「解放新聞」(2020.07.25-2960)
【大阪】 東証一部上場企業であるフジ住宅株式会社と同社の今井光郎・会長にたいし、同社の在日コリアン3世女性のパート労働者が、会長名でのヘイトスピーチ文書配布、教科書採択運動への動員による精神的苦痛などを訴えて損害賠償を求めた裁判で7月2日午後、堺市・大阪地裁堺支部(中垣内健治・裁判長)で判決がいい渡された(本紙2959号既報)。判決は、会社と会長の違法行為を認め、両者にたいし、100万円の損害賠償と10万円の弁護士費用を連帯して支払うよう命じた。
判決のポイントは3点。会社と会長が①社内で全従業員に民族差別的な文書や差別を助長する文書を大量に継続的に配布し、閲読を余儀なくしたことを、原告のような韓国国籍、民族的出自をもつ労働者が差別的取り扱いを受ける恐れがないという内心の静穏にたいする介入だとして、社会的に許容できる限度を超え、違法、②大阪府内公立中学校の教科書採択にかかわって、全従業員に特定の教科書採択を働きかけるアンケート記入などに動員したことを、労働者の政治的思想・信条の自由を侵害し、社会的に許容できる範囲を超え、違法、③原告による提訴後、原告を非難する従業員の大量の感想文を全従業員に配布したことを、原告への報復とみなし、社内で原告を孤立化させ、原告が裁判を受ける権利を抑圧、自由な人間関係を形成する自由などを侵害し、違法、と判断した。
コロナ禍で期日は5月14日から延期。傍聴席数も制限されたため、ヘイトハラスメント裁判を支える会は傍聴支援をよびかけず、裁判所近くで夜おこなわれた報告集会もZoomでオンライン配信された。報告集会の冒頭、支える会共同代表の寺木伸明さんが、今回の判決は原告の喜びと幸せだけでなく、日本社会の外国人労働者の人格権や思想信条の自由の保障、労働条件・環境の改善につながることを確信する、とあいさつ。弁護団長の村田浩治・弁護士が、裁判所は原告の訴えを真摯に受け止めたとして、判決とその意義について詳細に解説した。
原告は「本当なら、みなさんと集えたのに。判決は私の気持ちに寄り添ってくれたのだと感じた。感謝している。問題は、判決をふまえて会社と会長がどう変われるか。ここまでしないと救ってくれない社会ではなく、もっと簡単に救ってくれる社会に変われるか。裁判自体は5年弱、助けを求めて7年。どうすればいいかわからず、黙って、ひたすら傷ついてた時間があった。日本のなかで、一緒に希望をかなえられると信じられた。もっとそう感じられる社会になってほしい。この成果をいかに広めていけるか。最後までやっていこうと思う」と語った。共同代表の竹信三恵子さんはじめ、支援者を代表して上杉聰さん、大阪府連副委員長の高橋定さん、李信恵さんらが喜びと連帯の言葉をのべた。控訴の意向を示した被告にたいし、原告と弁護団、支援者は闘い抜く意志を固めた。
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