「解放新聞」(2020.01.20-2939)
「全国部落調査」復刻版出版事件裁判で、今後の裁判のすすめ方を協議する10回目の弁論準備(三者協議)が2019年12月26日、東京地裁でひらかれた。弁護団は、これまでの準備書面で主張してきたアウティングとカミングアウトの違いなどをあらためて主張するため、プライバシー権に関する主張の補充として準備書面15を提出した。
書面で弁護団は、被告らの主張が、本人の了解を得ずに本人の機微情報にわたるプライバシーを暴露するアウティングと、本人自身が望む方法・タイミングで、望む人にたいしておこなうカミングアウトとの違いを無視し、プライバシー権の何たるかを理解していない謬論であると指摘し、プライバシー権(概念)に係る裁判例などをあげた。
そのなかで、自己情報をみずからコントロールできないところでは、他人に憶測を生む可能性があり、それをみずから意識することで私人が受ける精神的な負担・不安・苦痛は大きく、幸福の追求を困難にするものであることなど、自己に関する情報をいつ・どこで・どのように・いかなる範囲で他者に開示するのかをみずから決定するという自己情報コントロール権について、主張の補充をおこなった。
また、アウティングで多大な被害が生じた事件や裁判例をあげ、差別が現実社会に存在するなかで、自分に関するアウティングがおこなわれれば、差別の対象になるかもしれないという恐怖・不安で平穏に私生活を営むことが困難になることを主張した。
そのうえで、カミングアウトとアウティングは自己情報のコントロールという観点からみれば真逆のものであるとし、被告らが「原告がカミングアウトしている以上、自分がアウティングして何が悪い」という主張をくり返しているが、たとえ原告の一部がカミングアウトしていたとしても被告らの行為は原告にたいする権利侵害であり、アウティングがプライバシー侵害をこえて原告らの行動を冒瀆するものであると指摘した。
なお、弁論準備(三者協議)では、弁護団が提出した、「全国部落調査」復刻版および「部落解放同盟関係人物一覧」と原告らの関連を一覧にした「属性表」にたいして、被告が反論の書面を出さなかったので、あらためて三者協議をひらくことになった。次回も弁論準備を2月10日におこなう。
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