に追い込めるかどうかだった。しかし、民進党が希望の党に合流して闘う大胆な方針が決定され、その過程で「排除・選別」がおこなわれるなどした結果、民進党は実質的解党となり、希望の党、立憲民主党、無所属で闘う事態となった。「安倍政権退陣」で結集するどころか野党間の足並みの乱れなどで、自民による単独過半数、自・公による3分の2をこえる313議席の獲得を許してしまう結果となった。

 こうした状況のなか、十分な審議がおこなわれないまま、「働き方改革関連法」、「IR(統合型リゾート)実施法」、「参院定数6増法」が数の力で強行可決され、成立している。

 2016年に連合が実施した「採用選考に関する実態把握のためのアンケート報告」で、統一応募用紙を「使用していない」企業は1〜2割と8年前調査と比べて改善していないことや、民間企業の1割が「本籍地・出生地」「家族構成・家族の職業」の記入を求め、男女差別につながる「未婚・既婚や結婚予定」について11・9%が違反質問をしていることなどが明らかになった。部落解放中央共闘会議は、アンケート結果をふまえ、就職差別の撤廃に向けたとりくみとして、厚生労働省・総務省にたいする要請行動をおこなった。

 ところが、経団連の中西宏明・会長は今年9月3日、2021年春に卒業予定の学生から、採用活動で面接の解禁時期などを定めた「採用選考に関する指針」(就活ルール)を廃止する意向を表明した。これについて、安倍政権の一部閣僚が「一考に値する」と発言し、政権が一定の理解を示した形となった。

 こうした状況をふまえ、政府は、2021年春に入社する学生の就職・採用活動について、会社説明会などを大学3年の3月、面接などの選考活動を同4年の6月に解禁する現行のルールを継続する方針を固めた。これまで採用活動の指針としてルールを示してきた経団連に代わり、政府が企業に要請する形となる。

 政府は今後、経団連など産業界と大学による協議の場で議論し、現行ルールの継続を決定する。これまでは経団連の会員企業以外はルールの対象外だったが、政府としては外資系企業や中小企業などにもルール順守をよびかける方針だ。

 就活ルールの変更で大学での就職・採用のルールが自由化されると、新規高卒者まで自由化されかねない。それとともに、採用する側(企業)の理屈がまかりとおって、就職差別が横行することになりかねない。

 就職差別撤廃に向け、「求職者の個人情報の収集を制限する」という方法で、長年にわたって就職差別撤廃のとりくみが積みあげられてきた。これは、部落解放同盟の就職差別反対の闘いのなかからおこり、部落差別はもとより、家庭環境・資産や家族関係による差別、親の職業などによる差別、思想信条による差別など、あらゆる差別に結びつく個人情報の収集を許さないとりくみとして前進してきた。

 このとりくみは1973年に全国化し、それ以降、新規高卒者の就職応募書類は「全国高等学校統一用紙」、新規中卒者は「職業相談票(乙)」を使うよう、厚生労働省・文部科学省を中心に指導がおこなわれるようになった。またその後、大卒者の「参考例」が示され、さらに市販のJIS規格の履歴書などにも同様の趣旨の徹底がはかられてきた。

 そして、1999年、「職業安定法」改定のなかで、「求職者等の個人情報の取扱い」(第5条の4)が明記され、「人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項、思想及び信条、労働組合への加入状況」に関する個人情報の収集を禁じる大臣指針が定められた。
 いま一度、各府県共闘で労働局交渉や行政交渉、企業にたいする申し入れや交渉をおこない、就職差別を許さないとりくみを展開しよう。

 狭山事件の確定有罪判決である東京高裁の寺尾差別判決から44年を迎えた。確定判決は、被害者のものとされる万年筆、腕時計、鞄が石川一雄さんの「自白」によって発見されたことが、犯人しか知るはずのない重要な事項を認める「秘密の暴露」にあたるとされてきた。

 狭山弁護団は、開示された証拠をもとに、2018年8月30日には下山第2鑑定を新証拠として提出した。石川さん宅で被害者のものとされる万年筆で書いた数字のインク、被害者が事件当日の授業で書いたペン習字のインク、被害者のインク瓶のインクを蛍光X線分析で調査。被害者のインク瓶のインクと被害者が事件当日に書いた文字のインクには金属元素のクロムがふくまれていたが、証拠の万年筆で書いた数字のインクにはクロム元素が微量も検出されなかった。

 さらに、福江鑑定では、コンピュータが客観的に計測した字形の相違から、石川さんは脅迫状を書いた犯人とは99・9%別人ということが明らかになった。

 弁護団が提出したこれらの新証拠は、脅迫状は石川さんが書いたものではなく、発見された万年筆もデッチ上げられたものであり、「秘密の暴露」にあたらないことを証明している。寺尾確定判決は完全に崩れている。いまこそ、新証拠を武器に、下山鑑定人の尋問など事実調べを東京高裁に迫っていく必要がある。

 しかし検察官は、下山第2鑑定、福江鑑定、スコップ付着の土に関する平岡鑑定など、弁護団が提出した新証拠にたいして、時間稼ぎのように反証、反論する姿勢を堅持している。こうした状況のもと、狭山事件の再審とえん罪をなくす司法改革を訴え、鑑定人尋問などの事実調べと再審開始を東京高裁に求める世論を大きくしなければならない。

 これまで開示された証拠は191点、提出された新証拠は217点にもおよぶが、東京高検は証拠開示について、「不見当」(見当たらない)「プライバシー問題」を理由に消極的な姿勢を崩しておらず、証拠開示を求める世論をさらに大きくしていく必要がある。

 狭山事件発生から55年をふまえ、これ以上のえん罪を許さない世論をつくり出すため、事件のえん罪性と差別性を訴え、大衆的な運動の広がりをはかるさまざまなとりくみを展開していこう。

 この間、中央共闘と連携し、各府県共闘のとりくみによって、各府県共闘への地方連合の参加は24府県となった。「戦争法」の廃止、部落解放・人権政策確立、狭山再審闘争、就職・雇用における差別撤廃と公正なワークルール確立など、私たちがとりくむべき喫緊の課題は山積している。これらの課題克服のため、すべての市民と連帯し、幅広く力強い共闘体制をつくり、地域・職場にしっかりと根を張った運動をつくっていこう。そして、部落解放共闘第35回全国交流会・部落解放地方共闘会議第35回総会で得た成果を各地で活かし、全国各地で部落解放共闘運動を前進させ、人権確立社会の実現にとりくもう。

 

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