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男女平等社会実現に向けたとりくみを強化しよう

「解放新聞」(2021.11.25-3009)

 「男女平等社会実現基本方針」(第2次改訂)は第73回全国大会(2016年)において決定され、今年で5年目を迎える。「基本方針」(第2次改訂)は、原則として10年ごとの見直しとともに、中間年においては検証をおこなうこととしており、本年はその中間年にあたる。

 検証にあたっては、男女平等社会推進本部での論議をふまえ、7月に都府県連にアンケート調査を実施した。調査項目は23項目で、女性部の結成状況、全国大会での女性代議員の3割達成状況、中央委員や都府県連の役員構成における女性の割合、女性差別、DV、性的マイノリティ、セクシャルハラスメント等をテーマとした学習会の開催状況、人材育成のとりくみ、都府県・市区町村交渉の基本要求での、女性にかかわる課題の項目、都府県および市区町村の「男女共同参画審議会」委員の任命状況、都府県連での男女平等社会推進本部の設置状況、さまざまな被害を受けた人が安心して相談できる相談窓口の設置状況と窓口担当者について、「基本方針」(第2次改訂)を使った学習会の開催状況などである。

 現在、アンケートを集計し、検証作業をすすめている。

 「基本方針」(第2次改訂)を決定して以降、2016年12月には、第1回アンケート調査(12項目)を実施し、31都府県連から回答を得た。都府県連での女性部の結成状況や男女平等社会推進本部の設置状況、「基本方針」(第2次改訂)の学習状況、都府県・市区町村での男女共同参画審議会委員の応募形態などの把握をおこなった。

 2017年6月には、第74期「第1回男女平等社会実現をめざす学習会」を開催し、推進本部が設置されている東京・京都・奈良・和歌山・大阪・広島からの報告を受けた。また、その後グループ討議をおこない、相談窓口のあり方や、男性の参加率を高めていく必要があるなどの課題を確認した。

 2018年に開催した全国ブロック別中央解放学校では、「部落差別解消推進法」の具体化の課題、狭山第3次再審の現状と展望、男女平等社会実現に向けた「基本方針」(第2次改訂)の内容とともに、セクシャルハラスメント・パワーハラスメントについての学習をおこなった。さらに、2019年には拡大中央委員会の前段に、「男女平等社会の実現にむけて〜これまでのとりくみ〜」の学習と、広島県連における「男女平等社会実現に向けたとりくみ」の報告がおこなわれた。広島県連では、2016年に県連推進本部を結成、「男女平等社会は組織内から」を強調し、県連役員126人を対象に「家事分担実態調査」をおこない、調査を通じて男女平等実現に向け、わずかではあるが意識づけができたことが成果であったとの報告があった。

 2020年12月に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」の第6分野「基本認識」「施策の基本的方向」に関して、これまでは「アイヌの人々であること、同和問題等に加え」という文言であったが「アイヌの人々であること、同和問題(部落差別)に関すること等を理由とした」と変更された。私たちが意見募集(パブリックコメント)した「部落差別を受けた当事者を」という文言ではなかったが、とりくみの成果として「部落差別」が明記されたことは大きな前進である。

 地方自治体においても、男女共同参画審議会委員に部落女性が任命されたことにより、「男女共同参画基本計画」や推進プランに部落女性の課題が入るようになってきている。

 「女性差別撤廃条約」批准(1985年)以後、国は、男女平等に向けたとりくみとして「雇用機会均等法」、「男女共同参画基本法」を制定するなど、法整備をすすめている。しかし、女性差別の実態は、一向に改善されていない。2021年3月に発表された世界経済フォーラムによる男女格差は、156の国・地域別ランキングで日本は120位、政治の分野では147位である。先般おこなわれた衆議院選挙においても、立候補者1051人中女性候補者は186人(17・7%)、当選者は465人中45人(9・7%)である。「第5次男女共同参画基本計画」では2025年までに、国会議員の候補者に占める女性の割合を35%としており、達成までには程遠い現状である。

 女性差別についても、指導的立場にある人のセクシャルハラスメントがあいついで明らかになっている。麻生財務大臣(副総理)、森喜朗・元東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長、河村たかし・名古屋市長らの発言をはじめ、医学系大学での女性差別、男女の賃金格差などあげればきりがない。女性たちが声を上げることのしんどさのなかでMe Too(私も)運動が拡がり、女性差別が表面化してきたのである。

 これまで男女平等社会実現に向けてさまざまな活動をすすめてきたが、今後もさらにとりくみを強化していかなくてはならない。

 部落解放同盟の基礎組織は支部であり、全国大会は最高決議機関である。全国大会への女性代議員出席の3割目標を達成できていない県連もあり、達成するためにはどのような支援が必要なのか、当該県連と解決策を見いだしていくことが必要である。また、女性が意思決定機関に参画できるように、ポジティブアクション(積極的差別是正措置)を組織のなかにとり入れていかなくてはならない。支部(地域)を基本組織とする部落解放同盟にとって困難な課題は、「性別役割分業」意識である。いまだに根強くある「家事・育児・介護は女性の仕事」、3歳までの子育ては母親の仕事という「3歳児神話」などが、女性にも男性にも当たり前のように存在している。何が「女性差別」なのかを見抜く力を育むことや、男女とも意識変革していくためのとりくみをどのようにおこなっていくのかなど課題は山積している。

 また、性自認や性的指向についても、まだまだとりくみが不十分である。パートナーシップ条例の制定やパートナーシップ制度を導入している自治体も増加しており、まずは学習会などを積み上げていく必要がある。

 いっさいの差別が撤廃され人権が確立された社会をめざす部落解放同盟にとって、男女平等の組織づくりは避けてとおれない喫緊の課題である。男女平等社会実現のとりくみの重要性を中央執行部、都府県連役員が先頭に立ってしっかりと認識し、組織全体の課題として、差別のない組織づくりに向けて、さらなるとりくみをすすめていこう。

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