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主張

 

識字運動の充実と発展をめざし、
第18回全国識字経験交流集会を成功させよう

「解放新聞」(2019.09.02-2921)

 国際連合(国連)が1990年を「国際識字年」と制定した1年前の1989年に、公益社団法人日本ユネスコ協会連盟の識字教育支援「世界寺子屋運動」がはじまった。今年で30年を迎える世界寺子屋運動は、基本的人権として誰もが教育の機会を得、貧困のサイクルを断ち切り、みずから考え行動をおこしていけるようにと、これまで世界44か国1地域に532の寺子屋(2018年11月時点)を建設し、約130万人の人びとに学びの機会を提供している。しかし、ユネスコによると、2018年時点においても、全世界で15歳以上の非識字者(文字の読み書きができない人)が約7億5千万人、学校にかよえない子どもたち(6〜14歳)が約1億2400万人いると推計されている。

 また、2015年に国連総会で採択された、国際社会共通の目標である「SDGs(持続可能な開発目標)」でも識字の重要性が強調されている。SDGsは、「誰ひとり取り残さない」社会の実現をめざし、先進国と途上国が一丸となって達成すべき目標で構成されている。そのなかの教育分野に関する目標4には「すべての人々に包括的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」とあり、ターゲット4・6には「2030年までに、すべての若者および成人の大多数(男女ともに)が、読み書き能力および基本的計算能力を身に付けられるようにする」という目標が定められている。SDGsのすべての目標の達成において、読み書きができることが大切な土台になるといえる。

 日本では識字率が99・8%といわれているが、1955年の調査を最後に公的な調査はおこなわれていない。国は、義務教育修了をもって識字能力ありと判断しているが、全国夜間中学研究会によると、日本における義務教育未修了者は、全国に百数十万人いると推計されている。部落女性の実態調査でも、若年層の非識字者の存在が明らかになっている。在日韓国・朝鮮人や障害のある人、中国からの帰国者、外国から移住してきた人やその家族、不登校の人や無戸籍児、貧困や虐待など、さまざまな理由で文字を学べなかった人、文字の読み書きはできるものの、その内容の理解や活用ができない人など、識字を必要としている人びとは多く存在する。

 文部科学省は、すべての都道府県に夜間中学の開設をすすめる方向を打ち出し、2017年2月には「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)」が施行された。今年ようやく埼玉県川口市と千葉県松戸市に各1校が新設された。それでも、学び直しの場でもある公立夜間中学は、まだ9都府県27市区に33校しかないのが現状だ。

 また、「出入国管理法」の改定などにともなう日本語教育へのニーズの高まりを背景に、今年6月には「日本語教育の推進に関する法律(日本語教育推進法)」が成立し、公布、施行された。この法律は、教育に関する施策の実施を国や自治体の責務とし、企業には雇用する外国人とその家族にたいして、日本語教育の機会を提供するよう努める責務があると明記している。文部科学省の2016年度調査によると、全国の公立学校(小・中・高・特別支援学校)に在籍する日本語指導が必要な児童生徒数が4万3947人、このうち1万400人が無支援状態にある。基礎的な教育を保障するために、識字・日本語学習の機会を整備していくことが求められる。

 こうした国内外の識字運動の状況があるなか、私たちのすすめてきた識字運動はますます重要になっている。被差別部落には差別と貧困によって文字を読めない、書けない人たちが多く、全国水平社は、創立から4年後の1926年に「水平社教育方針書」を策定し、軍隊入隊前の青年たちに文字教育をおこなうなど、組織的なとりくみをすすめた。まだ「識字」という言葉が使われていない1950年代には、部落解放運動、同和教育運動の高まりのなかで、文字の読み書きを学ぶとりくみが、それぞれの地域ではじめられていった。1953年、大阪では仕事に必要な運転免許をとるための文字学習会がおこなわれ、1960年代には、産炭地を中心に識字運動が広がり、1969年の部落解放第14回全国婦人集会(現・女性集会)で初めて識字の分科会が設置され、以降、女性部を中心に全国的な広がりにつながっていった。

 非識字は、仕事や日常の生活において、さまざまな困難や苦痛を生じさせる。しかし、非識字であることを自分の責任であると考え、恥と思い孤立し、隠さなければならない現実があるなか、「識字」の正しい理解を多くの人たちに伝えるためにも、識字のとりくみは重要である。

 10月5〜6日、日本教職員組合、公益社団法人全国人権教育研究協議会、国際識字年推進中央実行委員会の協賛を得て、第18回全国識字経験交流集会を香川県丸亀市で開催する。国内外の識字運動のとりくみ状況を学ぶとともに、「部落差別解消推進法」をはじめ、「教育機会確保法」や「日本語教育推進法」などをふまえ、識字のとりくみを強化していかなければならない。

 今日、識字学級をめぐる状況は変化し、自治体の裁量にまかされて、予算措置がなくなり、学級の維持が困難なところもでてきている。なによりも、非識字にたいする国や自治体の責任を明確化させるとともに、識字活動をさらに発展させ、自分の生きざまをとおして、差別の実態を明らかにするという、私たちの活動の原点を再確認しながら識字運動をすすめていかなければならない。また、パソコン教室や在日外国人が参加する日本語教室など、新たな識字活動のとりくみをすすめ、幅広く連帯と交流を深めるとともに、識字運動の充実と発展をめざし、全国識字経験交流集会を成功させよう。

 

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