「解放新聞」(2019.03.18-2899)
全国大会2日目の全体会で、3つの分散会報告と全体討論を受けて西島書記長が本部答弁と集約をおこなった。要旨を掲載する。
全体発言と昨日の分散会での討論をふまえ、執行部としての基本的な考え方を示して、集約としたい。
ヘイトスピーチ問題では、自治体で、デモや公共施設利用を制限するガイドラインのとりくみがすすんでいる。しかし、選挙の候補者として公然とヘイトスピーチする動きが広がっている。法務省は、正面から彼らの行動を止めることは「公職選挙法」違反になるが、行動の実態を記録し、その報告を受ければ、人権侵犯事案として対応するという見解。現場では、その場の状況をしっかりと録画し、ヘイトスピーチにたいする法務省の毅然とした対応を求めよう。
天皇制の問題では、5月に代替わりがあり、新しい元号をふくめた祝賀ムードが盛りあげられようとしている。被災地訪問や護憲発言などで天皇個人を賛美する風潮もある。「貴族あれば賤族あり」という部落解放運動の立場をいっそう鮮明にしなければならない。天皇制賛美と政治利用を許さない闘いが重要だ。多くの共闘する仲間と連帯し、広範なとりくみを展開しよう。
昨年も、全国で地震や豪雨などの自然災害が続いた。立地などの問題で被害が部落に集中することもあり、支援をよびかけてきた。さらに、隣保館や部落内の公共施設が避難所などの役割を果たしている。こうした施設については、財政が苦しい自治体では改修などができていないところも多い。今日の隣保館の多様な形態をふまえ、全隣協と連携しながら、国への要望を強めたい。
子ども食堂や子どもの居場所づくりなどの課題では、部落解放運動が積極的にとりくんでいる報告があった。貧困や差別に抗して社会連帯を求める交流の場を広めていきたい。都府県連や支部にも情報を提供し、とりくみを積極的にすすめたい。
インターネット上の差別情報については、モニタリングの必要性について多くの意見が出された。ここ数年、自治体でのモニタリング事業が広がっている。研究所にも要請し、より有効なモニタリング活動に向け、行政間の垣根をこえた連絡会や情報交換をすすめている。
モニタリングで出てきた悪質な差別情報を法務局に削除要請することでインターネット上の部落差別にかかわる悪質な事例を法務省や法務局に集中させよう。法務省に「部落差別解消推進法」制定をふまえてとりくみをすすめさせるために、モニタリング事業を広め、削除要請などの活動をいっそう強く展開しよう。同時に、悪質なサイトに関係している企業へのとりくみや、業界への指導について、ひき続き総務省への要請を強めていきたい。
この間、「壬申戸籍」と称されるものがインターネット上で販売された。最終的に静岡法務局が回収することになったが、何の問題意識もなく出品させる「ヤフオク」や「メルカリ」などもふくめ、商売になるならどんな情報でも売るという社会の風潮があり、業界にたいするガイドラインづくりなどを提起していく必要がある。
青年にたいするとりくみでは、分散会でも方針が弱い、踏み込んだ内容を、との多くの意見が出された。全高と全青の合同集会で交流を深めたり、女性との交流をすすめるなどのとりくみが展開されているが、こうした活動の成果や課題を整理し、青年部との意見交換もしていきたい。全高・全青では、スタッフが少なく集会の準備や運営を担当してしまうと集会での学習が保障されないという意見も聞いている。都府県連の協力など、青年や高校生が主体となって集会をひらく原則は守りつつ、運営に関する工夫も考えていきたい。
SNSやインターネットでの情報発信などについては、時代や社会の変化があり、インターネットの機能を活用することは必要だ。インターネットを活用できる人材の育成は、これからの部落解放運動のなかでも重要な課題であり、とりくみをすすめていきたい。
「部落差別解消推進法」については、その内容に不十分な点もあるという認識は共有している。だからこそ現場での闘いが重要であり、財政措置など、国にたいする要求をしている。具体化の課題では、東京と福岡で都県レベルでの「条例」が成立した。4月の統一自治体選挙では、組織内候補の必勝はもちろん、ぜひ選挙闘争と「条例」制定のとりくみを結合させてすすめてもらいたい。
「部落差別解消推進法」の周知と教育・啓発の推進や相談事業充実などをしっかりと自治体に求めると同時に、そのための財政措置については、ひき続き、地方自治6団体と連携し、人権にかかわる交付税措置をできるようにとりくみたい。
部落差別に関する実態調査については、法務省は通知で部落差別の情報集約を各自治体に要請した。文科省は都道府県の教育委員会関係者を集めて説明会をひらいたようだ。しかし、都府県連から、部落差別にかかわる事例をもれなく報告するように自治体に要請してもらいたい。また、同様に市町村もふくめ、差別事例を報告するように各支部段階でも徹底したとりくみをお願いしたい。
4月以降には、部落問題に関する国民意識調査が実施される。しかし、サンプル数の少ない国の調査では、市町村レベルの実態はわからない。同様の項目で市町村の実態まで把握できるように都府県での意識調査の実施を迫っていこう。
狭山再審闘争でも多くの意見が出された。昨年は九州と、近畿・東海・北陸・中・四国ブロックで、それぞれ狭山の意見広告を出した。5月には関東甲信越ブロックも準備している。こうしたとりくみをはじめ、より広範な狭山再審に向けた闘いをすすめ、世論を大きく盛りあげたい。
「旃陀羅」問題では、西本願寺との協議会をもち、昨年3月の第6回協議会で課題を整理し、一定の中間的なとりまとめをした。教団における差別体質の克服に向け、本山をあげて問題解決へ努力しようとの決意が示され、先般、研修をすすめるためのテキストがつくられた。これを教材とし、来年度から約1万か寺の関係者にたいする研修がおこなわれる。寺院関係者が学習に参加するように、都府県連は話し合い、とりくんでもらいたい。不十分な点は厳しく指摘し、充実させながら、差別撤廃に向けた教団の役割を確認することのできる研修にしなければならない。各都府県連で各教区としっかりと議論しながら、実践につながる研修になるようにとりくみをすすめてもらうことが重要。テキストにたいする厳しい指摘もあるが、実践を一歩でも二歩でも前にすすめていくことができるようなとりくみを要請したい。
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