「解放新聞」(2019.07.22-2916)
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安倍政権は、今回の天皇の代替わり、生前退位や「新元号」などによる祝賀キャンペーンをおこない、天皇制の強化や政治利用をすすめている。
4月1日、「新元号」が発表された。「新元号」は、「元号法」で「元号は、政令で定める」とされており、閣議で決められる。閣議で決定されたことを官房長官が発表する。「平成」に「元号」が変わるさいも当時の官房長官が発表し、当時の総理が談話を発表しただけで会見はひらかれなかった。しかし、安倍首相は会見をひらき、そのようすをテレビ、官邸ホームページをはじめとするSNSなど、あらゆる媒体を活用し、統一自治体選挙に利用した。断じて許してはならない。現に「新元号」制定直後のマスコミ世論調査では、内閣支持率は52・8%(プラス9・5㌽)、不支持率は32・4%(マイナス8・5㌽)に低下、政党支持率も自民党が43・0%(プラス4・7㌽)、立憲民主党が7・9%(マイナス2・6㌽)となっており、政権維持のために政治利用しているのは明らかだ。
安倍首相の天皇制・「元号」の政治利用は、これだけにとどまらない。統一自治体選挙の真っ最中の4月10日、「天皇陛下御即位三十年奉祝感謝の集い」が、著名人を集めてひらかれた。主催は「天皇陛下御即位三十年奉祝委員会」という民間団体だ。にもかかわらず、衆参議長と安倍総理が祝辞を読んだ。しかも政府主催の「御在位三十年記念式典」は2月24日にひらかれている。4月10日の「集い」は、テレビなどのマスコミもとりあげており、安倍首相の思惑は見え見えだ。また、5月には、新天皇の即位後、初めての国賓としてトランプ大統領を招待し、10月には、「三十年奉祝委員会」は名称を変更し、「即位の儀」と合わせて、皇居前広場で天皇即位を祝う国民祭典が予定されている。これらは、憲法改悪と「戦争をする国」づくりをすすめるための安倍政権の一大キャンペーンであり、これ以上の政治利用に断固反対しよう。そして、行政文書の「元号」の強制、教育現場での「日の丸」掲揚、「君が代」斉唱、天皇制の強化につながる「国旗・国歌」の強制を許さないとりくみを展開しよう。
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前日本維新の会の丸山穂高・衆議院議員(大阪19区)は、北方領土へのビザなし交流訪問団に参加し、元島民にたいして「ロシアからの領土返還には、戦争が必要ではないか」という質問を投げかけ、さらに戦争に同調するように迫る発言をした。
丸山議員は、訪問団に衆院沖縄北方特別委員会の委員として参加。酒に酔ったうえで、訪問団団長に「戦争でこの島を取り返すことは賛成ですか反対ですか」「ロシアが混乱しているときに取り返すのはオッケーですか」と発言した。団長の「戦争なんて言葉を使いたくない」にたいし、「でも取り返せないですよね」「戦争をしないとどうようしようもなくないですか」と言語道断の発言をした。憲法9条には「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」、また、憲法99条では「この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と定められている。即刻、議員辞職すべきだ。
所属していた日本維新の会の松井一郎・代表は、当初、丸山議員の発言を「厳重注意だ。撤回して謝罪するよう伝えた」との考えを示していたが、問題が拡大すると、一番厳しい除名処分のうえ丸山議員に議員辞職を求めた。
そんな最中、今度は今夏の参院選比例代表に日本維新の会公認で立候補する予定だった長谷川豊・元フジテレビアナウンサーによる被差別部落への差別を助長する発言が発覚した。部落解放同盟として、日本維新の会にたいして、抗議文を提出し、党として早急な対応を求めた。日本維新の会は、長谷川予定候補にたいして参院選で予定していた公認を、当面、停止にすることを決定した。日本維新の会には、差別発言を厳しく批判し、政党として責任ある対応を要請。本人にも、みずからの部落差別発言について謝罪を求め、部落解放同盟との協議・話し合いの場を求めていく。
日本維新の会所属議員が、部落差別発言をしたのは、これが初めてではない。2017年12月、片山虎之助参議院議員・共同代表が、党の会合で、日本維新の会が提出している議員立法がまったく審議されなかったことについて、そうした国会状況を「特殊部落ですから」と発言した。本人と馬場幹事長の同席のもと、厳しく抗議し猛省と見解を求めたところ、本人から「許されない差別発言であり、今後は、部落差別撤廃の立場でとりくみたい」との反省が表明された。にもかかわらず、こうした差別発言や戦争発言が続くと、日本維新の会そのものが、戦争や差別を助長する候補者を公認する政党と有権者に疑われても仕方がない。本人はもちろんのこと、党としても猛省を促し、部落差別撤廃と人権確立に向けた、とりくみを求めたい。
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安倍首相は5月3日の「憲法記念日」に、憲法9条への自衛隊明記を軸とした「改憲」に意欲を示し、2020年施行を堅持していると明言した。しかし、「改憲」を望む国民の声は、高くない。マスコミが2〜3月に実施した世論調査によると、安倍政権下での「改憲」には反対が54%で、賛成42%を上回っている。
2018年3月に、自民党は、①9条への自衛隊明記②緊急事態条項の新設③参院選「合区」解消④教育無償化と充実強化を柱に、「改憲」4項目としてまとめたが、どれもこれも百害あって一利なしだ。たとえば、教育の充実については、すでに憲法26条1項で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定められており、「教育基本法」や「学校教育法」などで決めればいいことだ。
緊急事態条項についても、「災害対策基本法」105条1項に「緊急事態布告」という制度を定めており、「非常災害が発生し、かつ、当該災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合において、当該災害に係る災害応急対策を推進し、国の経済の秩序を維持し、その他当該災害に係る重要な課題に対応するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、閣議にかけて、関係地域の全部又は一部について災害緊急事態の布告を発することができる」と規定されている。また、参院選の合区解消も憲法47条で「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める」とあり、「改憲」までおこなう必要はない。
もっとも変えてはならないのは、憲法9条だ。「戦争の放棄」という章で、戦争放棄しか書いていないところに自衛隊を入れるという、荒唐無稽な改憲は許すことはできない。そして、いま変えるべきは憲法ではなく、安倍政権だ。安倍首相の、現存する自衛隊を憲法に書き込むだけで、なんら変わらないというのは、まったくの詭弁である。絶対に、安倍政権による憲法改悪を阻止しなければならない。
戦後74年が経過した。私たちは、憲法9条によって、憲法前文に書かれている「政府の行為によつて再び戦争」をおこさず、「自国のことのみに専念して他国を無視」することなく、国民の「安全と生存を保持」し、「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」という憲法前文の理念を実現してきた。
こうした状況のもと、8月4〜6日、被爆74周年原水爆禁止世界大会・ヒロシマ大会、8月7〜9日、被爆74周年原水爆禁止世界大会・ナガサキ大会がひらかれ、8月15日には、被爆と敗戦から74年を迎える。
私たちは、「戦争をさせない1000人委員会」や「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」に積極的に参加し、原発再稼働を許さず、脱原発とすべての核兵器廃絶にとりくみ、核と戦争のない平和な21世紀を実現しなければならない。そして、すべての市民と連帯し、「戦争法」廃止、憲法改悪阻止に向け、全力でとりくもう。
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