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「部落差別解消推進法」や「ヘイトスピーチ解消法」具体化の
とりくみをすすめ、差別排外主義との闘いを強めよう

「解放新聞」(2019.04.08-2902)

 3月27日、10月から予定されている消費税10%増税を組み入れた2019年度予算が成立した。

 実質賃金が低下し、国内総生産(GDP)の約6割を占める家計消費もマイナスが続き、多くの報道機関による世論調査でも、8割以上が「景気回復の実感はない」と回答しているにもかかわらず、安倍政権は就業者が増えたなどと「景気回復」を強調し、増税を強行しようとしている。しかし、増えた就業者の多くは高齢者や学生のアルバイトである。低い年金や高い学費のために、非正規やアルバイトなどの不安定で、劣悪な労働条件のもとで働かざるを得ないのが実態である。新自由主義による富の再配分を不必要とする社会構造のなかで、低所得者層ほど影響が大きい消費税の増税は、市民生活をいっそう追い詰めるものとなる。

 消費税増税の根拠としてあげられている景気回復も、不正統計ばかりか、アベノミクス効果の唯一の指標でもあった株価の低迷で、その破綻は明らかである。しかも「入国管理法」の改悪で、外国人労働者には、より劣悪な労働条件のもとで、奴隷労働を強いようとしている。この間、生活保護費、介護や医療制度の改悪で、社会保障費を一方的に削減しながら、米国の要求どおりに有償軍事援助(FMS)で高額な兵器を購入するなど、軍事費は5兆円を上回り、過去最大となっている。とくに改修による憲法違反の攻撃型空母化をめざす「いずも」では、後方支援ではなく、まさに米軍とともに戦闘行為をすることさえ想定されている。

 こうした安倍政権のすすめる軍事大国化は、中国や北朝鮮、韓国などアジア諸国との関係を悪化させ、対立を深めている。今日、中国や韓国を攻撃するヘイト団体も、安倍政権によるアジアの近隣諸国への敵視政策と深く結びつきながら、差別排外主義勢力として台頭してきたのである。

 安倍政権による反人権主義、国権主義の政治は、「美しい国」として強い日本をとり戻すという、戦前回帰をめざしたものである。そのための「戦争をする国」づくりでは、「一億総活躍社会」のなかで、「生産性」がないとして、結婚をせず子どもを産まない女性をはじめ、障害者、性的少数者(LGBTQ)、高齢者や在日コリアン、部落民などが差別と排外の対象となる。

 今日、インターネット上での差別情報の氾濫、公然と差別と暴力を煽動するヘイトスピーチは、こうした社会情況の反映なのである。しかも、彼ら彼女らは、差別言動をくり返すことによってしか、みずからの不満や不安を解消できない。われわれは、こうした差別言動が社会的制裁を受けない情況を変革していかなければならない。この間、福岡県で条例が全面改正され、奈良県では、新たに条例が制定された。また、大分県では、県内18市町村のうち15市町村で「部落差別解消推進法」制定をふまえた条例改正がおこなわれるなど、全国各地での条例に関するとりくみが前進している。

 また、インターネット上で差別情報を掲載している鳥取ループ・示現舎の「部落探訪」については、昨年12月27日付で法務省人権擁護局が「インターネット上の同和地区に関する識別情報の摘示事案の立件及び処理について」という通知を地方法務局長などに通知している。通知では、これまで鳥取ループ・示現舎が「部落探訪」の記事の冒頭に「部落差別解消推進」と記載していたことが差別助長にあたるかについて慎重な判断が必要だったが、特定の地区を被差別部落とすることが「人権侵害のおそれが高い、すなわち違法性のあるものであるということができる」としている。

 この通知のなかで学術・研究の場合を特例としていることから、鳥取ループ・示現舎は、最近では「学術・研究・部落探訪」と記載している。しかし、「部落探訪」が学術目的でも、研究目的でもなく、ただ復刻版を出版しようとして、2016年2月に東京法務局から「説示」を受けた「全国部落調査」にもとづいて、特定の地区を被差別部落であると写真や動画で暴露し、部落差別を助長していることは明らかである。あえて「学術・研究」などと姑息な記載をしなければ掲載できないこと自体が、「部落探訪」の差別性を明白に証明している。

 鳥取ループ・示現舎にたいする裁判は、いよいよ年内に口頭弁論が再開される。裁判闘争での完全勝利とともに、法務省人権擁護局が、この通知をふまえて、鳥取ループ・示現舎に厳しい措置をとるように、さらに全国でのとりくみを強めていこう。

 ヘイトスピーチにたいする闘いは、全国各地でとりくまれ、とくに「ヘイトスピーチ解消法」が制定されて以降、公的施設使用のガイドラインや「公園条例」の改正などがすすんできた。また、ヘイト団体が集中的に集会やデモをおこなった神奈川県川崎市では、罰則規定も検討の対象にしながら条例制定のとりくみがすすめられている。

 しかし、2016年に「在特会」の高田誠(桜井誠)元会長が東京都知事選に立候補し、「公職選挙法」を悪用してヘイトスピーチを選挙演説として正当化しようとした。その後、「日本第一党」党首となり、自治体選挙に立候補者を出し、同様にヘイトスピーチをくり返してきた。今回の統一自治体選挙でも、神奈川県議会、東京都練馬区議会、京都市議会、大阪府八尾市議会、福岡県議会などに立候補者を出している。

 こうした「公職選挙法」を悪用したヘイトスピーチについては、3月に開催した第76回全国大会でも、とりくみの強化に向けた多く意見が出された。この間、法務省交渉などで、選挙演説におけるヘイトスピーチにたいする厳しい対応を求めてきたが、法務省人権擁護局は3月12日付で「選挙運動、政治活動等として行われる不当な差別的言動への対応について」との通知を地方法務局などに出した。

 通知では、選挙運動を利用した差別言動にたいして、「その言動が選挙運動等として行われていることのみをもって安易に人権侵犯性を否定することなく…」適切に判断し対応するように要請している。まったく当然の措置であるが、「ヘイトスピーチ解消法」をふまえたものとして、とりくみを強めていかなければならない。中央本部通達「統一自治体選挙におけるヘイトスピーチへの対応について」で要請しているように、日本第一党などの候補者によるヘイトスピーチについては、その言動を録画し、法務局へ人権侵犯事件としての措置を求めていこう。

 「部落差別解消推進法」も「ヘイトスピーチ解消法」も、それぞれの闘いの成果を積み重ねて、困難な情勢のなかで実現してきたものである。この間の法務省人権擁護局の通知などをしっかりと活用し、法律を実効あるものにしていくためのとりくみをすすめよう。

 

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