「解放新聞」(2019.01.21-2891)
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部落解放中央共闘会議第43回総会が、2月28日、東京・日本教育会館で開催される。労働組合との共闘を中心にして部落解放中央共闘会議が1975年に結成され、全国各地に部落解放共闘が結成された。
部落解放中央共闘会議に結集するすべての労働組合、部落解放同盟が積極的に参加し、第43回総会の成功をかちとろう。
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「部落差別の解消の推進に関する法律」(以下、「部落差別解消推進法」)が施行されてから2年が経過した。この間、省庁から都道府県にたいして通知が出され、啓発の動きはみられたが、「部落差別解消推進法」をふまえた予算措置や具体化のとりくみがすすんでいる状況ではない。こうした状況のなかでも、兵庫県たつの市、加東市をはじめ、愛知県津島市、福岡県小郡市、飯塚市、大分県豊後大野市、豊後高田市、玖珠町、九重町、熊本県菊池市などで「部落差別解消推進法」制定をふまえての条例の制定や改正がおこなわれ、自治体における周知・啓発のとりくみがすすめられてきた。
しかし、真に部落差別をなくしていくための課題は山積している。「部落差別解消推進法」では、部落差別にたいする禁止規定がないため、インターネット上には、部落差別情報や部落差別を助長する情報が掲載されたまま放置されている。法務省と総務省は国の責務として、部落差別解消に向けて真摯に向き合う姿勢を示す必要がある。
地方分権一括法によって、国が制定する法律では、地方公共団体に義務づけることはできなくなった。部落差別がない社会を実現するためには、各省庁の連携を強化するとともに、国と自治体との連携の強化が今後、重要だ。
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内閣府がおこなっている「人権擁護に関する世論調査」で、2012年は「あなたは、同和問題について、初めて知ったきっかけは何からですか」という設問で、「知らない」が20・8%だったことにたいして、「部落差別解消推進法」施行後の2017年は「あなたは、部落差別等の同和問題について、初めて知ったきっかけは、何からですか」としたところ、「知らない」が17・7%で、少しの改善がみられた。しかし、同質問を年齢別でみると、18歳から29歳では30・2%が「知らない」と回答している。
こうした状況をふまえ、地域や職場で、若い世代を中心に「部落差別解消推進法」の成果や課題、今日までにいたる部落問題の学習・教宣活動にとりくもう。
そして、「部落差別解消推進法」の内容をふまえ、同法および「人権教育・啓発推進法」を活用し、自治体の人権教育・啓発施策充実や「基本計画」策定・具体化を求め、自治体のとりくみをさらに前進させていこう。
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2017年度末の企業の内部留保は446兆4844億円となり、前年度末比9・9%増、6年連続で過去最高を記録している。また、民間企業の労働者が2017年の1年間で得た平均給与は432万2000円で、前年から10万6000円(2・5%)増加した。しかし雇用形態別では、いずれも増加しているものの、正規社員は493万7000円、非正規は175万1000円と格差は318万6000円で、分類をはじめた2012年の299万6000円から一貫して拡大している。
格差社会では生きづらさをかかえ、不満のはけ口を探している人たちが多くいる。そしてインターネット上には、そのはけ口を、差別や排外主義に向かうように仕向ける情報を掲載している者もいる。
多くの人びとが格差社会の構造を理解し、自分の置かれた立場を自覚し、差別と分断を許さず、団結して闘う構図をつくり出すことが重要だ。
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昨年9月、経団連の中西宏明・会長は、大卒・大学院修了予定者の就職活動における面接開始の時期などを定めた就活ルールを廃止する意向を表明した。就活ルールは、「青田買い」を防ぎ、学生が就職活動に追われて学業に専念できなくなる事態を回避するのが目的だった。2021年入社の就活においても、従来のルールが適用されることが政府によって発表されている。今後は経団連に代わって「政府」「産業界」「大学」の三者による協議でルールを決め、政府が企業側に要請する方針となった。近年では有効求人倍率が高水準で推移していて、求職者の売り手市場のため顕著にあらわれないが、就活ルール廃止は採用の自由化であり、就職差別の温床になりかねない。政府主導の就活ルール決定にともない、公正採用選考を大前提とした協議がおこなわれるよう求めていく必要がある。
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中央共闘・全国共闘として、6月を中心に「就職差別撤廃月間」を設定し、「統一応募用紙」の趣旨の周知徹底と点検活動など各職場における啓発活動、府県行政・教育委員会と労働局、経営者団体などにたいする就職差別撤廃の啓発強化の働きかけなどにとりくむよう各府県共闘によびかけてきた。また、このとりくみのための啓発リーフを中央共闘で2万部つくり、各中央単産・府県共闘に配布してきた。
また、労働局などへの要請行動は、栃木、群馬、埼玉、新潟、神奈川、愛知、岐阜、三重、京都、大阪、和歌山、兵庫、鳥取、岡山、広島、徳島、愛媛、九州ブロックの7県民会議など、とりくみが広がってきており、九州では、私学協会など学校関係への要請もおこなっている。
中央共闘としても、総務省公務員課、厚生労働省就労支援室への申し入れをとりくむとともに、各県民共闘会議へ、労働局への要請行動にとりくむようよびかけたい。また、格差社会を是正するため、不安定雇用や採用・賃金・労働条件における差別をなくし、労働者の人権を守り、公正なワークルールづくりなどに活かせるよう、共闘運動を展開しよう。
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この間、安倍政権のもとで、厳しい状況をはねのけ、幅広いとりくみのなかで「障害者差別解消法」「ヘイトスピーチ解消法」が実現し、さらに性同一性障害をはじめとした性的マイノリティに関するLGBT法案やアイヌ民族に関する立法措置などが議論されている。こうした個別人権課題での法制定や議論をふまえ、連携しながら包括的な人権の法制度に向けて協働のとりくみをすすめる必要がある。とくに、悪質な差別事件にたいする法規制、人権侵害救済制度、人権委員会の設置は、重要な課題だ。
こうした状況のもと、共闘運動を前進させるために、共闘の組織を強化することも大切だ。地方共闘への連合の加盟は24府県となった。さらに連合未加盟の県共闘の解消をめざしたい。また、さらに市町村レベルの地域における共闘結成など、きめ細かな連携ができる体制もめざしていこう。
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