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就職差別を撤廃し、雇用促進・就労支援にとりくもう

「解放新聞」(2019.05.27-2908)

 厚生労働省が公表した2018年平均の有効求人倍率は1・61倍で、前年の1・50倍から0・11ポイント上昇となった。また、今年3月の有効求人倍率は1・63倍、2004年から調査開始した正社員有効求人倍率は1・16倍となり、2017年6月に初めて1・01倍と求人が求職を上回って以降、継続して高水準を維持している。一方で、「就職差別につながる恐れがある事象」としては、「職業安定法第5条の4」に違反となる面接時の不適切な質問や不適切な項目をふくむ社用紙等の提出を求めている事象が2017年には1088件報告されている。

 この間、「部落地名総鑑」差別事件発覚から43年をへて、インターネット上では被差別部落の所在地一覧や、差別を煽動する情報が掲載され続けている実態がある。この状況のなかで、「部落差別解消推進法」の意義を広め、就職差別撤廃のとりくみもいっそう強化することが求められている。

 「部落地名総鑑」事件を契機に、労働省(当時)によってつくられた「企業内同和問題研修推進員」制度は、「公正採用選考人権啓発推進員」制度に引き継がれ、一定の役割を果たしてきた。2017年の従業員100人以上の事業所での「公正採用選考人権啓発推進員」設置率は96・7%と高い設置率になっている。また、鳥取、滋賀をはじめ大阪や奈良など、独自で推進員設置基準(従業員10〜80人)を設定し、「公正採用選考人権啓発推進員」の設置を推進している労働局もある。しかし一方で、公正採用選考実現への旗振り役である推進員が、研修を受講していないなど、「名ばかり推進員」の問題も明らかになっている。就職差別撤廃へのとりくみをもう一歩すすめるためには、推進員の位置づけを法的に明記し、その実効性を高めていく必要がある。そして、企業内で公正採用選考が実現できる体制を構築するよう求めていく必要がある。

 「統一応募用紙」のとりくみも「職業安定法第5条の4」が1999年の法改正で追加され、大臣指針も施行され、法的裏付けができた。また、昨年1月の「職業安定法」の改正では、求人サイト・求人情報誌などによる求人・求職の情報を提供する事業をおこなう場合のルールも定められた。そのなかで、求職者の適切な職業選択のため、相談窓口の明確化等、苦情を迅速かつ的確に処理するための体制の整備や個人情報の適正な収集や管理を求めている。しかし、違反企業にたいする指導が徹底されていない現状も明らかになっている。ハローワークは、違反事象を確認した事業所には、速やかに改善されるよう再発防止をふくめた指導・啓発を確実かつていねいにおこない、公正採用選考が実施されているか、その後のチェックまでを一貫したシステムとして全国に展開していく必要がある。

 経団連は昨年10月、大手企業の採用面接の解禁日などを定めた「就活ルール」を2021年春入社の学生から廃止することを決定した。今後は政府が主導して、大学側や経済界と協議し決定することになった。さらに経団連は今年4月、通年採用を拡大していく方針を固めたことを明らかにした。こうした動きは、学生が主体性をもって海外留学などをふくめた学業を優先させ、就職活動の時期を選択できるようになるというメリットがある一方、企業による採用の自由化の進行という問題もある。採用の自由化がすすむと、これまで築いてきた公正採用選考の礎がないがしろになりかねない。有効求人倍率が高水準で求職者の売り手市場では差別は表面化しにくいが、政府が主導していく「就活ルール」に公正採用選考が大前提に置かれるよう求めていく必要がある。

 就職差別をなくすために労働組合の役割も大きい。企業や事業所の内部からチェックするとりくみも大切だ。また、労働者の権利を守り、差別や人権侵害のない職場をつくるためにも、採用という雇用関係の入り口で、差別を許さないことが重要だ。

 部落解放中央共闘と全国共闘は、毎年6月を就職差別撤廃月間と位置づけ、リーフレットを作成し啓発活動にとりくみ、職場での点検活動をよびかけている。また、各府県共闘会議においては、労働局や府県行政・教育委員会などにとりくみ強化の申し入れをおこなっている。

 そして連合は今年、近年入社試験を受けた人を対象としたアンケート調査を実施し公表する計画だ。こうしたとりくみを通して、各地で共闘会議や連合との連携を深め、就職差別撤廃のとりくみを強化していこう。

 就職差別撤廃とともに、安定した雇用を促進していくとりくみも重要だ。地域での生活相談とあわせて職業相談活動を充実させる必要がある。

 「生活困窮者自立支援法」にもとづく「自立相談支援事業」を活用し、就職困難者の自立を支援していくことや、「ハローワークの求人情報のオンライン提供」を活用し、隣保館などでの職業相談活動を充実させていくことも大切だ。また、「部落差別解消推進法」の具体化として、隣保館がない地域でもハローワークや自治体などと連携を密にし、隣保館活動の実施と充実を求めていくとりくみが重要だ。

 不安定雇用の増加による格差の拡大と貧困化がすすみ、雇用をめぐる状況は悪化している。有効求人倍率は大きく改善して人手不足が深刻化しているが、正規社員と非正規社員との間には給与面での大きな溝があり、そこでも格差が拡大している。今日、7人に1人が貧困にあえぎ、ひとり親世帯では半数以上が貧困に苦しんでいる。

 非正規雇用が雇用労働者の4割をこえ、不安定かつ低賃金の労働者が増え続ける現状も方向転換させなければならない。

 そして、庶民の生活を圧迫し、平和を脅かす安倍政権を退陣させることも大きな課題だ。

 

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