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「部落差別解消推進法」具体化に向けたとりくみを強化しよう

「解放新聞」(2019.12.16-2935)

 臨時国会が12月9日に閉会した。10月4日から開会された臨時国会では、首相主催の「桜を見る会」の招待者をめぐる問題が連日とりあげられた。

 政府の公的行事をあたかも首相自身の後援会行事のようにしながら、安倍首相は説明責任も果たさず、野党が要求した予算委員会にも出席しないままである。しかも内閣府は、国会質問のために資料請求された今年の招待者の名簿を同じ日にシュレッダーで処分し、データも復元できないとしている。そのうえ安倍首相は参議院本会議で廃棄処分を担当したのは障害者雇用の職員であると答弁、差別的な印象操作に批判が集中した。また、菅官房長官は、データは行政文書でないと居直り、疑惑・疑問は何ひとつ解明されないままの閉会となった。

 この間、安倍政権は、7月に実施された参議院選挙で9議席を減らし、自民党単独過半数と改憲発議に必要な3分の2の議席を確保することができなかったにもかかわらず、「国民の信を得た」と強弁している。また、改憲について自民党主導ですすめるとして「選挙で約束したことを実行に移すのが政治の責任」と、任期中の憲法改悪をあらためて強調した。しかし、選挙結果は、安倍政権による改憲に反対するものである。

 安倍政権は11月20日で通算在職日数が2887日となり、桂太郎・首相をこえて単独で憲政史上最長となった。そうした長期政権のおごりが今回の「桜を見る会」の問題である。

 安倍首相は「一切関知していない」とした虚偽答弁をふくめて、野党が要求している予算委員会で審議に応じ、疑惑や疑問にたいして、しっかりとした説明をすべきだったにもかかわらず、都合の悪いことには居直り、野党が要求した会期延長にも応じなかった。さらに、9月11日に第2次改造内閣が発足した直後には、不祥事で経済産業大臣、法務大臣が続けて辞任したが、首相自身の森友学園・加計学園疑惑も解明されていないなど、任命責任も説明責任も果たしていない。

 われわれは、このような安倍首相の居直り、虚偽答弁を許さず、憲法改悪と「戦争をする国」づくりを阻止する広範な協働した闘いの先頭で奮闘しよう。

 10月には消費税増税があり、12月6日に内閣府が発表した景気動向指数は6年ぶりの低水準となった。これは前回の14年4月の消費税増税のときよりも落ち込みが大きかった。大型台風の被害の影響もあるが、総務省が実施した10月の家計調査でも、14年4月の落ち込み幅よりも大きい結果となっている。このように市民生活が消費税増税によってより圧迫され、貧困や格差はますます固定化、拡大している。

 そもそも消費税増税は社会保障費の充実のためとしていたにもかかわらず、安倍政権は介護制度や医療制度を改悪するなど、社会保障費や教育費を大幅に削減している。また、教員の働き方改革を名目にした「公立学校教職員給与等特別措置法改正案」を成立させ、変形労働制を導入しようとしている。しかし、今日の学校現場に「繁忙期」「閑散期」などがあるはずもなく、これでは教員の時間外労働を解消するどころか、ますます長時間労働が恒常化される危険性が大きい。

 一方、来年度の軍事費予算は、昨年度よりも増額され、8年連続で過去最大を更新、5兆3千億円とする方向で調整されている。沖縄・辺野古の新基地建設強行や米国にいいなりの高額な兵器の購入をはじめ、憲法違反の護衛艦「いずも」の空母化、米国が主導するホルムズ海峡での「有志連合」に同調する、中東地域への自衛隊派兵など、従属的な日米軍事同盟強化のための予算である。しかも、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を4倍以上に増額するように要求されていることや、農産物の市場開放をすすめる日米貿易協定の締結など、安倍政権は、人権や平和、環境の確立に逆行する政治をすすめている。

 われわれは、こうした安倍政権のもとでの厳しい情勢を打ち破り、ねばり強いとりくみで「部落差別解消推進法」制定をかちとった。「部落差別解消推進法」の意義は、国が部落差別が厳存することを認め、その解消に向けた理念と施策の必要性を明らかにしたことである。

 2016年12月の「部落差別解消推進法」施行から3年が経過し、今日的には「部落差別解消推進法」の具体化に向けて、自治体での「条例」づくりが全国的にすすめられている。奈良県での「条例」制定、福岡県での「条例」改正をはじめ、和歌山県湯浅町での「条例」では、部落差別にたいする罰則もふくめた内容が盛り込まれた。また、人権教育・啓発にかかわる政府予算の増額についても、われわれの要求をふまえて、全国知事会や全国市長会の政府要望にもとり入れられるなど、施策の充実の面でも成果をあげている。

 さらに、インターネット上の差別情報についても法務省が通知を出すとともに、総務省と法務省が連携して、業界団体としての対応策が推進されるようにとりくむなど、現実の差別実態をふまえた「部落差別解消推進法」具体化の動きをつくり出してきた。また「部落差別解消推進法」第6条にある部落差別意識に関する国民意識調査は、8月には実施され、年度内には法務省が調査結果を分析、それをふまえた施策のあり方などが明らかにされる。

 国民意識調査については、サンプル数や回収率、調査項目などで、法務省にねばり強く問題を指摘してきたが、どのような調査結果の分析と施策の方向性が出されるのか、しっかりと対応していく必要がある。また、調査項目が明らかになった段階で、自治体での調査についてもとりくんでいくことが重要である。

 今日、部落差別だけでなく、在日コリアンや障害者、性的少数者(LGBTQ)などにたいするヘイトスピーチやインターネット上での差別言動がますます激化している。ヘイトスピーチにたいしては、川崎市が罰則を盛り込んだ条例制定や、京都府では全市町村に公的施設の使用に関するガイドラインづくりなどがすすんでいる。

 こうしたとりくみの成果をふまえ、「ヘイトスピーチ解消法」「障害者差別解消法」「アイヌ施策支援法」などのそれぞれの個別人権法の充実と、国内人権委員会創設を中心にした救済制度の確立をめざすことが求められている。この間、立憲民主党、国民民主党でそれぞれ人権政策推進に向けた議員連盟が設立された。救済制度をめぐる与野党の政策協議をもすすめてもらいたい。

 安倍政権は救済制度などについては、いまだに消極的な姿勢を示している。こうした厳しい情勢にあっても、われわれは、差別の現実をしっかりと訴え、反差別共同闘争を強化し、日本における人権の法制度確立に向けたとりくみをいっそう強化しよう。

 

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