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主張

 

国内外の女性たちと連帯を強め、男女平等を実現しよう

「解放新聞」(2021.03.15-2984)

 2015年9月、国連サミットでMDGs(ミレニアム開発目標)に代わる新たな世界目標としてSDGs(持続可能な開発目標)が採択された。その目標に「ジェンダー平等を実現しよう」とあるが、日本で男女平等のとりくみはすすんでいるとはいえない。

 「世界経済フォーラム」が毎年おこなっているジェンダー・ギャップ指数のランキング(19年12月発表)で、日本は153か国中121位と低順位が続いている。国会議員や企業での管理職に占める女性の割合が諸外国と比べると低く、また、働きたくても働けない女性が多くいるのが実態だ。16年4月に当時の安倍政権のもとで施行された「女性活躍推進法」で目標とされた「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%」は達成されず、10年間先送りの「2030年代に指導的地位に占める割合をめざす」となった。

 近年、男性と同じように働き、結婚後も子育てと両立させながら働く女性が増え、子どもができても継続して働きたいと望む女性も増えている。今日、日本の人口は年ごとに減少している。これは、女性の社会進出がすすみ、晩婚化、晩産化の傾向が強まってきたからだといわれているが、女性の社会進出がすすんで人口が減少するのは、子どもを生み育てても働きやすい社会になっていないことが大きな原因だ。男女格差を解消するための政策が積極的にとられているスウェーデンやデンマークなどの北欧諸国では、出生率が向上していることも報告されている。

 男女がともに働き続け、仕事と生活の両立が可能な社会の実現をめざすためには、労働時間の短縮、同一労働・同一賃金を実現させ、男性にも取得しやすい育児・介護休業など各種休業制度の充実、待機児童の解消などが必要だ。そして、それを支える制度やシステムの構築をすすめ、なによりも社会全体の意識変革をすすめていくことが重要だ。

 2月3日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗・会長の女性差別発言が報道され、翌日、森会長は謝罪した。後日、ほかの評議員も森会長の女性差別発言をとがめることもなく笑っていたと報道され、世界的にも批判を受け森会長は辞任し、ほかの評議員もふくめ組織委員会の人権意識の低さが露呈した。

 さらに、07年の柳澤伯夫・厚生労働大臣の「女性は産む機械」発言をはじめ、麻生太郎・副総理(現財務大臣)、杉田水脈・衆議院議員、ほかにも政治家や官僚が女性や性的少数者への差別発言をたびたびおこなっている。背景には「性別役割分業」意識が根強くあり、ジェンダー平等にとりくむことが求められる。

 女性にたいする差別意識や、日常生活・メディアのなかに存在するジェンダーなどに気づき、身近なことから制度や慣習について見直すことができるような「ジェンダーにとらわれない意識」を積極的に形成していくことが重要だ。セクシャルハラスメントやパワーハラスメントなどについても、専門性のある相談員の配置など、しっかりとした相談窓口の設置をふくめた実効ある対策を求めていかなければならない。

 組織内でも「男女平等社会実現基本方針」(第2次改訂)にあるように、女性が力を発揮できる組織運営、運動になっているのか、女性への差別待遇、イエ意識や男尊女卑的な考え方が組織のなかにあらわれていないかを再点検する必要がある。また、女性が意思決定機関に参画できるように、ポジティブアクション(積極的差別是正措置)を組織運営にとり入れることや、女性差別を撤廃するためには、意識変革と同時に、マイノリティの声を反映するための組織のシステムを確立していくことが不可欠だ。さらに、さまざまな機関の定数などが一方の性に偏らないようにする機関運営をとり入れることも重要だ。

 今後も男女平等社会実現に向けた学習会をおこない、女性部が中心になり、都府県連・地区協議会・支部で具体的なとりくみをすすめ、女性部としての人材育成を中心に組織強化に結びつけていこう。

 昨年8月、内閣府の「第5次男女共同参画基本計画」策定にあたっての意見募集に各都府県連でとりくみ、12月に「第5次男女共同参画基本計画」が閣議決定された。閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」第6分野の「基本認識」「施策の基本的方向」「具体的な取組」に関して、これまでは「……アイヌの人々であること、同和問題に等に加え……」という文言だったが「……アイヌの人々であること、同和問題(部落差別)に関すること等を理由とした……」と変更された。私たちが提案した「部落差別を受けた当事者を」という文言ではなかったが、とりくみの成果として「部落差別」が明記されたことは大きな前進だ。

 しかし、国連女性差別撤廃委員会が指摘しているマイノリティ女性の意思決定の場への参画等についてはふれられていない。私たちはこれまで同様、男女共同参画審議会委員の一般公募があれば積極的に応募し、委員会のなかで部落女性をはじめ、マイノリティ女性の声を反映させよう。さらに、三者(アイヌ女性、在日コリアン女性、部落女性)でおこなってきたアンケート調査結果や、国連女性差別撤廃委員会から日本政府に出された勧告をふまえた関係省庁との交渉をおこない、マイノリティ女性にたいする施策の充実と政府による実態調査を協働で要求するなど、ねばり強く働きかけていかなければならない。また、部落差別撤廃の闘いとともに、女性差別、障害者差別、性的少数者(LGBTQ)差別、複合差別にもしっかりと視点を置いた協働のとりくみをすすめよう。

 この間、新型コロナウイルス感染症が長期化し、誤った情報や誤解・偏見から医療従事者や家族、感染者にたいする差別が拡大している。感染症の拡大が収束しないなかで、人権状況がいっそう後退している今日、差別煽動や偏見による暴力事件を許すことなく、あらゆる差別の撤廃に向けて積極的にとりくむ必要がある。また、沖縄・辺野古の米軍基地問題は、日本社会の差別構造の問題であることをしっかりと捉え、女性部も反戦・平和の運動を積極的にすすめよう。

 昨年1月から新型コロナウイルス感染症が拡大し、私たちの生活は一変した。さまざまな制約や制限で、昨年熊本県で開催予定だった第65回全国女性集会を急きょ中止した。

 今年5月に東京で開催予定だった全国女性集会について、昨年10月に中央女性運動部会議をおこない、コロナ禍のなか、どのような方法で開催できるのか、集会運営方法等をいろいろ模索し議論したが、新型コロナウイルス感染症の勢いは収まらず、収束がみえないなか、今年も中止せざるを得なくなった。

 今後は、来年開催予定の全国女性集会(熊本)に向け、集会運営方法や集会のあり方等もふくめて再度、中央女性運動部会議で議論し、全国部長会議で提案し協議していくことを確認している。女性をとりまく情況は大きく変化している。部落解放運動だけではなく、さまざまな差別と闘う国内外の女性たちとの連帯をさらに強化し、人権と平和の確立、いのちと生活を守る協働のとりくみを地域ですすめよう。

 さらに、今日のコロナ禍で、人権状況は大きく後退し、不安・不満が安易に差別排外主義につながっている。とくに、感染症の拡大で、パートやアルバイトなど不安定な雇用状況にある女性の自殺者が急増している。また、在宅勤務の増加によるDV(配偶者や恋人による暴力)の摘発件数も昨年を上回っている。中高生の自殺者増もふくめ、子どもや女性など社会的弱者への十分な感染対策を求めることも必要である。

 こうした情勢をふまえ、女性部が先頭に立って国内外の女性たちと連帯し、あらゆる差別を許さず、ジェンダーで役割を強制されたり、生き方を制限されたりすることのない社会の実現に向け、闘いをすすめよう。

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