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NEWS & 主張

主張

 

統一と団結を固め、部落解放に向けた新たな展望を切り拓く
組織と運動の強化を

「解放新聞」(2022.01.15-3014)

 新型コロナウイルス感染症は、新たな変異株である「オミクロン株」が世界的に拡がっている。昨年末には、国内の感染者数が減少し、収束しつつあるような報道もあり、年末年始の人出も多くなっていた。しかし、昨年11月に初めて確認された「オミクロン株」は、感染力が非常に強力であり、アフリカ諸国や欧州、米国など、世界的規模で感染が急速に拡がっている。

 日本でも年明けから感染拡大がすすみ、政府は1月7日に、9日から31日まで沖縄・山口・広島の3県に「まん延防止等重点措置」を適用することを決定した。沖縄と山口には米軍基地があり、その周辺で感染者数が急増していた。また、広島と山口の両県は隣接しており、米軍基地から感染が拡大したことは明らかである。政府は、米国に厳重な感染防止策の強化を要請しているが、米国任せであり、米軍基地関係者は出入国が自由のままで実効性のある措置がとられていない。

 政府は昨年12月24日に、22年度政府予算案と「税制改正大綱」を閣議決定した。予算案の一般会計総額は約107兆5964億円と当初予算としては過去最大となった。当初予算の100兆円超は4年連続となり、過去最大を更新するのは10年連続となっている。
 しかし、第6波ともいわれる感染症拡大がすすむなかで、対策費は予備費の5兆円のみであり、社会保障費の自然増も概算要求時から2200億円も圧縮している。しかも、感染症拡大のなかで経営危機に直面している医療・介護施設への減収補填、中小企業者への事業支援などは計上されていない。

 また、感染症拡大で明らかになった保健所の拡充と機能強化、検査態勢の充実などの必要な施策がまったく盛り込まれていないばかりか、病床削減や病院の統廃合を推進するとしている。さらに、10月から75歳以上の医療費窓口負担を現行の原則1割負担を2割負担とするなど、いのちとくらしを守るというもっとも重要な政治課題にとりくむ姿勢がまったくみられない。

 昨年10月に発足した岸田政権は、その直後に衆議院を解散、総選挙をおこなった。自民党は、議席を減らしたものの、最終的には絶対安定多数となる262議席を獲得した。また、日本維新の会が大幅に議席を回復させ、衆議院での改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2以上の議席となるなど、厳しい結果となった。

 岸田政権は衆議院総選挙にあたって、「新自由主義からの転換」として「新しい資本主義」「成長と分配」を強調していた。しかし、12月6日に開会した臨時国会での所信表明演説では、感染症が収束せず、新たな変異株が発見されているにもかかわらず、経済成長を優先する姿勢が明確になった。

 また、22年度予算での軍事費は10年連続の増額となり、8年連続で過去最大を更新した。昨年12月に成立した補正予算との合計額では、歴代政権が軍事費のおおよその上限としてきた国内総生産(GDP)比1%を超える6兆1744億円となっている。まさに軍事大国化をめざし、米国への一方的な追従をよりいっそう深めながら、その軍事力を背景にして北東アジアでの覇権を画策している。

 とくに岸田政権は、憲法違反の「敵基地攻撃能力」の保持を明言している。7日に開催された日米外交・軍事担当閣僚による安全保障協議会(2プラス2)での共同発表文書では「ミサイルの脅威に対抗するための能力を含め、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する」ことを明らかにしている。

 また、「台湾有事」などを想定して、日米で「緊急事態に関する共同計画作業についての確固とした進展」を明記するなど、中国や北朝鮮への敵視政策を強めている。さらに沖縄県名護市辺野古での新基地建設でも、建設反対の民意をまったく無視し、「普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策」と強調している。

 このような厳しい社会的政治的情況のなかで、部落解放運動の当面する重要な課題は、憲法改悪に反対するとりくみである。岸田政権は、「戦争をする国」づくりを推進するために、安倍政権や菅政権以上に憲法改悪への策動を強めている。

 われわれは、全国水平社が天皇制ファシズムによる弾圧によって、戦争協力を余儀なくされた痛苦の歴史と真剣に向き合い、差別と戦争を反対する闘いを全力ですすめていかなければならない。とくに「戦争法」廃止などを求める広範な協働したとりくみを前進させるとともに、人権と平和、民主主義や環境の確立に向けた政治勢力の総結集をめざして奮闘しよう。

 本年7月には、参議院選挙が実施されるが、比例代表候補の推薦については、すでに中央委員会で決定している。衆議院総選挙での厳しい結果をふまえ、推薦候補の必勝に向けて、都府県連段階での選挙闘争本部体制の確立、参議院選挙区候補の推薦決定を早急にすすめてもらいたい。

 今日、感染症の世界的流行で明らかになったのは、新自由主義政策が生み出した貧困と格差、差別の深刻化である。日本社会でも同様に、貧困や格差が拡大、固定化しており、非正規労働者の解雇、ひとり親家庭の貧困、女性の自死の増加などが社会問題化してきた。さらに、こうした閉塞感による社会不安や孤立感、不満を背景に、インターネット上での差別情報の氾濫、差別や暴力を公然と煽動するヘイトスピーチなど、社会的弱者にたいする差別排外主義が拡大している。

 鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争でも、東京地裁判決の積極面を活かしながら、控訴審段階での闘いでは、差別居直りを許さない勝利判決をかちとるために全力で闘いをすすめなければならない。さらに、今日的には部落差別をはじめとして人権侵害救済のための法的な仕組みが存在しないことが大きな問題であることを強く訴えていこう。

 われわれは、これまで条例制定のとりくみなど「部落差別解消推進法」具体化とともに、包括的な人権の法制度の確立に向けた活動を強化してきた。とくに国内人権委員会の創設を中心にした人権侵害救済制度の確立は、政府が加盟・批准している多くの国連人権条約関係委員会から勧告が出されている。また、人権擁護推進審議会が01年にとりまとめた答申でも喫緊の課題であるとされているように、国際的な責任と政治的責務があることをふまえ、政府への要請、与野党協議の促進など、さらにとりくみを強化していこう。

 狭山再審の闘いは、弁護団から、石川一雄さんの無実を示す科学的な手法による新証拠が提出されている。われわれは、新証拠の学習、教宣活動を強め、石川さんの無実を広く訴えていかなければならない。また、東京高裁への鑑定人尋問を求める要請ハガキ活動などをすすめ、再審開始の実現に向けた世論を大きくすることが求められている。

 本年は全国水平社創立100年という大きな節目の年でもある。今後の部落解放運動の方向、組織のあり方などについて全国的な討論集会を企画してきたが、感染症拡大の影響で十分に実施できなかった。3月の記念集会、記念事業などの準備がすすめられているが、記念集会を契機にあらためて組織内外での討論、意見交換をすすめて、これからの部落解放運動の展望を明らかにしていきたい。

 全国水平社は、それまでの部落差別に向けられた同情融和的な対策を拒否し、部落民自身が主体的存在となって自主解放をめざす画期的な組織として創立された。この全国水平社創立の意義と「全国水平社宣言」の精神をあたらめて確認する作業のなかで、闘いの歴史を総括し、成果と課題を明らかにすることが必要である。

 組織内外の提言、苦言を率直に受けとめ、共同の営みとして、全国水平社創立100年の闘いをふまえた部落解放の展望を明らかにしよう。

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