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主張

 

第26回中央福祉学校を成功させ、
生活福祉運動の活性化につなげよう

「解放新聞」(2019.11.11-2930)

 10月、社会保障にたいする安定的な財源を確保するとして、消費税が10%に引き上げられた。急速に少子高齢化・人口減少がすすむなか、「全世代型社会保障」と銘打ち、「子どもたちからお年寄りまで、すべての世代が安心できる令和の時代の新しい社会保障制度のあり方を大胆に構想していく」とした。また、社会保障が高齢者への給付に偏り、不公平感を感じている現役世代や若年層への社会保障給付の拡充として増税の一部を教育費支援にあてるとした。来年4月からは高等教育の一部無償化を予定しており、幼児教育・保育の無償化はすでにはじまっている。しかし、幼児教育・保育の無償化については、財源となる消費税は誰もが等しく負担するにもかかわらず、朝鮮幼稚班(幼稚園)のような各種学校に分類される外国人学校に付属する幼保施設が対象外とされるなど、高校無償化と同様の差別措置がとられている。

 忘れてはならないのは、2012年に第2次安倍内閣が発足して以降の7年間で、社会保障費が4兆2720億円も削減されてきたことだ。今後も、75歳以上の窓口負担原則2割化や受診時定額負担、薬剤負担の見直し、要介護1、2の生活援助の総合事業への移行による保険外しや利用料2割負担化など、これまでの年金改悪、生活保護費削減と同じように、負担は増え、給付は減るといった制度改悪が強行される。すでに9月には「全世代型社会保障検討会議」の第1回会合が開催され、年金、介護に関しては年内に、医療に関しては「骨太の方針2020」に向けて具体的なとりまとめをはかるとしている。

 社会保障制度は、高齢、病気、失業などによって生活の維持が困難な場合に、生活を支えるためのものであるが、さらなる負担増・給付減となることで、セーフティネットの役割を果たせなくなるのは明らかだ。多額の武器や戦闘機の購入など7年連続で増額している防衛費などを抜本的に見直し、格差社会解消のために、医療や介護・年金、育児などの自己負担を軽減し、公的保障を拡充することこそが必要だ。

 安倍政権によって格差と貧困は深刻化し、生活・福祉にかかわる状況はますます厳しくなっている。「我が事・丸ごと」地域共生社会を推進する安倍政権は、自己責任による自立を強制する一方、地域住民の支え合いなどの「自助」「共助」のみを強調することで、社会福祉全般の制度改悪をすすめている。私たちは、財源の保障や制度の拡充を求め、社会的支援を必要とする人が排除されることのない地域福祉運動のとりくみをすすめていかなければならない。

 7月19日、地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会(地域共生社会推進検討会)の中間とりまとめが公表された。共同体機能の低下、8050問題などが指摘され、課題をかかえながらも自律的な生の継続を支援する機能の強化が求められた。さらに、自助・互助・共助・公助を固定的に捉えない考え方の転換が必要だとして、縦割りをこえて、多様な支援を可能とするための財政支援が不可欠とした。また、複合的な課題に一元的に対応できる自治体窓口の創設など、断らない相談支援の必要性が強調された。この検討会は、年内に最終報告をまとめ、来年の社会福祉法などの改定をめざしている。

 断らない相談支援、かかわり続ける支援などは、「人権と福祉のまちづくり」運動のなかで、実践してきたことであり、「人権と福祉」の拠点施設としての隣保館でもすすめられてきた。地域共生社会に向けた施策の推進のためには、これまで培ってきた隣保事業が果たす役割は大きく、さまざまな事業にとりくむことのできる可能性も無限に秘めている。とくに、こうしたとりくみのなかで、柔軟な発想で隣保館活動(事業)を拡大・活性化し、さまざまな施策における隣保館の役割・位置づけを明確にしていくことが必要である。「市町村地域福祉計画」や「都道府県地域福祉支援計画」のなかに隣保館の役割など部落問題の解決の視点を位置づけ、福祉や医療・介護制度を充実させていこう。

 また、近年の自然災害の頻発化などをふまえ、昨年閣議決定された「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」に、隣保館の耐震化対策等が盛り込まれた。改築や大規模修繕などによる耐震化整備が2020年度までの対策となっている。各地域で隣保館の整備などに関して要望をまとめ、緊急対策の予算を活用するためにも自治体との協議を積極的にすすめよう。

 これまで、「人権のまちづくり運動」を各地から創りだしていくとりくみがされ、それぞれ地域ごとの特色をもった人権のまちづくり運動がすすめられている。国や自治体の福祉政策などにかかわる一般施策を活用しているところや、他のNPOと連携した協働のとりくみをしているところ、自分たちで社会福祉法人などを立ちあげて事業を展開しているところ、隣保館を中心とし部落を「核」とした人と地域の活性化にとりくんでいるところなどさまざまだ。

 今後とも「部落差別解消推進法」や「障害者差別解消法」などをふまえ各都府県連のさまざまなとりくみをよりいっそう強めていくことが必要である。「人権と福祉のまちづくり」の実現のために、私たち一人ひとりが地域住民として隣保館の活動や事業に積極的にかかわり、社会的支援を必要とする人が排除されることのない地域福祉運動を部落内外の協働の力で発展させよう。

 12月14、15日と第26回中央福祉学校を和歌山市内でおこなう。1日目は、厚生労働省地域福祉課による、「部落差別解消推進法」をふまえた相談事業と隣保館の役割についての講演や、福祉と人権についての相談活動やサポートをすすめているNPO法人ヒューマンライツゆあさの実践報告と、湯浅町の人権条例と福祉のまちづくりについての報告を受ける。2日目は、全国隣保館連絡協議会から、全国の隣保館の現状と課題の報告を受けて学習を深める。こうした実践報告や討議をとおして、都府県連のとりくみ成果や問題点などを共有するとともに、支部や地域での課題を明らかにし、今後の生活福祉運動の活性化につなげていこう。

 

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