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主張

 

憲法改悪を許さず、闘い抜こう

「解放新聞」(2019.04.22-2904)

 戦後73年が経過した。私たちは、憲法9条によって、憲法前文に書かれている「政府の行為によつて再び戦争の惨禍」をおこさず、「自国のことのみに専念して他国を無視」することなく、国民の「安全と生存を保持」し、「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」という憲法前文の理念を実現してきた。

 昨年の12月18日、国家安全保障会議および閣議で、2019年度以降の「防衛計画の大綱(防衛大綱)」と「中期防衛力整備計画(中期防)」が決定された。従来の陸海空自衛隊の一体的運用をめざし、サイバー防衛部隊や宇宙領域専門部隊の新たな領域を加え「多次元統合防衛力」の構築をめざすとした。そのうえで、「いずも」型護衛艦の改修と「短距離離陸垂直離着陸機(STOVL機:F35Bが予定される)」の導入により事実上の空母化と敵基地攻撃を可能にする長距離巡行ミサイルの導入などを決定した。しかし、防衛白書の基本理念の「わが国は、憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならない」「わが国は自衛のための必要最小限を超えて、他国に脅威を与えるような強大な軍事力を保持しない」を大きく逸脱しており、断じて許してはならない。

 2月10日の自民党大会の演説で、安倍首相は、今年1年間、戦後外交の総決算にとりくむとし、憲法改正について、こうのべた。

 「私たちは、この、6年間、平和安全法制をはじめ、さまざまな困難な課題に、皆さんと共に取り組んでまいりました。厳しい反対もあった。また党内においても議論を行った、ときには激論もあったんです。でも、それが、国のため、国民のためとの結論に至れば、私たちは結束して結果を出してきたんです。皆さん、これが、戦後、一貫して政治の背骨を担ってきた私たち自由民主党の誇りではないでしょうか。

 そしていよいよ、立党以来の悲願である、憲法改正に取り組むときが来ました。自衛隊は今や、最も信頼される組織となっています。これは、自衛隊の諸君が長年に渡り血のにじむような努力を重ねてきた結果です。彼ら自身が勝ち取った信頼。でも、その中においても、残念ながら新規隊員募集に対して都道府県の6割以上が協力を拒否しているという悲しい実態があります。地方自治体から要請されれば、自衛隊の諸君は直ちに駆けつけ、命を懸けて災害に立ち向かうにも関わらずであります。

 皆さん、この状況を変えようではありませんか。憲法にしっかりと自衛隊と明記して、違憲論争に終止符を打とうではありませんか。今度は、私たち、私たちが政治の場でその責任を果たしていかなければならない、皆さんと共にその決意を誓い合いたいと思います」と憲法改悪を目論んでいる。

 今後、安倍政権は憲法改悪に向けた自民党案を提示、強引な手法で憲法9条を改悪する国民投票の実施に向けた動きを加速させることが懸念される。また、北朝鮮の核ミサイル問題や領土問題など、偏狭なナショナリズムを煽るなか、防衛費を年年増加させ、ついに5兆円をこえた。在日米軍基地の約75%が沖縄に集中する問題では、沖縄県民の民意を無視した辺野古新基地建設に向けた土砂投入を強引におしすすめている。また、5月の天皇代替わりにともなう「君が代・日の丸・元号」使用の強制、祝賀ムードを利用した天皇の政治利用の強化が危惧される。

 しかし、安倍一強政治が続くなか、森友・加計学園問題での財務省の公文書の改ざんと破棄、忖度政治の横行、厚生労働省の「毎月勤労統計」をはじめとする不正調査問題の発覚など、政治への信頼がいちじるしく損なわれ、昨年の「入管法」改正の国会議論に代表されるように強引な国会運営など、まともな国会審議がおこなわれないことが常態化している。こうした異常な政治状況を長く続けさせるわけには、いかない。

 世界はいま、民主主義が大きな「危機」にみまわれている。トランプ大統領による差別発言と米国一国主義の暴走、ヨーロッパでの極右政党の躍進と移民排斥運動の台頭など社会の二極化・分断がすすんでいる。あわせて新自由主義政策による規制緩和と市場の自由化、経済のグローバル化により格差や貧困が世界的に深刻化している。国際NGO「オックスファム・インターナショナル」がまとめた報告書によると、2018年に世界でもっとも裕福な26人の資産の合計が、経済的に恵まれない世界人口の下位半分、約38億人分の資産合計とほぼ同じとなるなど、富の偏在が顕著となっている。

 日本でも格差と貧困拡大は、危機的状況だ。平均年収186万円のアンダークラスといわれる人びとが930万人も存在、急速に増大しているといわれている。この人たちが政治にたいする関心を失っており、格差の縮小と貧困の解消を明確に旗頭とした政治の受け皿が求められている。

 今年は、4月に統一地方自治体選挙がおこなわれ、7月には参議院選挙も同時におこなわれる一大政治決戦の年である。

 この間、安倍政権のもとで人権や平和の課題は大きく後退している。こうした社会状況を変革するために、人権や平和の確立に向けた政治勢力の拡大は重要な課題だ。一大政治決戦の年をチャンスととらえ、推薦候補の必勝に向けて全力でとりくもう。そして、憲法と平和を守り、あらゆる差別に反対していく政治活動をすすめる候補者全員の当選をかちとろう。

 私たちは、戦争への道を突きすすむ安倍政権の暴走を阻止するために「戦争をさせない1000人委員会」と連携し、「集団的自衛権」の行使容認の阻止や「戦争法」廃止の闘いにとりくんできた。

 そのなかで、さまざまな立場や意見の違いを乗りこえ、安倍政権と対決する多くの人びとが結集できる共同組織として、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が結成された。

 そして「総がかり行動実行委員会」は、毎月19日行動のとりくみ、「戦争法」にたいする抗議行動・集会、違憲訴訟支援のとりくみ、「戦争法」の廃止を求める統一署名を、広範囲な人びとを巻き込みながらとりくんできた。

 しかし、安倍政権は暴走の度合いをいっそう強めている。沖縄・辺野古への新基地建設、歴史認識の改ざん、貧困と格差の拡大、原発再稼働、そして憲法破壊策動へと突きすすんでいる。何としても、「戦争ができる国」へ突きすすむ安倍政権の退陣と政策転換を実現しなくてはならない。

 「総がかり行動実行委員会」は「憲法記念の日」の5月3日、「平和といのちと人権を!5・3憲法集会2019―許すな!安倍改憲発議―」(東京・有明防災公園)への大結集をよびかけており、全国各地でも同様のとりくみが準備されている。また、「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」がよびかけられており、とりくみが展開されている。

 これらのとりくみを幅広い人びとと力をあわせてとりくんでいこう。

 戦争する国づくりをすすめ、新自由主義路線にもとづき貧困と格差を拡大する安倍政権と対決し、立憲主義と平和憲法を守り、人権、平和、民主主義の確立をめざし、すべての市民と連帯して闘い抜こう。

 

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