「解放新聞」(2019.11.25-2932)
【奈良支局】 天理市農業委員会は6月7日に市外の人物から「農地法違反ではないか」との通報を受けて、19日に農地所有者にたいして、田んぼのあぜに設置された説明板が農地法による違反転用の状態にあるとして撤去命令を出した。この説明板は、今年4月に「天理・柳本飛行場跡の説明板撤去について考える会」が独自に設置したもので、2014年4月に天理市と市教委が撤去した「戦時中に柳本飛行場建設に多くの朝鮮人労働者が強制連行され、朝鮮人女性が送られた慰安所があったことを伝える」説明板にかわるもの。「考える会」が再設置運動にとりくむなかで、支援者からカンパを募り、地権者の協力を得て、法令も遵守したうえで設置した「説明板」だ。
地権者と「考える会」は、弁護士を入れて対応を協議していたところ、8月5日付けで、天理市農業委員会から地権者に「農地に設置された工作物の撤去指導の撤回について(お詫び)」の文書が送付された。
その内容は、「近畿農政局の指導に基づいて撤去指導をした」が、「その後改めて奈良県農林部を通じて近畿農政局より「小規模で簡易的な看板等については農地転用に該当しない」との以前とは異なる見解がだされた」と撤回の理由をのべている。
一連の経過を受けて9月20日、市役所内で「考える会」と天理市、市農業委員会事務局との話し合いがおこなわれた。市側は並河健・市長らが出席。「考える会」は撤去指導が文書を渡すだけで、地権者の「どこが違反なのか」との質問に説明がないこと、地権者だけ指導して設置者や施工者の責任を問うこともなく、指導の仕方が強権的で「撤去ありき」の姿勢を追及した。
並河市長は、撤去指導の撤回で「われわれは、はしごを外された」と見解をのべ、近畿農政局に責任があるとしたが、事務局の説明不足については謝罪した。
議論は、市教育委員会が保管している「柳本説明板」におよび、並河市長は初めて議論に応じるとのべ、あらためて協議の場を設定することを確認した。
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