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差別を拡散する鳥取ループを糾弾し、裁判闘争を支援しよう

「解放新聞」(2020.05.05-2952)

 4月8日の予定だった「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の第12回三者協議は新型コロナウイルスの影響で中止になり、今後のスケジュールは5月6日以降にあらためて協議されることになった。前回の三者協議では8月以降の証人尋問を確認し、書類のやりとりもこの日で一応終了する予定だったが、結果的にすべての日程は連休明けの協議にもちこされることになった。

 弁護団は、この日にあわせて準備書面を2通(第18、19)提出し、関連する証拠書類や未提出だった原告の陳述書を提出した。

 弁護団が提出した準備書面(18)は、被告の提出した準備書面(9〜11)にたいする反論で、おもな内容は、阿久澤麻理子・大阪市立大学教授の二つの意見書にたいする被告Mらの的はずれの批判にたいする反論と、「ミラーサイト(同和地区.com)」にたいする被告らの責任逃れへの批判だ。

 阿久澤意見書は、「現代の部落差別は、『部落の地名』と、ある人の住所・本籍地・出生地が一致するかどうかという、属地的な手がかりによって行われており、Mらが行った、『部落の地名』を網羅的・一覧的にネットにアップする行為は、その情報をばらまき、安易な身元調査や『出身者さがし』を助長・誘発する行為にほかならない」と、Mらの「全国部落調査」の公表がもたらす影響を厳しく指摘した。

 これにたいしてMらは、「根拠を示していない」(準備9)とし、地区を手掛かりにする現在の部落差別の実態を否定する的はずれなケチ付けをした。

 弁護団は、あらためて「現代の部落差別は、『部落の地名』と人の住所・本籍地・出生地が一致するかどうかという、属地的な手がかりに大きく依存して行われている」とのべたうえで、「『部落の地名』リストはネットで簡単にみることができるので、身元調査を行ったことは表面化すらしない。Mらの行為は、身元調査が隠れたところで、ひっそり行われてしまう事態を招いているのである」と意見書を引用し、被告らの行為により、「誰でも・いつでも・どこでも」被差別部落にたいする差別行為の典型である身元調査がおこなわれてしまう事態を生み出していると厳しく指摘した。

 また、弁護団は、準備書面(18)でMらの責任逃れを厳しく追及した。これまで弁護団は、Mらは「全国部落調査」のコピー版である「ミラーサイト(同和地区.com)」の作成に深く関与しており、その責任があると指摘してきた。これにたいしてMは、準備書面(10)で、「ミラーサイト(同和地区.com)を含めて、『部落解放同盟関係人物一覧』のような個人情報の列挙や、個人を誹謗中傷する内容は被告らが予見できたことではない」とし、関与を否定し、「それが社会に与える影響についてすべて考案者(*Mのこと)が責任を負わなければならないとするのは、『相当因果関係』という概念を越えたもの」と責任逃れをくり返した。

 これにたいして弁護団は、仮処分命令が出たあとにMが鳥取ループ@示現舎のツイッター上に「復刻・全國部落調査」の印刷用データを公開し、「自由に印刷・製本してください」とよびかけ、「これで、更に異次元へ突入します。印刷用のマスターデータを拡散したので、いったいいくつの復刻版全国部落調査が存在するのか、誰も分からなくなりました」などと投稿し、「全国部落調査」の拡散をみずから認めたうえで、それが拡散することを期待している気持ちを明け透けに表明していると指摘、責任逃れを厳しく弾劾した。

 また弁護団は、Mらの行為はヘイトスピーチだと主張した。準備書面で弁護団は「ヘイトスピーチ解消法」を引用して、「被差別部落出身者に向けられた差別的言動には、専ら被差別部落出身である者又はその子孫に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、被差別部落出身であることを理由として、被差別部落出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動が含まれるといえる」と指摘。また、「特定地域を晒すことで、この地域は注意すべき・怖い地域、つまり怖い人たちが住んでいるということを不特定多数の人々に知らせ、意識を喚起する。特定の地域に住んでいる集団・人々は、自分達とは異なる人たちという意識を喚起するのである」とのべたうえで、「このような特定地域を一つのウェブサイトで特集して掲載することは、被差別部落地域を不特定多数の人々に明らかにすることで、当該地域に居住する人々への偏見を植え付け、同時に、被差別部落に対する差別意識を新たに創り出し又は増長させる。すなわち、出自によって特徴づけられる特定の集団に対する悪質な差別煽動である」とのべ、「被差別部落に関連して特定地域を専ら晒す行為はいわゆるヘイトスピーチに他ならない。在特会などによる特定の民族に対するヘイトスピーチと構造は同じである」と主張した。

 いっぽう、Mは解放新聞の「主張」(2020年3月2日号)を証拠資料として提出した。解放新聞の「主張」では、Mらが「部落出身者などいない。誰も『えた・ひにん』の子孫であるという系譜を証明していない」と主張していることにたいして、「問題は、系譜が証明できるかどうかではない。『全国部落調査』が〝差別のための判断材料〟として使われるということである。被告らはこの根本的な問題をすり替え、歪曲し、故意に抹殺している。問題は、『全国部落調査』が差別の道具として使われるという単純な問題なのだ」と批判した。これにたいしてMは鬼の首でも取ったように、「原告解放同盟は(現在の部落出身者は)血統と無関係と認めている」として、解放新聞2020年3月2日号の「主張」を証拠として提出した。

 しかし、解放新聞の主張は、「現在の部落出身者は血統と無関係」といっているわけではない。もちろん現在部落に住んでいる人の大半は、江戸時代の「えた・ひにん」の子孫であることは間違いない。しかし、われわれが「主張」で強調したのは、差別する側の人間は、江戸時代まで系譜をたどって「えた・ひにん」の子孫であるかどうかを確認し、確認できれば差別するし、確認できなければ差別しない、などということをしているわけではないことだ。「全国部落調査」やリストを判断材料にして、そこに住んでいる人やそこにルーツを持つ人を部落出身者と見なして忌避し、差別しており、『全国部落調査』が〝差別のための判断材料〟として使われるということが問題だと主張したのである。Mらは、「ルーツが確認できない場合であっても」という文言に飛びつき、部落解放同盟は「現在の部落出身者は血統と無関係」と認めたといっているのだが、これはまったく問題のすり替えであり、文字通り揚げ足取り以外の何ものでもない。

 「全国部落調査」復刻版出版事件裁判は新型コロナウイルスの影響で中止になり、8月に予定されていた証人尋問もさらにずれ込むことになった。日程は連休明けでなければ決まらない(それもコロナ次第でさらに延長される恐れがある)が、4年にわたった裁判が大詰めを迎えていることは確かだ。中央本部では、証人尋問に向けて東西で決起集会を開催する予定を立てていたが、結果的にすべての日程は連休明けの協議にもちこされることになった。しかし、鳥取ループはその間も部落に潜入して「部落探訪」に写真・動画を掲載し、またインターネットに「全国部落調査」を晒し続けるにちがいない。差別を煽動し、拡散させる鳥取ループ・示現舎を徹底的に糾弾しよう。差別を煽動し、拡散させる鳥取ループ・示現舎を徹底的に糾弾する闘いとして、裁判闘争を支援しよう。

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