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組織の拡大と人材育成をすすめ、女性部運動の前進をかちとろう

「解放新聞」(2021.12.15-3011)

 日本における「女性の社会進出」は先進国と比べると、まだまだ遅れているのが現状だ。世界の女性の社会進出の状況を示す「世界ジェンダー・ギャップ報告書」(ジェンダー・ギャップ指数〈GGI〉)によると、2021年のジェンダー・ギャップ指数の上位国は、アイスランド、フィンランド、ノルウェーと北欧諸国が上位を占めている。上位国では、国をあげて男女格差を解消するための政策がすすめられ、LGBTQ(性的少数者)にたいするとりくみもおこなわれている。日本のように、扶養控除などの税制や社会保険制度を気にして労働をひかえたりする必要はない。また、前回33位だったリトアニアが上位に躍進した。その背景には、女性大臣の比率が0%から42・9%になり、議会での女性の進出とともに、働く女性の割合が増加したことがある。

 日本のジェンダー・ギャップ指数は、156か国中120位で、とくに政治の分野での評価が低い。10月の衆議院総選挙の結果は、立候補した女性465人中当選したのが45人で全体の9・7%と1割にも満たない状況となっており、11月10日に発足した第2次岸田内閣でも入閣した女性は3人だけである。「女性活躍推進法」で「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%」という目標は達成できず、10年間先送りの「2030年代に指導的地位に占める割合をめざす」となったが、実現できるのだろうか。

 近年、結婚後も子育てと両立させながら働く女性が増えるとともに、子どもをもっても継続して働きたいと望む女性も増えている。男女がともに働き続け、仕事と生活の両立が可能な社会の実現をめざすためには、労働時間の短縮をはじめ、同一労働同一賃金を実現させ、男性にも取得しやすい育児・介護休業など各種休業制度の充実、待機児童の解消などが必要だ。そして、それを支える法制度やシステムの構築をすすめ、なによりも社会全体の意識変革をすすめていくことが重要である。

 現在、日本の人口は年ごとに減少し、少子化がすすんでいる。女性の社会進出が原因で少子化がすすむとされているが、先進国では、女性の社会進出の比率が増加すると、出生率も向上している。そのためには、男性の家庭進出が重要であり、男女格差を解消するための政策が必要なのは当然である。

 これまで、政治家や官僚が、女性や性的少数者にたいして差別発言をたびたびおこなっている。このような背景には、いまだに「家事をはじめ、子育て・介護は女性がするもの」といった「性別役割分業」は当たり前といった意識が根強く残っている。こうした意識が、女性の社会進出の道を閉ざす結果となっているのである。

 男女平等の意識をつくるには、なにがジェンダー(社会的文化的な性的役割・分業の固定化)なのかということに気づくことが大切である。女性にたいする差別意識や日常生活、メディアのなかに存在するジェンダーなどに気づき、身近なことから制度や慣習について見直すことができるような「ジェンダーにとらわれない意識」を積極的に形成していくことが重要である。また、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントなどについても、しっかりとした相談窓口の設置など実効ある対策を求めていかなければならない。

 組織内においても「男女平等社会実現基本方針」(第2次改訂)にあるように、女性が力を発揮できる組織運営、運動になっているのか、女性への差別待遇、イエ意識や男尊女卑的な考え方が組織のなかにあらわれていないかを再点検する必要がある。また、女性が意思決定機関に参画できるように、ポジティブアクション(積極的差別是正措置)を組織運営にとり入れていくことが求められている。そのためにも意識変革と同時に、マイノリティの声を反映するための組織のシステムを確立していくことが不可欠である。そして、さまざまな機関の定数などが一方の性に偏らないようにクォータ(割当)制を機関運営にとり入れることも重要である。

 この間、アイヌ女性や在日コリアン女性、部落女性の3者で、国連女性差別撤廃委員会から日本政府に出された勧告をふまえた関係省庁との交渉をおこなってきた。今後も、マイノリティ女性にたいする施策の充実と政府による実態調査を協働で要求するなど、ねばり強く働きかけをしていかなければならない。

 2020年12月に「第5次男女共同参画基本計画」が閣議決定され、第6分野の「基本認識」「施策の基本的方向」「具体的な取組」に関して、これまでの「同和問題等に加え」から「同和問題(部落差別に関すること等を理由とした)」と変更され、「部落差別」が明記されたことは大きな前進である。しかし、国連女性差別撤廃委員会が指摘しているマイノリティ女性の意思決定の場への参画等についてはふれられていない。私たちはこれまで同様、男女共同参画審議会委員の一般公募があれば積極的に応募し、委員会のなかで部落女性をはじめ、マイノリティ女性の声を反映させていこう。

 また「旧優生保護法」による強制不妊手術の問題をはじめ、ハンセン病家族訴訟でも、これまでの国の差別政策の誤りを明確にしていくために支援を強めていこう。今後も部落差別撤廃の闘いとともに、女性差別、障害者差別、性的少数者差別や、複合差別にもしっかりと視点を置いた協働のとりくみをすすめよう。

 新型コロナウイルス感染症が長期化し、誤った情報や偏見により医療従事者やその家族、感染者にたいする差別が拡大し、人権状況がいっそう後退している。差別煽動や偏見による暴力事件を許すことなく、あらゆる差別の撤廃に向けて積極的にとりくむ必要がある。沖縄・辺野古の米軍基地問題も、日本社会における差別構造の問題であることをしっかりと捉え、女性部としても反戦・平和の運動を積極的にすすめていこう。

 新型コロナウイルス感染症拡大によって、部落解放全国女性集会を、昨年は中止した。これまで、中央女性運動部会議では、コロナ禍で開催できる方法はないのか議論してきたが、分科会のなかでおこなう各都府県連の活動報告や実践交流が難しいこともあり、やむなく中止せざるを得なかった。来年も感染状況をふまえての判断となるが、第65回全国女性集会を5月14、15日、熊本市内で開催する予定だ。分科会は、部落解放・人権政策の確立に向けたとりくみ、とくに「部落差別解消推進法」を具体化する闘いや、狭山再審闘争をはじめ、識字活動の課題、鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争、教育・保育運動の課題、複合差別の視点をふくめた男女平等社会の実現、自立自闘に向けた闘い、人材育成と女性部組織の拡大、「人権と福祉のまちづくり」運動の推進など、7つのテーマにわかれて運営する。各分科会では、女性部の活動の実践交流と論議を深め、活発な意見を出し合おう。

 女性をとりまく情況は大きく変化している。第65回全国女性集会での実践交流や討議の成果を活かし、部落解放運動だけではなく、さまざまな差別と闘う国内外の女性たちと反差別・反貧困のネットワークをつくることが求められている。すべての女性たちとの連帯をさらに強化し、人権と平和の確立、いのちと生活を守る協働のとりくみを地域ですすめよう。

 来年は全国水平社創立100周年という大きな節目の年である。女性部が先頭に立って、憲法改悪に断固反対し、差別と戦争に反対する闘いを強化しよう。女性差別を許さず、ジェンダーによって役割を強制されたり、生き方を制限されたりすることのない男女平等社会の実現に向けて、部落女性の力を総結集し、第65回全国女性集会を成功させよう。

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