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解放保育・人権保育運動の前進と保護者の結集を

「解放新聞」(2020.10.05-2967)

 第42回全国人権保育研究集会を、2019年11月9、10日に広島県福山市で開催した。「部落差別をはじめとするあらゆる差別の現実から学び、人権保育を創造しよう」をテーマに、約1200人の参加があり、全体集会では、広島県解放保育連絡会の沖村暁美・委員長から「尾道の解放保育の起こりとねがい」と題した特別報告を受け、ホロコースト記念館の大塚信・館長から「子どもたちに伝えたい―アウシュビッツが問いかけるもの」と題した記念講演がおこなわれた。2日目は9分科会にわかれ、全国から19本の報告があり、熱心に討議され、熱いバトンが奈良に渡された。

 2021年1月30、31日に奈良市で第43回全国人権保育研究集会を開催する予定であったが、新型コロナウイルス感染症が全世界を襲った。7月8日に中央実行委員会をおこない、今年度中の開催を「延期」とした。さらに9月16日にも再度中央実行委員会をひらき、感染症の拡大状況を確認しながら、次年度の開催に向け、感染防止対策をはじめ集会のあり方や内容などの協議をすすめていくことを確認した。

 2月27日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、安倍首相(当時)は全国の小・中学校、高校、特別支援学校に一斉休校の要請、4月には「緊急事態宣言」を出した。こうしたなか、保育現場も対応に追われ、自治体や保育所(園)によっては「臨時休園」や「登園自粛」の措置をとった。一方「緊急事態宣言」解除後の6月から少しずつ通常保育が再開されるなか、コロナ禍での保育について、感染を恐れ、自主的に保育所(園)などを休ませる保護者もいたが、「仕事を休めないので預けたい」「休園にならないと仕事を休めず預けざるをえない」という声もあった。在宅勤務となった保護者からは「日中仕事ができず早朝や深夜に仕事をしている」「子どもを叱る頻度が増えた」「虐待してしまいそう」「子どもの生活リズムが乱れた」「動画やゲームばかりで心配」など、仕事と育児の両立に悩む声や今後の成長への影響を不安視する声も多くあげられている。収入面でも育児で業務量が減り影響の出ている人や、非正規雇用やひとり親家庭では生活苦に陥るケースが少なくない。

 政府はひとり親世帯への臨時特別給付金の支給を決めたが、その支給は1度となっており、独自の支援をおこなう自治体もあるが、対象が児童扶養手当の受給世帯とするケースも多く、減収となった家庭には対応しきれていない。政府の継続的な支援や児童扶養手当の制度の見直しなどが必要だ。困難な状況にある世帯を見逃さず、孤立させないためにも社会全体で子どもたちを守り育てる意識、地域と保護者のつながり、保護者集団の組織化がこれまで以上に求められる。

 感染症予防の観点から、登園児童を減らすことは第一だが、一方で保育を必要とする子どもの保育が保障されているのか、保障するためには何が必要なのか、状況に応じて地域や保育所(園)ごとに対応する必要がある。これまでの経験を共有し、自治体、保育現場、保護者がともに今後の保育実施の判断や対応を検討するとともに、職場での柔軟な対応も重要である。

 このようななか、ベビーシッターやオンライン保育のニーズが高まった。ベビーシッターに関しては、仲介サイトを介した登録シッターによる未就学児への性犯罪の疑いで逮捕者があいつぎ、サイト側が男性シッターの利用を一斉に停止するなど事後対応に批判が出ている。男性シッターを望む利用者もあるなか、男性シッターの働く機会や意欲を奪う理不尽な対応だ。この仲介サイトなどのように、登録した利用者とシッターが直接契約を結ぶマッチング型は、その利便性から人気を集め、幼児教育・保育の無償化の対象になるなど、政府も後押ししてきた。公費で利用を促進しているにもかかわらず、国や自治体の子どもの安全を守るしくみは十分とはいえず、課題は多い。オンライン保育は、保育士などが在宅中の子どもに向けて歌や読み聞かせ、ダンスなどをインターネット上でおこなうサービスで、保育所(園)や教育関連各社などが提供している。今後の不測の事態に備え、自治体としてオンライン保育の導入をすすめる動きも出ているが、経済的な事情で通信環境を整えられない家庭では利用できない。また、このサービスは幼児向けであるが、乳児は保護者が目を離せない面もあるなど課題も多い。

 3月の一斉休校のさい、保育現場では、厚生労働省から原則開所を求められ、施設内や職員の職場外での感染防止へのとりくみなど具体的な手立ては現場に丸投げされた。緊急事態宣言後、「臨時休園」や「登園自粛」の措置をとった保育所(園)でも、厚生労働省から「医療従事者や就業を継続することが必要な者、⋮〈中略〉⋮保育が必要な場合の対応について、検討いただきたい」との事務連絡があり、さまざまな\_c07652藤をかかえながらも奮闘するなか、医療従事者等の子どもの登園を拒む事例が指摘された。確かにこうした差別や偏見は許されるものではないが、多くの保育所(園)は国や自治体の指示があいまいななか、おのおので対策にとりくみながら登園を拒むことなく社会を支えている。一部の事例をとりあげ、多くの保育所(園)が同じ対応をしているかのようにうかがわせる政府広報など国の対応は、「人権への配慮を」といいながら「保育士への人権の配慮に欠けた内容だ」と多くの保育士を失望させた。

 また、外国人学校に付属する幼保施設が無償化の対象外とされているなか、コロナ禍で埼玉などで朝鮮初中級学校幼稚部がマスクの配布対象から排除されたことが発覚した。「いかなる差別もなしに、権利を尊重し確保する」という「子どもの権利条約」に違反する、あからさまな差別である。その後、配布されたが、施設には脅迫めいた電話やメールなど数かずのヘイトスピーチが浴びせられるといった差別が横行している。

 現在も続くコロナ禍で、近年すすめられてきた保育政策の問題点が浮き彫りになった。「子ども・子育て支援新制度」は、当初「質と量」を両輪で確保するとし、財源の確保と保育士の配置基準を改善するとしていた。しかし政府は、自治体が独自に手厚く設定している保育士配置基準などを緩和し、一人でも多くの子どもを受け入れるように要求した。保育現場の環境整備が不十分なまま施設増を急ぎ、保育士が足りず定員通りに子どもを受け入れられない事例や、企業主導型では審査の甘さから補助金詐欺や定員割れなどが社会問題化するなか、保育の質を確保できるとはいえない施設も対象とした「幼児教育・保育の無償化」に踏み切った。平常時を基準にぎりぎりまで面積基準や保育士の配置基準の規制緩和をすすめた結果、非常時に対応が困難な状況となり、その負担が保育士や保護者にのしかかった。日本の保育室の面積基準は各国中でも低いが、政府は「新しい生活様式」を提唱しており、3密を避けることが難しい保育現場では日び模索しながら保育している。保育の質を高め、子どもの命と安全を確保するためにも、面積基準や配置基準の規制緩和の抜本的な改善が急務だ。保育士の処遇改善も喫緊の課題だ。

 さらに待機児童・隠れ待機児童問題、無償化に関する問題、児童虐待や貧困問題、障害児保育や病児・病後児保育の充実など、すべての子どもたちが多様性のある質の高い保育を受け、生きる権利とその成長が保障されるために改善を要する課題は多い。家庭や地域、保育所(園)・幼稚園やこども園、学校、行政、企業が一体となり、すべての子どもの豊かな育ちを保障する保育政策の実現に向けたとりくみをすすめなければならない。さまざまな困難や格差の広がる社会のなかで生きる子どもたちや保護者と向き合い、解放保育・人権保育運動が創りあげてきた教訓や遺産を継承しつつ、新たな保育課題を視野に入れた解放保育・人権保育の創造にとりくもう。

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