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NEWS & 主張

主張

 

部落解放中央共闘会議総会を成功させ、
差別と戦争に反対し闘い抜こう

「解放新聞」(2020.02.17-2943)

 部落解放中央共闘会議第44回総会が、2月19日、東京・全水道会館で開催される。労働組合との共闘を中心にして部落解放中央共闘会議が1975年に結成され、全国各地に部落解放共闘が結成された。部落解放中央共闘会議に結集するすべての労働組合、部落解放同盟が積極的に参加し、第44回総会の成功をかちとろう。

 「部落差別の解消の推進に関する法律」(以下、「部落差別解消推進法」)が施行されてから3年が経過した。この間、奈良県や高知市、兵庫県たつの市、加東市をはじめ、愛知県津島市、福岡県小郡市、飯塚市、大分県豊後大野市、豊後高田市、玖珠町、九重町、熊本県菊池市などで「部落差別解消推進法」制定をふまえた「条例」が制定され、福岡県や大分県内の自治体で「人権条例」が改正された。今後、法の具体化をすすめるために、「部落差別解消推進法」をふまえた「条例」制定運動を全国的に展開しなければならない。

 しかし、真に部落差別をなくしていくための課題は山積している。「部落差別解消推進法」では、部落差別にたいする禁止規定がないため、インターネット上には、部落差別情報とそれを助長する情報が掲載されたまま放置されている。

 とくに、鳥取ループ・示現舎による「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」復刻版出版事件やインターネット版部落地名総鑑「部落探訪」や部落解放同盟人物一覧などの影響は大きい。法務省は、2018年12月に、こうした特定の地区を被差別部落と明示することは人権侵犯事案であるとした通知を出した。また、「部落差別解消推進法」制定をふまえた総務省の要請により、インターネット事業者団体でのガイドライン改定があったものの、いまだに削除されていない。鳥取ループ・示現舎の影響による差別事件は、佐賀県メルカリ販売事件、滋賀県のシルバー人材センター事件、茨城県古河市職員ストーカー事件、埼玉県春日部農林振興センター事件など、あとをたたない状況が続いている。一刻も早い、差別禁止法の制定、「プロバイダ責任制限法」の改訂などの法改正を実現するために、あらゆる各界各層の人びとによる広範囲な運動を展開する必要がある。

 2018年度末の企業の内部留保が463兆1308億円となり、前年度末比3・7%増、7年連続で過去最高を記録している。また、民間企業の労働者が2018年の1年間で得た平均給与は440万7000円で、前年から8万5000円(2・0%)増加した。しかし雇用形態別では、いずれも増加しているものの、正規社員は503万5000円、非正規は179万円と格差は324万5000円で、分類をはじめた2012年の299万6000円から一貫して拡大している。

 格差社会では生きづらさをかかえ、不満のはけ口を探している人たちが多くいる。そしてインターネット上には、そのはけ口を、差別や排外主義に向かうように仕向ける情報を掲載している者もいる。

 多くの人びとが格差社会の構造を理解し、自分の置かれた立場を自覚し、差別と分断を許さず、団結して闘う構図をつくり出すことが重要だ。

 新たな就職差別につながる事件がおこった。就職情報サイトのリクナビ問題だ。リクルートキャリアは、リクナビに登録した個個の学生が閲覧した企業や業界サイト情報をAI(人工知能)で分析し、就活中の大学生が同業他社やほかの業界のサイトを閲覧した記録や閲覧時間の傾向から内定辞退率を5段階で算出し、約8000人の情報を学生の同意なく38社に販売していたことが明るみに出た。この事件は、1975年におこった「部落地名総鑑」事件や就職差別身元調査事件を想起させる。リクナビは、掲載企業数約3万社で登録学生数約80万人といわれており、学生は無料であり顧客企業からの掲載料で成立している。今後、個人から提供されたデータをビッグデータとして活用し、解析することによって学生の趣味趣向や思想信条が把握され、それらが採用判断に差別的に利用される危惧がある。同時に、リクルートキャリアだけの問題ではなく、こうした情報を購入した企業も問題であり、猛省をうながしたい。

 就職時の大量差別身元調査事件(1998年)では、約860社が採用時にコンサルタント会社であり調査会社であった日本アイビー社・リック社に差別身元調査を依頼していた。この事件を契機に、1999年、「職業安定法」が改正された。「職業安定法」第五条の四で求職者の個人情報の規定を設け、同上にもとづく「指針」も整備され、事実上、採用差別や身元調査事件ができなくなった。

 また、「指針」では、すべての企業に「業務の目的の範囲内で求職者等の個人情報を収集することとし、人種・民族・社会的身分・門地・本籍・出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項、思想及び信条、労働組合への加入状況を収集してはならない」と規定し、「個人情報を収集する際には、本人から直接収集し、又は本人同意の下で本人以外の者から収集する等適法かつ公正な手段によらなければならない」ことを定め、採用時における差別禁止と自己情報コントロール権を強化した。リクナビ問題を契機に、「職業安定法」第五条の四と指針の徹底を行政や企業に求めるとともに、雇用と職業についての差別を禁止した「ILO第111号条約」批准を求める運動を強化しなければならない。

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 中央共闘・全国共闘として、6月を中心に「就職差別撤廃月間」を設定し、「統一応募用紙」の趣旨の周知徹底と点検活動など各職場における啓発活動、府県行政・教育委員会と労働局、経営者団体などにたいする就職差別撤廃の啓発強化の働きかけなどにとりくむよう各府県共闘によびかけてきた。また、このとりくみのための啓発リーフを中央共闘で2万部つくり、各中央単産・府県共闘に配布してきた。

 また、労働局などへの要請行動は、栃木、群馬、埼玉、新潟、神奈川、愛知、岐阜、三重、京都、大阪、和歌山、兵庫、鳥取、岡山、広島、徳島、愛媛、九州ブロックの7県民会議など、とりくみが広がってきており、九州では、私学協会など学校関係への要請もおこなっている。

 中央共闘としても、総務省公務員課、厚生労働省就労支援室への申し入れにとりくむとともに、各県民共闘会議へ、労働局への要請行動にとりくむようよびかけたい。また、格差社会を是正するため、不安定雇用や採用・賃金・労働条件における差別をなくし、労働者の人権を守り、公正なワークルールづくりなどに活かせるよう、共闘運動を展開しよう。

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 (略)

 

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