「解放新聞」(2020.12.05-2973)
法務省交渉を10月28日午後、省内でおこない、西島書記長、村井中執をはじめ5人が参加。法務省は総務課長、調査救済課長、人権啓発課長、参事官など9人が出席した。「部落差別の実態に係る調査結果報告書」をふまえた部落問題解決に向けた施策、被差別実態の把握などで見解を聞き、意見交換した。
西島書記長は「実態調査の結果はしっかりと地方自治体に報告し、部落問題の解決に向けて連携も追求を。被差別の実態もつかむ努力を。ネット上には差別情報が蔓延し、SNSなどでさらに二次、三次と書き込まれ、差別が社会に広がっている。メスを入れ、有効な解決を」とよびかけた。
省は▽部落差別事案は減少傾向にはなく依然人権課題の重要な一類型▽関連する情報をインターネット上で閲覧した人の少なくとも一部は差別的な動機▽部落差別事案は全体として顕著な増減傾向はないが、ネット上の事案の割合は増加傾向。識別情報の摘示は不当な差別的とり扱いを助長・誘発する恐れが高く看過し得ない▽昨年9月にプロバイダー等に適正な運用を促し、今年「インターネット上の人権侵害情報に関する実務者検討会」等で調査結果を説明し情報共有・意見交換▽関係省庁と通信事業者等で情報共有・意見交換を密に、などとした。
同盟からは「ネット上の同和地区の所在地情報を使って差別身元調査されている蓋然性がきわめて高いと今回の調査でわかった。しかし被害が自覚しにくく、被害を訴えるところもない」「依命通知が出たが、現実には差別情報が氾濫し、被害が膨らむ。法改正まで実効性はあげられないというが、それまで放置するのか」「もう一歩すすんだ規制を」「差別情報が発見されたら、総務省と連携して、入り口で遮断できないか」などと訴えた。
省は「当面は総務省とも相談し、現在の法律でできるところを一所懸命ていねいに」「そもそも枠組みが強制力のないとりくみ。それではなくなっていないと承知している。強制力を持たせるとなると法改正かと思う」「実態調査でネット上の問題が顕著、それを利用した差別もあると明らか。調査結果をふまえ、任意のとりくみで消せない実態やデータを示し、法改正が必要と考える」「確信犯をなくすとなると、法令の根拠をもって強制力をうつしかない。そのために必要なこととして、まずは問題点が何か、きちっと示したい」などとした。
実態調査にかかわり「新たな差別を生まないために、人や地域を特定することを伴う調査は実施しないことが肝要」(調査結果報告書)の記述については、省は、対象地域が「旧同和地区」だと公共機関が特定したと見なされ、それがもとで新たな差別を生むことにもなりかねないという懸念、ただ、新たな差別が生じた具体的事例は承知していない、と回答。同盟からは「他の人権課題ではそれぞれ個別法ができ、当事者の思いや意見を聞いて施策に対応する方向。なぜ部落差別の問題だけそうしないか。そのことで「新たな差別を生む」は理解できない」と被差別体験の集約を訴え、「モデル的に地方公共団体と連携し実態把握を」「特定しなくても実態をつかむ方法はある」など提案。省は「まずは調査結果を地方公共団体と共有、意見交換等して課題を把握し、その結果をふまえ、つぎにどういう手を打てばいいかを検討したい」など答えた。
また、「旧同和地区」という表現について、同盟から、同和地区―被差別部落がもうないかのように誤って捉えられ、不適切、「推進法」をふまえて適切な言葉にし統一を、と提起。省は、ご指摘をふまえて考えたい、など回答した。
新型コロナ関係の差別では▽今年2〜10月初旬、全国の法務局、地方法務局で約1700回の人権相談、と報告。救済法については▽救済制度のあり方は、さまざまな意見をふまえ、幅広く検討が必要▽各種法をふまえた救済の運用を通じ、改善にとりくみつつ今後を見定める、とした。
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