「解放新聞」(2020.01.13-2938)
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安倍首相は、昨年の参議院選挙で改憲発議に必要な3分の2の議席を確保できなかったにもかかわらず、年頭所感でも「未来をしっかりと見据えながら、この国のかたちに関わる大きな改革を進めていく。その先にあるのが、憲法改正です」と、あくまでも憲法を改悪する姿勢を強調した。
2014年7月の集団的自衛権容認の閣議決定をはじめ、「特定秘密保護法」「戦争法」「共謀罪」創設の強行など、安倍政権は強引な手法で「戦争をする国」づくりをすすめてきたが、改憲阻止に向けた広範な闘いによって、衆議院憲法調査会ではいまだに自民党改憲案の提示もできていない。自民党は都道府県段階での改憲集会の開催を指示するなど憲法改悪策動を強めているが、われわれは、安倍政権による憲法改悪に反対し、人権と平和、民主主義の確立に向けた広範な闘いとの連帯を強化していこう。
昨年末に閣議決定された来年度予算案では、8年連続で過去最大を更新する5兆円をこえる軍事費が計上されている。しかもトランプ米国大統領は、1月2日には、米軍による空爆でイラン革命防衛隊司令官などを殺害し、中東地域に米軍3000人を増派することを決めた。このように中東情勢は悪化する一方であるが、安倍政権は、この中東地域に米国主導の「有志連合」に同調し、「調査・研究」の名目で、自衛隊の派兵を国会での審議もなしに閣議決定のみで実施しようとしている。
まさに憲法違反であり、米軍とともに軍事行動も想定されるような自衛隊の海外派兵に断固反対する闘いをすすめよう。
これまでも、安倍政権は海上自衛隊の護衛艦である「いずも」を改修し、米国から購入した戦闘機を配備する「攻撃型空母」として運用するとしてきた。「攻撃型空母」を保有することは「専守防衛」に反する憲法違反である。さらに年明けには、中国を仮想敵国とした巡航ミサイルや戦闘機を迎撃する新型防空システムを沖縄本島に配備する計画を明らかにしている。このように安倍政権は、沖縄・辺野古の新基地建設の強行など、米国追従を深め、日米軍事同盟をますます強化しようとしている。
こうした安倍政権の軍事大国化路線を許さず、憲法改悪阻止と「戦争をする国」づくりに反対する広範な闘いをすすめよう。
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2016年12月に「部落差別解消推進法」が施行され3年以上が経過した。この間、「部落差別解消推進法」の具体化に向けて、政府各省交渉や与野党国会議員への要請をはじめ、都府県・市区町村交渉などをすすめてきた。また、条例制定、改正のとりくみでも全国的に成果をあげてきた。
川崎市では昨年12月に「ヘイトスピーチ解消法」の制定をふまえ、ヘイトスピーチをくり返すなどの悪質な言動にたいする罰則を盛り込んだ条例が可決された。われわれも、ひき続き、行政交渉を強化するとともに、議会対策もふくめて、今後とも条例制定、とくに都府県段階でのとりくみを強化しよう。
また、「部落差別解消推進法」第6条の部落差別に係る実態調査は、法務省が中心となって、昨年に、国民意識調査として実施された。これまで調査項目、調査サンプル数などについて、今後の部落差別撤廃に役立つ施策の確立に向けた実態調査になるように要請してきた。これまですすめられてきた部落差別事象についての自治体からの報告や、法務省によるインターネット上の部落差別情報の集約などとあわせて分析され、今後の必要な施策が明らかにされる。われわれも調査項目もふくめて、それぞれの調査内容を検討、分析し、政府や自治体にたいする今後の政策要求につなげていくことが必要である。
さらに、昨年10月には、立憲民主党、国民民主党で人権政策推進議員連盟がそれぞれ設立された。安倍政権は個別人権課題での法的措置については、これまで「部落差別解消推進法」をはじめ「ヘイトスピーチ解消法」や「障害者差別解消法」「アイヌ施策推進法」が制定されてきた。今後、性的少数者(LGBTQ)などに関する法的措置が検討されている。こうした個別人権課題での法制定のとりくみでの成果と課題を明らかにし、差別禁止をふくむ人権委員会設置などの包括的な人権の法制度確立に向けた協働のとりくみをすすめよう。
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部落差別事件では、「部落差別解消推進法」第1条にもあるように、高度情報化時代のなかで、インターネット上の差別情報の氾濫が深刻になっている。この間、対策会議を開催し、モニタリングのとりくみ拡大や人材育成の推進などの課題を明らかにしてきた。
鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争では、これまで進行協議がすすめられてきたが、年内には口頭弁論が再開され、証人尋問がはじまる。ヘイトスピーチと同様に、差別を公然と煽動する鳥取ループ・示現舎の言動を許さず、裁判闘争に勝利しよう。
また、同じ鳥取ループ・示現舎による「部落探訪」は、復刻版出版禁止の仮処分が出された「全国部落調査」を利用して、未組織部落をふくめた全国の被差別部落を写真付きで、インターネット上に公開している悪質なものである。法務省はすでに、こうした行為が差別にあたるとした通知を出しているが、いまだに削除されていない。これまでも自治体や地方法務局への要請にとりくんできたが、さらに全国で削除要請の活動をねばり強くすすめていこう。
狭山再審闘争では、弁護団が万年筆や脅迫状にかかわって、石川一雄さんの無実を科学的に証明した新証拠を提出している。
インクにふくまれる元素を分析し、石川さんの「自白」によって発見された万年筆が被害者のものではないとした「下山第2鑑定」や、コンピュータを使った計測による脅迫状の筆跡鑑定によって、脅迫状の筆跡は別人のものであるとした「福江鑑定」である。いずれも科学的な手法で、寺尾判決の誤りを明らかにした重要な新証拠である。こうした新証拠の情宣や学習をすすめ、全国各地で石川さんの無実を訴え、再審実現に向けた世論を大きく拡げていこう。また、全証拠開示と事実調べの要請ハガキ、現調のとりくみなども積極的にすすめよう。
昨年5月には、天皇代替わりがあった。われわれは「貴族あれば賤族あり」とした部落解放運動の立場を明確にしながら、天皇制の強化や政治利用には断固反対しなければならない。
このように部落解放運動にとって重要な課題が山積している。安倍政権による憲法改悪を阻止し、差別と戦争に反対する協働の闘いをすすめ、「部落差別解消推進法」の具体化、狭山再審闘争の勝利、差別糾弾闘争の強化などに全力でとりくもう。昨年の闘いをしっかりと総括し、「佳き日」に向けて、統一と団結の力で部落解放運動の勝利の年にするためにともに奮闘しよう。
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