「解放新聞」(2022.02.05-3016)
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岸田文雄・首相は、昨年12月21日夜、臨時国会閉会を受けて記者会見した。
「第7に憲法改正です。今国会では、私が首相になってから初めての憲法審査会が開催されました。国会において憲法改正についての議論が始まったことを歓迎いたします。通常国会では、さらに議論が深まることを心から期待いたします。合わせて自民党総裁として、党改革を進めてまいります。年明けから地方の意見も聞きながら、さらに議論を加速させていきます」とのべた。
また、同日に開催された自民党憲法改正実現本部総会では、「国会での議論と国民の理解を車の両輪と考えてしっかりと押し上げてもらいたい」とあいさつした。
この総会は、推進本部から実現本部へと改組されてから初めての会合であり、同本部最高顧問に就任した安倍元首相や麻生副総裁をはじめ、茂木幹事長らも参加した。そして、首相が党の憲法組織の会合に出席するのはきわめて異例だった。岸田首相は、改組の狙いについて「わが党の覚悟を示した」と発言し、憲法9条への自衛隊明記など4項目のたたき台について「国民にとって早急に実現しなければならない内容だ。総力を結集して結果を出したい」と発言した。
自民党総裁選で、支援を受けた安倍、麻生、茂木への忖度(そんたく)なのか、被爆地である広島県選出で自称ハト派の岸田首相は、憲法改悪に大きく舵を切っており、先の衆議院議員選挙での絶対的安定過半数を背景に、暴走する自民・公明党政権を国民の声で歯止めをかけなければならない。
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国際慈善団体オックスファムは今年1月、コロナ禍で加速する貧富の差を伝える報告書を発表した。
報告書によると、2000年3月から2021年11月の間に、世界でもっとも裕福な10人の資産は7000億ドルから1・5兆ドルと倍以上に増加した一方、99%の人たちは収入が減り、1億6000万人が貧困に陥ったと指摘している。
また、「パンデミックで貧困層は富裕層よりはるかに深刻な打撃を受けている。女性や黒人、アフリカ系、先住民、歴史的に疎外され抑圧されてきたコミュニティーへの影響は特に深刻だった」とし、「統計開始以降初めて、ほぼ全ての国で格差が拡大する可能性が高い」と予測した。さらに、「地球上で最も裕福な1000人はコロナ禍での損失をわずか9か月以内に取り戻したが、世界の最貧困層が立ち直るには10年余りかかる恐れがある」と付け加えている。
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2020年度末の日本企業の内部留保が484兆648億円となり、前年度末比2・0%増、9年連続で過去最高を記録している。一方、民間企業の労働者が2020年の1年間で得た平均給与は443万円で、前年比0・8%減少となった。
給与所得者数を男女別でみると、男性3077万人(前年比1・5%増、44万人増加)、女性2168万人(前年比2・5%減、55万人減少)で平均給与は男性532万円(前年比1・4%減、7万5千円減少)、女性293万円(前年比1・0%減、2万9千円減少)で、労働者の給与は総じて減少している。
雇用形態別では、正規社員496万円(前年比1・5%減、7万7千円減少)、非正規は176万円(前年比0・9%増、1万6千円増加)となっている。
また、厚労省が実施した2019年国民生活基礎調査によると、相対的貧困率は15・7%、子どもの貧困率は14・0%で、そのうち、ひとり親世帯では48・3%にもおよんでいる。
こうした格差社会のなか、生きづらさをかかえる人びとが増えている。
近年、みずからの命を投げ出して周囲の人びとを巻き込んでは命を奪う事件が複数おこっている。また、不満のはけ口をインターネットやSNSを通じて社会的弱者やマイノリティにたいする差別や排外主義に向ける人もいる。
多くの人びとが格差社会の構造を理解し、自分の置かれた立場を自覚し、差別と分断を許さず団結して、経済効率と競争優先の格差社会からの転換をはかり、人権尊重と社会連帯にもとづく安心社会実現に向けてとりくみを強化しなければならない。
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格差拡大と貧困から安心社会実現への転換のためには、公正採用選考をふくむ雇用差別禁止の法律と、公正なワークルールの確立も重要な課題だ。
1975年に「部落地名総鑑」事件が発覚して以降、部落解放同盟をはじめ、企業、厚労省、文科省などが公正採用選考の実現に向けて注力してきた。
しかし、この間、就職にかかわる状況は大きく変化し、公正な採用選考が危ぶまれている。
2018年9月、経団連は2021年春入社以降の新卒者を対象とする就職・採用活動のルールを廃止すると表明した。1953年にはじまった就職協定いらい、約70年続いてきた就職・採用の「目安」がなくなった。
人材確保が困難になってきている一方で、IT企業や外資系の企業など、経団連非会員の企業はルールに縛られることなく採用活動をおこなっていることから、廃止することになった。
また、経団連と大学で構成されている産学協議会は、インターンシップ(就業体験)の定義を見直す報告書を公表した。実務体験をともなわないものはインターンシップとよばないことにする一方、企業が採用選考を視野に入れた評価材料を得る目的で実施できると明確にしている。
採用に直結したインターンシップが広がることが現実味を帯びてきているなか、公正採用選考が遵守されるよう注視していく必要がある。
他方、文科省、厚労省、経産省は、インターンシップは「事業所などにおける学生に対する教育活動」であり、人材確保にとらわれないとりくみが必要だとすることで合意している。そして3省は、企業がインターンシップで得た情報は採用選考には使えないとの考え方を示している。
これは「職安法」5条の4をはじめ、これまで積みあげてきた、公正採用選考の考え方がなし崩しにならないための防波堤だろう。
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昨年11月、部落解放地方共闘全国連絡会議第38回総会、12月には部落解放中央共闘会議第46回総会が開催された。感染症によって顕在化した人びとの差別意識が、社会的弱者やマイノリティに向けられている現状を共有し、課題解決に向けて、差別禁止法、人権侵害救済法制定に向けたとりくみの強化を確認した。
部落解放中央共闘会議は、部落解放・人権政策確立要求実行委員会に結集するとともに、「部落差別解消推進法」を実効性あるものとしていくとりくみを継続してきた。また、部落解放地方共闘全国連絡会議は、各地で部落差別解消推進に係る条例の制定に向けたとりくみを推進してきた。
あわせて、共闘会議の共通の課題として、狭山事件の再審を求めるとりくみ、公正採用選考と公正なワークルールの確立に向けたとりくみを、連合をはじめ、加盟する各労働組合と部落解放同盟が力を合わせて全国的にすすめてきた。感染症拡大により、とりくみが制限されるなかでも、あらゆる差別撤廃に向けて、労働組合や、あらゆる差別と闘う人びととともに、人権侵害救済法、差別禁止法の制定と戦争のない安心社会実現のために団結してとりくみを前進させよう。
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