「解放新聞」(2020.04.25-2951)
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自民党総裁任期が残り1年9か月となるなか、通常国会が1月20日に召集され、安倍晋三・首相が施政方針演説をおこなった。施政方針演説のなかで安倍首相は、「国のかたちを語るもの、それは憲法だ」としたうえで、「未来に向かってどのような国を目指すのか、その案を示すのは私たち国会議員の責任ではないか」「歴史的な使命」と訴え、憲法改悪に意欲を示した。1月4日の年頭会見でも、「期限ありきではない」としながら「令和の時代にふさわしい憲法改正原案の策定を加速させたい」と強調、テレビ番組では、「私自身の手で憲法改正を成し遂げたいという思いには全く揺らぎはない」と語っていた。
憲法改悪をめざす自民党は、「憲法改正の主役は、あなたです」とよびかけるポスターを発表した。自民党が憲法改正をテーマにしたポスターの制作は初めてで、平沢勝栄・広報本部長は「憲法改正は当面の最重要課題の一つ」だと訴えた。
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しかし、国民が「憲法改正」を望んでいるわけではない。共同通信が1月11、12日に実施した世論調査では、安倍首相の下での憲法改正に「反対」が52・2%で、「賛成」の35・9%を上回った。一方、産経新聞とFNNが1月14日に公表した調査では、憲法改正に「賛成」が44・8%で、「反対」を4ポイント上回った。同時に、連立与党の公明党の山口那津男・代表は慎重な姿勢を示している。憲法改正に関しては、テレビ番組で、「政府課題の優先順位というところでは国民の関心は必ずしも高くない」としたうえで、「冷静に現実的に見据えて進める必要がある」とのべた。
現在、日本では憲法を改悪し、戦争ができる国づくりより、やらなければならないことがある。
バブル経済が崩壊し、新自由主義政策が進行し、貧困と格差社会が拡大している。
平均所得は2017年度で551万6千円、1994年の664万2千円と比べると100万円以上減少した。また、母子家庭の平均所得は282万9千円、平均所得以下の世帯は64・8%を占めている。所得が200万円未満の世帯は全体で11・5%だが、母子家庭では36・3%にのぼり、相対的貧困率は2012年の16・1%から若干改善して2015年に15・6%を示しているが、ひとり親家庭(多くが母子家庭)の貧困率はいまだ50%をこえて、OECD加盟35か国中ワースト1位となっているのが現状だ。
就労状況も2018年の役員を除く雇用者5596万人のうち、非正規の職員・従業員は84万人増加し、2120万人。就労人口の37・8%で、2018年賃金構造基本統計調査の雇用形態別賃金を見れば、正規労働者の平均賃金を100として、非正規職員は65・5%、女性の非正規労働者は58%にしかならない。
橋本健二・早稲田大学教授が、「アンダークラス」と指摘する非正規労働者からパート主婦や役員・管理職を除いた人びとは、就業人口の14・9%、929万人が存在している。多くの人は、フルタイムで働いているが、非正規という理由で圧倒的に所得が低く、平均年収は186万円、貧困率は38・7%にのぼる。結婚して家庭をつくることが困難で、男性の66・4%が未婚者、女性の43・9%が離死別を経験している。
生活保護や医療・介護費、国民年金など社会保障に関する予算は縮小する傾向にあり、高齢者の貧困も深刻さを増してきている。
こうした貧困問題が「自己責任」「本人の努力が足りない」という個人の問題で、片づけられようとしている。しかし、これは政治の問題であり、まさに、日本がどんな社会をつくっていくのかの方針が求められている。新自由主義政策をやめ、雇用形態の改善をはじめ、税制度の抜本的な改革やさまざまなセーフティネットの充実が必要だ。憲法改悪ではなく、日本政府は、こうした非正規雇用をはじめ、女性、高齢者、子どもなど弱者をむしばむ貧困問題にしっかりと向き合うことが求められている。
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安倍政権による教育への政治介入が強化されている。その一つが教科書採択だ。
1996年に、従来の歴史教科書が「自虐史観」の影響を強く受けているとして、歴史修正主義で、戦前の軍国日本を肯定する教科書をつくり、採択させようと「新しい歴史教科書をつくる会」が結成された。2001年に、『新しい歴史教科書』、『新しい公民教科書』が検定意見箇所を修正し、検定に合格したものの採択率は、0・1%だった。
しかし、2011年には、歴史で約3・7%、公民で約4・0%になり、2015年には、全国シェアが歴史で約6・2%、公民で約5・7%まで、拡大している。
「道徳」が「特別の教科 道徳」となり、小学校では2018年4月から検定教科書を使った授業がはじまった。各社の教科書は、「人権の視点」から見ていくと、さまざまな問題点をかかえている。具体的な人権問題にかかわる記述が少なく、子どもたちが、部落問題、障害者、在日外国人などの人権問題について考えることができない。
また、「伝統文化」「愛国心」にかかわる記述が多く、「日本のすばらしさ」「日本人の優秀さ」が強調され、外国人にたいする優越感や排外意識を植え付けようとしている。同時に、国家が優先され、「自己犠牲」「公共の精神」を美化し、個人がないがしろにされて、差別・選別を肯定する方向に強化している。
2015年にあった大阪市立中学校の歴史・公民教科書の採択の参考となった住民らを対象にした市教委のアンケートをめぐり、歴史修正主義的な育鵬社教科書採択推進運動の一環としてフジ住宅による組織動員があった。フジ住宅の会長が「大阪市は数多くの教科書アンケートを記入していただければ、育鵬社に採択される可能性が高くなる」と同社員によびかけ従業員を動員し、教科書展示場から1200枚超の用紙が集められた。こうした愛国心と自己犠牲を刷り込む教科書の採択を許さず、人権、共生などの視点をもった教科書が採択されるよう広範囲な市民運動を展開しよう。
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現在ひらかれている通常国会では、安倍首相主催の「桜を見る会」、カジノをふくむ統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件、公職選挙法違反の疑惑が報じられた自民党の菅原一秀・前経済産業相、公選法違反容疑で事務所が家宅捜索を受けた河井案里・参院議員、河井克行・前法相など大問題であり、課題は山積している。安倍政権は、すべての疑惑を明らかにし、即刻、退陣すべきだ。
私たちは、戦争への道を突きすすむ安倍政権の暴走を阻止するために「戦争をさせない1000人委員会」と連携し、「集団的自衛権」の行使容認の阻止や「戦争法」廃止の闘いにとりくんできた。
「総がかり行動実行委員会」は、毎月19日行動のとりくみ、「戦争法」にたいする抗議行動・集会、違憲訴訟支援のとりくみ、「戦争法」の廃止を求める統一署名を、広範囲な人びとを巻き込みながらとりくんできた。
また、「安倍9条改憲NO!改憲発議に反対する全国緊急署名」がよびかけられており、とりくみが展開されている。
これらのとりくみに、幅広い人びとと力をあわせてとりくんでいこう。
新型コロナウイルス感染拡大の状況のなかでも、平和と人権、民主主義の確立をめざして各地でとりくみをすすめていこう。
戦争する国づくりをすすめ、新自由主義路線にもとづき貧困と格差を拡大する安倍政権と対決し、立憲主義と平和憲法を守り、人権、平和、民主主義の確立をめざし、すべての市民と連帯して闘い抜こう。
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