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証人尋問で訴え 〜差別の助長・拡散許さず
復刻版裁判

「解放新聞」(2020.09.15-2965)

 「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の第1回証人尋問が8月31日午後、東京地裁でおこなわれた。片岡副委員長(同事件糾弾闘争本部事務局長、埼玉)と、松島幸洋さん(東京)が証人として出廷。それぞれ部落差別をめぐる体験を紹介し、復刻版の出版・インターネット掲載自体が部落差別の助長・拡散であり、部落解放運動や同和行政の成果の破壊であることを怒りを込めて証言した。

 主尋問では、弁護団の河村健夫・弁護士の質問に答える形で、最初に片岡副委員長が証言。片岡副委員長は、みずから体験した結婚差別の事例を紹介後、「部落地名総鑑」事件、プライム事件、住宅販売会社土地差別事件などをあげ、部落出身者への身元調査は続いていると強調。「全国部落調査」の被害事例として、復刻版のデータを印刷製本して販売したメルカリ販売事件や、同和地区問い合わせ事件をあげた。また、被告による差別拡散は、法務省の「インターネット上の部落差別の実態に係る調査」から明らかと証言。被告の行為は、戦後の同和教育や同和対策事業の成果を台無しにする、と指摘した。

 また、被告は東京法務局による「説示」と横浜地裁の仮処分決定を無視しており、国や裁判所への挑戦だと強調。「部落探訪」掲載は、いっさいの掲載を禁止するとした横浜地裁相模原支部決定への挑発だと批判した。どこが同和地区かという識別情報をインターネット上に流すこと自体、差別の助長・拡散であり、「一日も早く出版を禁止し、インターネットから削除を」と訴えた。

 反対尋問では被告Mが、原告の資格に関連し「埼玉県連には部落出身でない人は何人か」「出身者の基準は」「どこが部落か把握しているか」などと質問。本題との無関係さに傍聴席からも憤りの声があがった。

 松島さんは、家族の受けた結婚差別の実態と、進学後の東京で部落差別に直面して出身を明かした体験を説明、部落差別関連の多くの相談事例を紹介した。個人情報の開示範囲は本人が決めるべき、被告の行為で、いままで知らせていない範囲にまで出身が知られる不安がある、東京では多くの部落出身者が出自を隠して生きており、出身を暴く行為は人生を台無しにすることにつながる、と訴えた。

 多くの支援者が傍聴にかけつけたが、コロナ感染防止で人数は制限された。

証人尋問は全3回気を緩めず支援を

 第1回証人尋問後、報告集会を中央本部でひらき、56人が参加。弁護団の河村弁護士、指宿昭一・弁護士、中井雅人・弁護士、山本志都・弁護士が報告し、質疑応答して裁判の内容を共有した。証人として出廷した松島さんは「なんとしてもMたちの行為をやめさせ、損害賠償を履行させるよう、闘い抜き、勝利したい」と表明。片岡副委員長は「証人尋問はあと2回。しっかりとやり抜き、被告Mたちの行為が、差別の被害を生むのだと裁判長が認識できるようにしたい。気を緩めず支援を」とまとめた。

 連帯あいさつは、金尚均さん(龍谷大学法科大学院教授)と阿久澤麻理子さん(大阪市立大学人権問題研究センター・都市研究科教授)がおこなった。金さんは「人間の尊厳はこの裁判の大きな一つのテーマ。この裁判の勝利は、差別情報の削除やブロッキングの立法化に大きな一歩を示す」と強調。阿久澤さんは「インターネットの問題や、地名の暴露による差別の助長・誘発という問題が大事なのに、彼ら(被告)は、部落出身者とは誰かなど、彼らがいいたいことに広げる印象。差別は、する側がつくる。反差別法のある国では、差別された側に自分が(被差別の)当事者だという証明を求めることはない。それを求めることに違和感をもつ」と分析し、闘いの決意を語った。

 司会は髙橋中執が担い、安田中執の音頭で団結がんばろうをおこなった。

 

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