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主張

 

男女平等社会の実現に向けてとりくみをすすめよう

「解放新聞」(2020.04.15-2950)

 「世界経済フォーラム」は毎年12月に、「ジェンダー・ギャップ(男女平等)」指数のランキングを発表している。調査対象は153か国で、日本は121位と毎年低順位が続いている。国会議員や企業での管理職に占める女性の割合が諸外国と比べると低く、女性の社会進出が遅れていると指摘されている。さらに、働きたくても子どもを預ける保育所(園)が不足しているなど、女性が仕事に復帰しようとしてもできない政策的な問題もいっこうに改善されていない。

 「ジェンダー・ギャップ」指数が11年連続トップになっているのは、アイスランドで、ノルウェー、フィンランド、スウェーデンと北欧諸国が上位を占めている。上位の北欧諸国では、国をあげて男女格差を解消するための政策がすすめられ、性的少数者(LGBTQ)にたいするとりくみもおこなわれており、日本のように、扶養控除などの税制や社会保険制度を気にして労働をひかえたりする必要はない。

 日本では、安倍政権が2015年に「女性が輝く日本」と称して「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(「女性活躍推進法」)を制定し、2019年には一部改正もおこなわれたが、女性の国会議員や企業での管理職に占める割合(男女格差指数)は低く、働きたくても働けない女性が多くいるのが実態である。

 日本の人口は年年減少し、少子高齢化社会を迎えている。男女がともに働き続け、仕事(ワーク)と生活(ライフ)の両立が可能となるような社会の実現をめざすためには、女性が出産や育児・介護のために仕事を辞めずに働き続けることができる環境整備や、男性にも取得しやすい育児・介護休業をはじめ、各種休業制度の充実と待機児童の解消などが重要な課題である。また、2020年4月1日から、働き方改革のひとつである「同一労働、同一賃金」の改正法が施行された。労働者が性別によって差別されることがなく、労働時間の短縮や、「同一労働、同一賃金」を実現し、職場で意欲と能力を充分に発揮できるような、それを実現させる社会意識の変革と制度やしくみを創造していくことが必要だ。とくに、2015年に国連で全会一致で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)のように、国際社会の共通目標として人権やジェンダー平等などがとりあげられており、世界的な動きとも連動させていくことが求められている。

 これまでアイヌ女性、在日コリアン女性、部落女性の三者で、アンケート調査結果や、国連女性差別撤廃委員会から日本政府に出された勧告をふまえた関係省庁との交渉をおこなってきた。今後も、マイノリティ女性にたいする施策の充実と政府による実態調査を協働で要求するなど、ねばり強く働きかけをしていかなければならない。

 今年12月には、「第5次男女共同参画基本計画」が閣議決定されることになっており、7月には「第5次男女共同参画基本計画」の公聴会やパブリックコメントが予定されている。公聴会に積極的に参加し、パブリックコメントでも私たちの声を届けるとりくみを全国的に集中しよう。とくに、「第4次男女共同参画基本計画」の積極面を活用し、より具体的な内容の「男女平等条例」を制定する必要がある。さらに、男女共同参画審議会委員の一般公募があれば積極的に応募し、委員会のなかで部落女性をはじめ、マイノリティ女性の声を反映させていこう。

 また「旧優生保護法」による強制不妊手術の問題では、国家賠償訴訟を支援し、国の責任の明確化と謝罪を求めていかなければならない。ハンセン病家族訴訟でも、2019年6月に熊本地裁が国への損害賠償を命じたが、今後とも国の差別政策の誤りを明確にしていくために支援を強めていこう。このように、今日の部落解放運動では、部落差別撤廃の闘いとともに、女性差別、障害者差別、性的少数者(LGBTQ)差別、複合差別にもしっかりと視点を置いた協働のとりくみが求められている。

 さらに、ヘイトスピーチなどの差別煽動や偏見による暴力事件を許すことなく、日朝国交正常化や「慰安婦」問題の解決など、日朝、日韓友好連帯活動や日中友好運動をはじめとした国際連帯活動にも積極的にとりくむ必要がある。また、沖縄・辺野古の米軍基地問題は沖縄だけの問題ではなく、日本社会での差別構造の問題であることをしっかりととらえ、反戦・平和の運動にも積極的にとりくんでいこう。

 現在、少子化がすすんでいるにもかかわらず、保育所(園)への待機児童の問題が深刻化している。共働き世帯が増え、家庭のスタイルが核家族型にほぼ変わりつつあるにもかかわらず、公立保育所(園)の増設がすすんでいない。昨年10月から、幼児教育の無償化(一部非課税世帯等などの制限がある)がおこなわれており、これを受けて、新たに働きたいと思う女性が増える一方で、待機児童の問題は解決していない。保育所(園)の増設が急務の課題となると同時に、現在、復職する女性の多くが非正規で働いているという問題もある。

 さらに、いまだに「性別役割分業」はあたりまえといった意識が女性のなかにも存在しており、これらの意識が、女性の社会進出の道をみずから閉ざす結果となっている。男女平等の意識をつくるには、なにがジェンダー(社会的文化的な性的役割・分業の固定化)なのかということに気づくことが大切である。女性にたいする差別意識や日常生活、メディアのなかに存在するジェンダーなどに気づき、身近なことから制度や慣習について見直すことができるような「ジェンダーにとらわれない意識」を積極的に形成していくことが重要である。また、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントなどについても、しっかりとした相談窓口の設置など実効ある対策を求めていこう。

 「男女平等社会実現基本方針」(第2次改訂)にあるように、組織内でも女性が力を発揮できる組織運営、運動になっているのか、女性への差別待遇、イエ意識や男尊女卑的な考え方が組織のなかにあらわれていないかを再点検する必要がある。また、女性が意思決定機関に参画できるように、ポジティブアクション(積極的差別是正措置)を組織運営にとり入れていくことや、女性差別を撤廃していくためには、意識変革と同時に、マイノリティの声を反映するための組織のシステムを確立していくことが不可欠である。そして、さまざまな機関の定数などが一方の性に偏らないようにするような機関運営をとり入れることも重要だ。

 昨年のブロック別学習会にひき続き、拡大中央委員会で男女平等社会実現に向けた学習会をおこない、組織内外でのとりくみの重要性が強調された。今後も女性部が中心になり、都府県連・地区協議会・支部で具体的なとりくみをすすめ、女性部としての人材育成を中心に組織強化に結びつけていこう。

 女性をとりまく情況は大きく変化している。部落解放運動だけではなく、さまざまな差別と闘う国内外の女性たちと反差別・反貧困のネットワークをつくることが求められている。すべての女性たちとの連帯をさらに強化し、人権と平和の確立、いのちと生活を守る協働のとりくみを地域ですすめよう。

 今日の安倍政権のもと、人権や平和の課題は大きく後退しており、社会にたいする不安・不満が安易に差別排外主義につながっている。女性部が先頭に立って、安倍政権がすすめる憲法改悪に断固反対し、差別と戦争に反対する闘いを強化しよう。さらに、女性差別を許さず、ジェンダーによって役割を強制されたり、生き方を制限されたりすることのない男女平等社会の実現に向けて、とりくみをすすめよう。

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