pagetop

NEWS & 主張

主張

 

就職差別を撤廃し、雇用促進・就労支援にとりくもう

「解放新聞」(2022.06.05-3029)

 2020年1月、国内初の新型コロナウイルス感染症患者が確認され、大規模イベントの中止、延期等の要請がおこなわれ、3月には小・中学校、高校等に臨時休校が要請された。4月には初めて「緊急事態宣言」が発出され、外出自粛要請と飲食店等にたいする休業要請がおこなわれるなど、社会・経済活動は大きく制約されることになった。あわせて雇用・採用においても政府による持続化給付金や雇用調整助成金の拡充がおこなわれてきたなか、その後も感染状況は刻刻と変化しつつも長期化し、厳しい状況が続いている。

 国内で感染症が確認される以前の有効求人倍率は1・6倍を超えて過去最高を記録するなど、求職者の売り手市場となっていた。しかし感染症拡大下では、全国平均でかろうじて1倍を下回らなかったものの、埼玉、千葉、神奈川、滋賀、兵庫などでは、求職者1人にたいして求人数が1件に満たない1倍以下となっている。

 こうした厳しい雇用情勢のなか、「職業安定法5条の4」に違反となる面接時の不適切な質問や不適切な項目をふくむ社用紙等の提出を求めるなどの「差別につながる恐れのある事象」は2020年度には797件の事業所が報告されている。

 この間、「部落地名総鑑」差別事件発覚から46年をへて、インターネット上では差別を扇動する情報が掲載され続けている実態がある。この状況のなかで、「部落差別解消推進法」の意義を広め、就職差別撤廃のとりくみもいっそう強化することが求められている。

 近年の採用をめぐる大きな変化にも注視が必要だ。

 経団連が2021年春入社以降の新卒者を対象とする就職・採用活動のルール(就活ルール)を廃止する表明をして以降、政府が主導してこれまでの就活ルールにそった採用スケジュールを踏襲してきた。一方で、採用活動は企業が独自の判断でおこなうため、守らなくても罰則や公表はない。また、経団連と大学で構成されている産学協議会は、インターンシップ(就業体験)の定義を見直す報告書を公表した。実務体験をともなわないものはインターンシップとよばないことにした一方、企業が採用選考を視野に入れた評価材料を得る目的で実施できると明確にしている。採用に直結したインターンシップが広がることが現実味を帯びてきている。

 この間、ハローワークなどは就活ルールのスケジュールにそって公正採用選考の周知・啓発をすすめてきたこともあり、公正採用選考がないがしろにならないよう、経済団体などに求めていくとともに、雇用と職業についての差別待遇の撤廃を定める「ILO111号条約」の早期批准を国に求めていくことが重要だ。

 就職における応募書類にも大きな変化が起こっている。

 2020年7月、セクシャルマイノリティ当事者を支援する団体から、厚生労働省や日本規格協会(JIS)等にたいして性別欄の削除等、履歴書様式の検討を求める要請がおこなわれ、日本規格協会は示していたJIS規格の履歴書の様式例を削除した。これを受け、厚生労働省は公正採用選考をすすめるうえで参考となる履歴書様式を定めて公表し使用を推奨している。しかし、削除されるべき性別欄は選択式から記載式に変更されたにすぎず、カミングアウトの強要など、問題が残っている。さらにこの問題が残っている様式例にならって、高校卒業者が就活に使用する全国高等学校統一応募用紙の変更が厚労省、文科省、全国校長会で議論されており、注視が必要だ。

 就職差別をなくすために労働組合の役割も大きい。企業や事業所の内部からチェックするとりくみも大切だ。また、労働者の権利を守り、差別や人権侵害のない職場をつくるためにも、採用という雇用関係の入り口で、差別を許さないことが重要だ。

 部落解放中央共闘会議と部落解放地方共闘全国連絡会議は、毎年6月を「就職差別撤廃月間」と位置づけ、リーフレットを作成し啓発活動にとりくみ、職場での点検活動をよびかけている。また、各府県共闘会議においては、労働局や府県行政・教育委員会などにとりくみ強化の申し入れをおこなっている。

 そして連合が2019年に実施した、近年入社試験を受けた人を対象としたアンケート調査では、応募書類やエントリーシートで「本籍地や出生地」の記入を求められたとの回答が56%にもおよぶなど、課題山積を再認識させられる実態を明らかにした調査結果を公表している。こうしたとりくみを通して、各地で共闘会議や連合との連携を深め、就職差別撤廃のとりくみを強化していこう。

 就職差別撤廃とともに、安定した雇用を促進していくとりくみも重要だ。地域での生活相談とあわせて職業相談活動を充実させる必要がある。

 「生活困窮者自立支援法」にもとづく「自立相談支援事業」を活用し、就職困難者の自立を支援していくことや、「ハローワークの求人情報のオンライン提供」を活用し、隣保館などでの職業相談活動を充実させていくことも大切だ。また、ハローワークなどとの情報共有を強化し困窮者に有用な情報や施策を積極的に使えるよう求めるとともに、「部落差別解消推進法」の具体化として、隣保館がない地域でもハローワークや自治体などと連携を密にし、隣保館活動の実施と充実を求めていくとりくみが重要だ。

 安倍政権がおしすすめた労働法制は、不安定雇用を増長させ、感染症拡大をはじめ過去にはリーマンショックや自然災害時に多くの失業者を生み出し、セーフティネットの脆弱性が明らかになっている。そして格差は拡大し続けている。

 今日、7人に1人が貧困にあえぎ、ひとり親世帯では半数近くが貧困に苦しんでいる。不安定かつ低賃金の労働者が増え続ける現状も方向転換させなければならない。

 そのために、7月におこなわれる参議院選挙では、戦争ができる国づくりをすすめ、私たちの生活を圧迫する岸田政権からの脱却のために全力でとりくもう。

「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37 TEL 06-6581-8516/FAX 06-6581-8517
定 価:1部 8頁 115円/特別号(年1回 12頁 180円)
年ぎめ:1部(月3回発行)4320円(含特別号/送料別)
送 料: 年 1554円(1部購読の場合)