「解放新聞」(2022.08.15-3036)
「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の控訴審での勝利に向けて7月28日午後、報道関係学習会を東京・中央本部でオンライン併用でひらき、新聞社、通信社、出版社や7府県連などから30人以上が参加。弁護団が控訴理由書の内容を報告して意見交換し、争点や裁判の意義などを学習した。
控訴審(東京高裁)の第1回口頭弁論は8月3日。
片岡明幸・原告団長が司会を務め、経過報告。指宿昭一・弁護士が控訴理由書の争点を説明し、河村健夫・弁護士がプライバシー権関係を、山本志都・弁護士が「差別されない権利」関係を、それぞれ報告した。
指宿弁護士は、東京地裁判決(21年9月)について▽「差別されない権利」や同盟の「業務を円滑に行う権利」を認めず、復刻版の出版などの差し止め範囲を25都府県に限定▽現住所や現本籍が復刻版に掲載されていない原告への損害賠償を否定▽部落出身が広く知られているとした原告への損害賠償を否定▽示現舎の損害賠償責任を否定、の問題をあげ、控訴理由書の概要を報告。「社会的責任を問うても逸脱する人が出るネット社会。差別にたいする法的責任のあり方をはっきりさせる時代だ。差別をなくす裁判所や司法の役割が問われている」と語った。
河村弁護士は、小説『破戒』の主人公・丑松(うしまつ)を例に「出身を隠して生きる丑松は、住所・本籍を移していたら敗訴だ。地裁判決は出身者の懊悩(おうのう)を顧みていない」と部落差別の実状理解の大切さを強調。「血筋」をたどる身元調査や戸籍、カミングアウトとアウティングの問題などを語った。
山本弁護士は、「差別されない権利」を中心に報告し、平穏生活権にふくまれることなど解説。「地裁判決自体が、プライバシー権、名誉権だけに頼っていては差別はなくせない証明だ。確定して25都府県以外を出版する人が出れば、また裁判させるのか。復刻版がどう使われるかを考えれば明白だ」と語り「憲法14条は差別されない権利を認めている。裁判所がすごく狭く使ってきたことを打破し、差別を正面からとりあげる土俵をつくりたい」と訴えた。
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