pagetop

NEWS & 主張

主張

 

青年部運動の前進に向けて
全国高校生集会・全国青年集会の準備をすすめよう

「解放新聞」(2022.04.05-3022)

 本年は、全国水平社創立100年という節目の年である。被差別当事者自身が立ちあがり、自主的な組織的闘いをすすめることによって、部落差別からの解放を実現するために水平社は創立された。部落解放運動を担ってきた先輩たちに想いをはせながら、あらためて全国水平社創立の意義をかみしめたい。

 「水平社宣言」では、「吾々がエタである事を誇り得る時が来たのだ」とし、「エタ」という社会的に張り付けられたレッテルを、むしろ誇るべきアイデンティティとして名乗り返した。むろん、部落差別が現存する今日的状況において、差別の結果として「部落出身」ということに不安を持っていたり、アイデンティティとして肯定的に受け止められない若者も少なくないだろう。そういった若者とのつながりも大切である。これまでの活動交流において、オンラインを利用した部落青年の居場所づくりや、各支部青年とのつながりのきっかけとして機関紙の発刊やオルグの企画などが報告されてきた。今後も活動を交流し、一人ひとりが仲間とのつながりや社会とのつながりを捉えなおし、たった一人に現れた困難をも見捨てない、そうした部落解放運動を構築していこう。

 また、わざわざ知らなければ差別することもないという、いわゆる「寝た子を起こすな」論は、いまだに社会にまん延している。しかし、全国水平社創立からみえるように、さまざまな被差別当事者自身が声をあげ立ちあがることで、その問題が認知され、差別や課題の解消に向けた社会的運動・連帯が巻き起こってきたことは、歴史が証明しているといえるだろう。声をあげなければ、なかったことにされてしまう。

 人権意識の希薄さが露呈する今日の状況において、あらゆる差別撤廃に向けた私たちのとりくみは重要だ。それぞれの課題を共有しながら広範な人びと・団体と連帯し、差別禁止をふくむ包括的な人権の法制度確立をめざし、青年として活動を展開していこう。

 1948年に国連総会において、「世界人権宣言」が採択された。第2次世界大戦の惨禍を二度とくり返さないという強い反省のもと、基本的人権の普遍的な原則を定め、各国の憲法や国内立法、地域人権条約などに大きな影響を与え、「あらゆる人と国が達成しなければならない共通の基準」として定められている。しかし、いまだに世界各国で戦争や紛争があいついでおり、2月にはロシアがウクライナに侵攻を開始し、甚大な被害が出ている。戦争行為によっていかなる問題も解決しないことは、これまでの人類の歴史が証明している。あらためて「戦争は最大の人権侵害である」との立場を明確にし、あらゆる戦争に反対の声をあげなければならない。

 また、日本では、この世界的情勢に乗じて、改憲や核保有議論など「戦争できる国づくり」につながる動きがある。私たちは、戦争につながる一切の策動を阻止するとともに、戦争に反対する人びととの国際連帯にとりくみ、反戦・反差別の闘いを強化していこう。

 2016年2月、鳥取ループ・示現舎が『復刻版\ 全国部落調査』と称して全国の被差別部落所在地一覧の出版予告とともに、その電子データなどをインターネット上に掲載した、「全国部落調査」復刻版出版事件について、昨年9月に東京地裁判決が言い渡された。判決は、「復刻版」の公表が身元調査を容易にし、部落差別を助長することを認め、基本的には出版差し止めに加え、賠償も認めるなど積極的に評価できる部分もあるものとなった。これは、部落差別の現実とその解決を社会に訴え続けてきた部落解放運動の成果であるとともに、裁判闘争でかちとったものである。

 しかし、「差別されない権利が」認められず、プライバシー権の侵害というきわめて狭い範囲での判断だったため、一部の都府県について「復刻版」の差し止めが認められず、さらに、この間、原告・弁護団が重点的に訴えていた「カミングアウト」と「アウティング」の違いが考慮されず、被害が認められない原告がいるなど、きわめて多くの問題があることは明らかだ。

 裁判は、控訴審にうつることとなった。この裁判は、たんに「復刻版」の出版禁止を求めるだけでなく、「差別されない権利」を確立する闘いであり、インターネット上の差別とこの社会がどう向き合っていくのかを問う裁判でもある。青年活動でも学習を深め、多くの人びととの連帯を拡大し、確信的な差別行為を許さず、「完全勝利」に向けてとりくもう。

 発生から59年を迎える狭山事件における狭山第3次闘争について、この間49回にわたる三者協議が開催されるなかで、246点にもおよぶ石川一雄さんの無実を証明する新証拠が提出され、石川さんを有罪とする確定判決の論拠はすでに崩壊している。

 新型コロナウイルス拡大の影響で、いままで通りの活動が難しいなかで、当初から青年独自の活動が報告・交流されてきた。集会や学習会をオンラインで開催したり、感染症対策を講じながらの情宣活動やスタンディング情宣など、青年が率先して実践してきた。その自負を持ち、狭山再審闘争の先頭に青年が立とう。

 今年は、鑑定人尋問を正式に裁判所に求める方針が決まるなど、再審開始の扉をこじ開ける重要な局面を迎えている。石川さんの見えない手錠をはずすため、青年の力を結集し「石川無実」「狭山再審」の世論を高める運動を展開していこう。

 第54回全国高校生集会・第66回全国青年集会を8月20、21日、徳島で開催する。対面開催を基本としつつ、オンラインを取り入れる方針だ。「まん延防止等重点措置」などの措置が一応は全国的に解除される見通しだが、予断を許さない状況だ。創意工夫を講じながら、開催成功をかちとりたい。

 昨年8月に初めてオンラインで開催した第53回全高・第65回全青は、なにより開催できた意義を共有できた。これは、前述したとおり青年がコロナ禍で活動が難しいなかでも試行錯誤を重ね、率先して活動にとりくんできた積み重ねで開催できたものだ。今後も活動交流をおこなって、青年活動のあり方の議論を深めよう。

 一方で、交流・議論ができなかったことが課題だ。オンラインでのとりくみがまだ発展途上という側面もあるが、やはり対面での議論を持ちたいという意見は多かった。また、オンライン開催ということで、参加への働きかけが弱まってしまった側面もあった。活動が難しいなかで、運動から離れてしまった青年も少なくない。それと同時に、オンラインだからこそ普段参加できない青年が参加できた側面もあった。参加形式や参加の働きかけ方など、継続して議論していこう。

 また、全高・全青参加に向けた各地での事前のとりくみも重要だ。コロナ禍でさらに拍車がかかっているかもしれないが、事前学習会や集会開催にとりくむ都府県連が少なくなっている。もちろん、全国から集まる集会の場での仲間づくりや学習も大切だ。また、全高・全青への参加をきっかけに部落解放運動に携わるということもあるだろう。しかし、これまでの全高・全青の参加者から、どういった集会なのか、何が議論されているかわからないまま参加しているといった感想が出ることもある。事前のとりくみによって、自主的な参加を促し、高校生・青年の結集につなげたい。

 部落差別の現実を語り、そして知る。また、今日の社会に矛盾を感じ、差別のない人権が確立された社会を創造するために、自分たちが何をすべきか、仲間がいることの大切さや自分の生き方を確認する場が全高・全青だ。全国から高校生・青年の仲間が結集し、活発な意見交換や実践交流をおこない、各地の運動の発展につながることを期待したい。大いに語り、大いに絆を深め合おう。都府県連・支部において、多くの高校生・青年に積極的によびかけをおこない、徳島での全高・全青の成功をかちとろう。

「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37 TEL 06-6581-8516/FAX 06-6581-8517
定 価:1部 8頁 115円/特別号(年1回 12頁 180円)
年ぎめ:1部(月3回発行)4320円(含特別号/送料別)
送 料: 年 1554円(1部購読の場合)