「解放新聞」(2021.03.15-2984)
朝鮮衡平社は1923年4月に、慶尚南道晋州で創立された。
衡平社は、被差別民である旧「白丁」にたいする差別撤廃と身分解放を目的とした活動をすることで、すべての人が差別されることのない平等な社会の構築をめざした。「衡平社主旨」は、「公平は社会の根本であり、愛情は人類の本領である」との書き出しからはじまる。その後、衡平社は1935年に大同社と改称。
既刊の『朝鮮衡平運動史料集』(2016年)は、衡平運動を監視していた警察の報告文書を中心に編纂したものであったが、続編である本史料集は第一部を「衡平運動の諸相」、第二部を「「衡平青年前衛同盟事件」史料」として、400点以上の史料で衡平運動の実態を明らかにしている。
第一部では、⑴衡平運動の概況、⑵機関誌『正進』創刊号、⑶新聞記事にみる衡平運動、⑷朝鮮語雑誌にみる衡平運動、⑸日本で語られた衡平運動、⑹水平運動との交流、⑺「白丁」の生活と差別―の項目で、それぞれていねいな「解題」が書かれている。
植民地期朝鮮で衡平社がどのような運動をしてきたのかを、ここに収録された新聞記事や雑誌などにより知ることができる。また、衡平社と水平社の交流についても記されている。さらに、衡平運動の歴史的意義を考えるうえで不可欠な「白丁」の歴史や生活状況、また衡平運動や旧「白丁」にたいする植民地権力の認識を示す史料も収録している。
第二部では、「衡平青年前衛同盟」という団体を結成したとして、1933年に100人以上の衡平社員が大量検挙された「衡平青年前衛同盟事件」の裁判関係史料を収録している。この事件は、衡平運動の活動家たちを弾圧するために仕組まれ、事件そのものが権力によって捏造されたものである。これらの史料は現在、韓国の国家記録院と国史編纂委員会が保管している。
収録された光州警察署による38人の「被疑者尋問調書」は、貴重なものである。この「調書」により活動家の年齢・職業・生活状況・交際人物などを知ることが可能となった。この「調書」から衡平運動と水平運動との具体的な交流の姿も見えてきた。
本史料集は、植民地期朝鮮で衡平運動が、どのような困難な状況でとりくまれたかを示している。朝鮮では1945年以後、衡平運動として再出発はしていない。しかし、衡平運動を担った人びとが、1950年代後半にも交流を続けていたことが明らかにされてきている。
韓国では旧「白丁」にたいする認識はどのように変化してきたのであろうか。これから明らかにしていきたい課題の一つである。
本史料集は、日本と韓国の研究者による共同研究の成果である。2年後の2023年は衡平社創立100年にあたる。2冊の史料集は、衡平運動の全体像やその歴史的意義を解明するうえで欠かすことができない基礎文献といえる。
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