「解放新聞」(2019.07.22-2916)
東京人企連第5グループ14人が7月3日、群馬県太田市の旧尾島町・世良田地区を訪れ人権研修をした。地元太田支部の松島一心さんの案内で、世良田村事件ゆかりの地や世良田地区の歴史を訪ねた。世良田村事件は、差別発言を契機に水平社がおこなった糾弾を「部落民の増長」ととらえた周辺農民が、自警組織を結成して23戸の被差別部落を襲撃した事件。この地では当時、小学校教師による被差別部落の児童への差別的対応が問題になっていた。差別撤廃への水平社の行動に、差別を当然のことと受け止めていた人たちは反感を募らせた。研修では、襲撃の謀議をしたという八坂神社や、梵鐘を打つ音が襲撃合図になったという普門寺の鐘楼を視察した。
また、世良田の被差別部落がもとあった場所を訪ねた。地域で語り継がれてきた伝承をもとに松島さんが多くの資料にあたり、特定した。長楽寺は新田一族を祀る墓がある。その墓守・警護役として2戸が置かれたことが被差別部落の起源とされる。その長楽寺境内に、徳川家光により改修造営された日光東照宮の旧社殿(二代将軍秀忠により創建)が移築されるにおよんで、被差別部落は現在地へと移転させられたという。徳川家康の祖先がこの地から出たことから、世良田の地は江戸時代を通じて庇護されてきた歴史がある。隣接する新田荘歴史資料館では、世良田が歩んできた歴史的文物について職員から説明を聞いた。
世良田の徳川地区にある縁切り寺満徳寺資料館も訪れた。満徳寺は鎌倉の東慶寺とともに日本に2か所しかなかった「縁切り寺」のひとつ。夫からの暴力などで離婚を望んだ女性が逃げ込んだという。現代にも通じる人権問題について、当時の調停の模様を学んだ。徳川家の庇護を受けた寺だったが明治になって廃寺となった。一部が地区の公民館として使われていたが、竹下内閣のふるさと創生事業を機に資料館の付帯施設として再建された。
今回は初参加者も多く、世良田村事件の背後に積み重ねられた歴史をたどりながら、あらためて部落差別の理不尽さと不当性を学びなおす機会になった。
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