「解放新聞」(2021.01.25-2978)
【北陸支局】 「推進法」制定から4年。各行政のとりくみ状況の確認と課題整理を目的に部落解放同盟が昨年11月26日に石川県の白山市、金沢市と、27日には富山県と行政交渉した。中央本部からは池田、髙橋、安田の各中執が参加した。
富山市・富山県民会館で27日午前におこなった第63回富山県交渉には、県側から武隈俊彦・生活環境文化部次長、村岡真由美・県民生活課長ら14人が出席。テーマは、①「富山県人権啓発・教育基本計画」改訂にさいし同盟が提出して退けられた―⑴検証する仕組みを、⑵検証の指標として数値目標を、⑶施策推進の組織整備と人材確保を―への見解、②人権意識調査(2018年11月実施)結果からの教訓・課題、③ネット上の差別情報への対応、④自治体窓口への被差別部落の問い合わせ問題、⑤人権教育・啓発施策の予算、⑥部落問題に関する啓発、職員・教職員研修の状況、⑦公正採用問題、⑧「推進法」制定を受けた施策の特徴・今後の課題など。
①では⑴⑵に村岡課長が「個別に策定している計画にもとづいて設定」、数値目標も考えていないと回答。⑶では「県では(知事部局に)2名配置」と従来の回答をくり返した。同盟は「とりくみの質・量の検討を」「庁内の同和問題連絡会議の開催回数、質を高めてほしい」「主幹部局の生涯学習・文化財室の分掌事務に〝人権〟の整備を」と提起した。
②では村岡課長が「ひき続き周知や啓発にとりくみたい」と回答。同盟は「内容が問われているのではないか」「県のHPはどの程度見られているのか」「県のHPに〝人権〟のサイトが見当たらない。表示してほしい」と指摘・要請した。
③で村岡課長は、前回交渉の2018年11月以降、県による削除要請の実績、削除要請の相談とも「ない」と回答。同盟は「前回、県側出席者の半数が「全国部落調査」を見たと答えたのに、何もしてこなかったのは理解できない」「前回交渉後の事務協議で削除要請をしたではないか」「相談がないのは、県民に認知されていないからでは」と指摘し、村岡課長は謝罪。法務省の依命通知を、村岡課長は「読んだ」と応じたが、県教委の参加者8人全員が無言。情報が知事部局から教委へ渡っていないことが明らかに。同盟は庁内や市町村の会議での周知を求め、県は周知を約束した。
④では村岡課長が「市町村人権担当者を通じて住民担当課に照会したが、部落問い合わせの事案はない。市町村人権担当者会議でも情報提供をよびかけた」と回答。「各市町村、出先をふくむ県の部署で把握する仕組み」「市町村や県の対応マニュアル」を問うと、武隈次長はマニュアル策定について「他県の状況をみて検討する」とした。
⑤では、県と市町村の20年度人権教育・啓発予算が示された。県予算は知事部局1471万8千円(前年比47万8千円の減)、教育委員会部局が331万5千円(前年と同額)、合計1863万2千円。市町村では従来から人権教育予算ゼロの自治体が多いと指摘。20年度も7市、4町、1村の12自治体で人権教育予算がない実情に、同盟は「地方交付税に人権教育促進事業費が算入されていることを示し、来年度に間に合うように」と提案・要請。
⑥啓発、職員・教職員研修の19年度実績と20年度計画一覧で、部落問題が「19年度職員研修に皆無、20年度は240人が受けただけで、教職員では両年度とも該当がない。量・質ともあまりに不十分」「全職員が1回の研修を受けるのに何年要するのか。研修計画が必要」と同盟が指摘。村岡課長は「他府県の状況を調べたい」と回答した。
⑦では、県教委が公正採用違反状況を説明。違反事業所は19年3月卒業、20年3月卒業とも12社で、面接時の家族構成や家族の職業の質問が依然として多い。
⑧「推進法」制定を受けた施策の特徴・今後の課題では、村岡課長が「法務省制作リーフレットを各種啓発活動に活用。ひき続き法の周知や啓発にとりくむ」と説明。同盟は「県内の具体的事例や県民意識調査結果などを示し、身近な問題として提起を」と求めた。
最後に同盟は、職員研修プロジェクトを要請した。
金沢市庁舎内会議室で11月26日午後おこなった交渉には、市側から相川一郎・副市長、高村政博・市民局長、石田真紀子・人権女性政策推進課長ら13人が出席した。テーマは①「推進法」制定後の施策の特徴・課題と条例制定、②人権意識調査、③ネット上の差別情報への対応とモニタリングの実施、④被差別部落の問い合わせ問題、⑤人権・同和行政関係予算、⑥部落問題にかかわる教育実践、教職員の人権意識調査、など。
①では石田課長が「12月の市広報(新聞広告)のメインテーマは感染症問題だが、同和問題もとりあげる。職員研修で同和問題やLGBTの問題などをテーマにDVD視聴をとり入れた」とし、課題に「効果的な啓発・研修の検討」をあげた。人権条例の制定では「全国のとりくみは承知しているが、まずは行政としての役割を実践」と前年度同様の回答。同盟は、市のリーダーシップ発揮を要請。
①では石田課長が「2021年度に実施予定」と回答。同盟は法務省調査との比較可能な設問や意識調査の専門家を入れた調査の検討を求めた。
③では石田課長が「法務局に課長名で文書要請」と説明。同盟は市長名での要請を求めた。モニタリングの実施では「他府県の状況を調べて検討する」と、前年同様の回答。同盟は「職員持ち回りで」「市だけでなく大学と連携して」などと提起、相川副市長は「もう少し検討させてほしい」と応じた。
④では石田課長が前年11月以降も把握していないとし、対応マニュアルは見直したと説明した。
⑤の20年度予算は市長部局が704万6千円(前年比20万円の減)、教育委員会部局が338万円(前年と同額)で、合計1042万6千円。市教委予算には20年度も各校に配布する部落問題学習のDVD教材費100万円をふくむ。
⑥では学校指導課長が、18年度から各校に配布している歴史教材DVDの19年度の活用状況を説明。教職員の人権意識調査に関しては学校職員課長が「今後、検討したい」と応じた。
最後に同盟は「部落差別の実態、ネット上の差別や国の意識調査結果などをふまえ、やりとりした内容を実行してほしい」と要請。後日の資料提供を求めたのは、改訂後の対応マニュアル、市教委が教員に提示した部落問題学習の指導案。
白山市民交流センター会議室で11月26日午後、前年に続きおこなった第2回交渉に、市側から井田正一・副市長、村田久美・市民生活部長ら6人が参加。テーマは、2017年5月の市内被差別部落問い合わせにかかわって①事実関係、②対応マニュアルの見直し、③部落問題に特化した研修、④連絡体制の不備克服などの市のとりくみ、⑤本人通知制度の導入など。
井田副市長は「何よりも継続したとりくみが大切」とあいさつ。①では村田部長が市の対応者への聞き取り調査結果を説明。「青年からの電話に文化財課長が対応」、問い合わせ理由は「結婚相手の女性の出身地が同和地区かどうか知りたい」。「(その町が)いつ頃できたのか支所に尋ね、新しくできた町なので青年には「同和地区ではないと思う」と返答」「その後、青年から電話はなく、納得されたと判断」。「文化財課長に人権問題の認識がなく、詳しいやりとりは把握できず」と説明した。
②では、職員に周知した対応マニュアルの内容が、問い合わせの理由を聞く内容になっておらず、同盟は、当面、担当の市民相談室での対応一本化を提案、再度見直しを求めた。
③では村田部長が、20年10月に課長級研修(25人)と職員研修(46人)、新任職員研修(15人)を報告。
④では、庁内組織として課長級25人で構成する人権同和行政部局連絡会を20年10月設置と報告。
⑤の本人通知制度について、村田部長は「検討を続けている」と回答。戸籍の不正取得を抑止することから、同盟は前向きの検討を求めた。
この日の交渉では、ネット上の差別情報や人権条例制定については議論できず、20年度内をめどに文書での回答を要請した。
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