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『滋賀の同和事業史』編纂から学び展望へ 〜第3回人権セミナー
滋賀

「解放新聞」(2022.03.05-3019)

『滋賀の同和事業史』編纂をテーマにとりあげた第3回人権セミナー(2021年12月17日・滋賀県大津市)

『滋賀の同和事業史』編纂をテーマにとりあげた第3回人権セミナー(2021年12月17日・滋賀県大津市)

 【滋賀支局】 第3回人権セミナーが昨年12月17日、大津市・解放県民センター光荘でひらかれ、51人が参加した。奈良大学文学部史学科教授の井岡康時さんが「『滋賀の同和事業史』編纂の取組から全国水平社100周年後の部落解放運動への提言」と題して講演をおこなった。主催は、部落解放・人権政策確立要求滋賀県実行委員会。

『滋賀の同和事業史』(公益財団法人 滋賀県人権センター 編集・発行)

『滋賀の同和事業史』(公益財団法人 滋賀県人権センター 編集・発行)
本編195頁、資料編181頁、年表11頁
定価2200円(税込)

 『滋賀の同和事業史』は、公益財団法人滋賀県人権センターの設立40周年記念事業として編纂が計画された。戦後の部落解放運動、同和教育運動、同和行政についてまとめるため、作成にあたっては運動団体の活動家・研究者、行政・教育関係者などから聞き取りや新聞等からの資料収集など全県的なとりくみをおこなった。セミナーは、これら資料にある闘いの足跡から学び、全水100周年後の部落解放運動を前進させるためにひらかれた。

 主催者の仙石龍圓・実行委員会会長(滋賀同宗連議長)は「長年にわたるとりくみは大きな成果を実現してきた。しかし、その一方でインターネット上において「部落を暴き・晒す」悪質な差別事件が発生している。あらためて学習を深め、水平社宣言の「人の世に熱あれ」という人権が確立された社会の実現に向けてとりくみをすすめよう」とあいさつ。

 井岡さんは、『滋賀の同和事業史』編纂の中心的メンバー。最初に滋賀県の被差別部落の概要・歴史的特徴について説明し、運動をとりあげた。1924年に滋賀県水平社が結成されるが、全県的な広がりをみせることはなかった。行政と連動した融和運動は積極的におこなわれ、とくに小善隣館(現在の隣保館)を中心にした生活改善運動がすすめられれた。

 全国の水平運動と一線を画するという視点は戦後の部落解放運動でも見られ、部落解放全国委員会が結成されたときには、「滋賀民主同盟」という名称で部落解放運動がすすめられた。県内では「部落解放委員会」という名称が刺激的という理由からだった。

 大津市では隣保館建設に反対する被差別部落の人たちが大津市役所を包囲するなど、部落解放運動に反対する意識が強く存在した。

 こうしたなかで全国的にもまれな県社会福祉協議会を中心とした同和福祉推進員制度など、同和行政のとりくみがおこなわれた。
 運動側も「愛される部落解放運動」路線を提唱した。被差別部落大衆から信頼・支持される運動をめざしたもので、一部の過激な運動をいさめた。

 これらから見えてきた運動・行政のあり方は、「協調」「連携」「交流」を重視したとりくみ。このことが「滋賀路線」といわれてきたのではないかと考えられる。

 現在の部落解放運動、同和行政、人権行政として、「福祉と人権のまちづくり」運動が提唱されている。滋賀県でおこなってきた周辺地域との連携・協調・交流や社会福祉協議会などとの積極的なかかわりが運動の展開で求められる。このことからも、滋賀における解放運動や同和行政のとりくみから学ぶことは、今後の運動・行政をすすめるにあたっての大きなヒントを与えてくれる。

 『滋賀の同和事業史』(定価2200円(税込))の問い合わせ先は☎077・522・8243 滋賀県人権センター

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