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部落解放に向けた理論の深化をすすめ、第54回福岡全研を成功させよう

「解放新聞」(2021.10.25-3006)

 10月4日、岸田内閣が発足、14日に衆議院を解散した。総裁選から「所得倍増」「金融所得課税の見直し」「新自由主義的政策からの転換」などと掲げてきた目玉政策は、所信表明演説、衆院選の公約へと言及しなくなった政策も少なくない。そして、強調しはじめた「成長と分配の好循環」は安倍政権がくり返していたフレーズであり、これまで安倍・菅政権が約9年間にわたり格差と貧困を拡大させたアベノミクスの継承でしかない。

 また、「被爆地広島出身の総理大臣として、めざすのは「核兵器のない世界」です」と語った岸田首相だが、つづけて「核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、唯一の戦争被爆国としての責務を果たします」と歴代首相と同じ見解をのべ、本年1月に発効した「核兵器禁止条約」にはふれなかった。核兵器の製造や保有、使用などを全面的に禁止するこの条約に、核保有国が参加していないことを理由に署名・批准には慎重な姿勢をみせている。唯一の戦争被爆国として、日本の果たす役割は大きい。「人の話をしっかり聞くこと」が特技という岸田首相は、被爆者をはじめ「核兵器禁止条約」の発効に尽力してきた人びとの声をどう捉えているのだろうか。

 さらに岸田政権は、原発再稼働推進、軍事費の大幅増額、憲法改悪などといった方針を示している。いのちや生活の安心・安全を守り、反戦・平和に向けた私たちのとりくみはますます重要になっている。

 世界的に新型コロナウイルス感染症が流行するなか、この間の国の対策・政策の影響で、格差と貧困がいっそう深刻化したことなどを背景に、感染者やその家族、医療関係者などへの差別や誹謗中傷があいつぐなど、人権をめぐる情況はますます悪化している。こうした差別を許さず、人権確立社会の実現に向けてとりくみを強化していかなければならない。

 部落問題をはじめ、さまざまな人権問題にかかわる研究や実践活動をとおしての活動や交流をすすめてきた部落解放研究全国集会は、これまで成果を積み上げてきた。部落解放研究第54回全国集会は、昨年11月に福岡県北九州市での開催を予定していたが、感染症の拡大状況をふまえ、延期とした。本年も開催に向け、準備をすすめてきたが、いまだ収束にいたっていない状況をふまえ、録画配信での開催とすることになった。これまで企画してきた集会内容から、今日の社会的、政治的情況のなかで、部落解放・人権政策の確立に向けたとりくみをすすめるための課題を厳選し、講演・報告を企画した。

 約2年の間、感染症の世界的流行によって、さまざまな人権侵害が多発している状況から、全体集会の記念講演は、「新型コロナウイルス問題と人権」をテーマに奥田均・近畿大学名誉教授に講演していただく。特別報告では、全国で初めて部落差別を助長する動画の削除を命じる仮処分が決定した兵庫県からは、インターネット上の差別情報にたいするとりくみ、さらには、本年9月27日に判決が出た「全国部落調査」復刻版出版事件裁判闘争のとりくみ、日本における刑事法学の第一人者でもある内田博文・九州大学名誉教授から、「九州におけるえん罪事件の取り組みと再審法改正に向けた課題」の報告を配信する。

 また、近年、見たり聞いたりすることが増えた「エシカル(倫理的な)」「サステナブル(持続可能な)」といった言葉のきっかけとなった、未来に向けたとりくみとして、2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)。認知度が上がってきているが、SDGs後進国といわれる日本において、2018年にアジア地域で初めてOECD(経済協力開発機構)からモデル都市に選ばれた北九州市によるSDGsの活動についての報告も企画している。

 開催が初の配信形式となる第54回福岡全研で、さまざまな実践交流や議論を深めることは難しいが、これまでさまざまな事情で参加が難しかった人に参加を促し、一人でも多くの人が部落問題をはじめさまざまな差別問題・人権問題の解決に向けたとりくみを学び、行動のきっかけを得る集会となることも期待している。人権と平和、民主主義、環境の確立という課題が後退しているいま、「コロナ禍で深刻化する差別・貧困・格差を克服し、人権と平和、民主主義、環境の確立をめざす協働の取り組みをすすめ、部落解放運動を大きく前進させよう」をテーマに開催する第54回福岡全研を成功させ、部落解放・人権政策確立のとりくみを前進させよう。

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