「解放新聞」(2020.05.25-2954)
【香川支局】 18歳未満のインターネットやゲームへの依存を防ぐことを目的とした全国初の香川県「ネット・ゲーム依存症対策条例」が3月定例県議会で賛成多数で可決・成立し、4月1日から施行された。
条例については県内外を問わず賛否の声があがり、パブリックコメントには2600人をこえる県民の意見が寄せられた。
とくに反対の意見はさまざまで、「行政による家庭への介入」、「子どもの権利を奪うもの」、「ギャンブル依存やアルコール依存より依存性は低い」など。
地方自治をはじめ法律に詳しい専門家は、「条例の検討委員会が非公開で議事録がないことや、パブリックコメントが公開できない理由が説明されないなかでの採決は、議会として極めて無責任な対応だ」と厳しく批判した。
反対の意見はエスカレートし、SNS上では、「香川土人」、「穢多土人県」などと、香川県・香川県民を一括りにして差別的憎悪煽動する書き込みが急増した(写真参照)。
さらには、条例可決の翌3月19日深夜、県のホームページの「ご意見・お問い合わせ」宛てに、5件の愉快犯の域をこえた卑劣な脅迫メールが届いた。それぞれ、①指定期日までに金銭を支払わなければ県議会の施設を爆破する②身代金を要求する③先般可決した条例の指定期日までの撤廃を要求し、従わなければ県議会議員の安全を保障しない④県議会議員を射殺する⑤身代金を支払わなければ、京都アニメーションの放火を模して焼殺する、という内容。
県議会は3月24日、香川県警本部に恐喝未遂、強要未遂、脅迫で被害届を提出するとともに、大山一郎・議長名で声明を発表した。
今回は「ネット・ゲーム依存症対策条例」に反対する書き込みだけでなく、差別書き込み、さらには爆破予告・殺害予告などの書き込みに加え、国内外で広がる新型コロナウイルス感染症に関して、中国人だけでなく国内感染者にたいする差別を煽動する書き込み、悪質なデマなどが拡散されている。
「全国部落調査」復刻版出版事件から4年が経過し裁判闘争が続いているが、鳥取ループ・示現舎の悪質な行為によってインターネットを通じて身元調査がいとも簡単におこなえる状況となっている。一方、在特会・日本第一党に影響され、くり返される在日コリアンをはじめ外国人にたいする差別書き込みでは、カウンターを中心に運営会社に通報し、アカウントを凍結させる運動も広がっている。しかし、ネット上の差別書き込みにたいして法的規制・処罰がないなかで、ネット上は差別が煽動、拡散される無法地帯となっているのが現状である。
これ以上放置させないためにも、インターネット上で個人や団体を差別する書き込みや誹謗中傷、脅迫、殺害予告、爆破予告などにたいする法整備、差別禁止法、人権侵害救済法の一日も早い制定が求められている。
なお、本条例案に反対するネット署名を1月、県議会に提出した県内の高校生が、条例は違憲だとして母親とともに県を提訴する準備をはじめている。
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