「解放新聞」(2022.11.05-3044)
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11月15、16日の両日にわたる部落解放研究第55回全国集会の成功に向け、中央および現地の実行委員会が連携して、現在着々と準備がすすめられている。
部落解放同盟は今年、その前身である全国水平社の創立から100年を迎えた。
この記念すべき年にあたり、私たちは先人の苦闘をふり返り、今日の人権状況を築き上げてきたその努力に感謝するとともに、血と汗と涙による100年の蓄積を無駄にせず、今後の運動を切り拓く方向性を明らかにすることが求められている。それが100周年に発表した「部落解放同盟―新たなる決意」である。議論はまだこれからである。これを軸として部落解放運動が一丸となってすすむ道筋が明らかになる。
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私たちは水平社創立100周年を、激動の最中に迎えている。気候変動問題も、新型コロナウイルス感染症も、生存可能な環境を維持できるか否かの、人類の存亡にかかわる最重要課題である。
同時にこれらの問題はきわめて社会的不公正と差別にかかわる問題である。環境破壊の深刻化は、国内マイノリティと国際的には発展途上国を中心としたグローバルサウスとよばれる国々に押しつけられてきた。だからこそ気候変動問題への対処が遅れたのだといわれている。
また新型コロナウイルス感染症では、政治的経済的格差によって、ウイルス総量を減らすワクチンの接種が、途上国ではなかなかすすまなかったことが、変異株の出現を許したのだといわれている。
こうした状況のなかで、全国水平社100年を迎えていることは、人類の活路が社会の公正と人権にあり、それを拡充することが部落解放にとりくむ私たちの使命であると理解すべきではないか。
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さて、部落解放研究第55回全国集会1日目は、記念講演として中央本部の赤井書記長から「「水平社100年とこれからの部落解放運動」〜格差と社会的排除が覆い被さろうとする社会からの転換を〜」というテーマで講演を受ける。「新たなる決意」をふくめ、まさに水平社創立101年以降の運動を私たちがどう展開するのか、その基調となる重要な講演である。
地元報告では鳥取県連の下吉真二・書記長から「「13年にもわたる鳥取ループとの闘い」〜鳥取ループ・示現舎裁判闘争報告〜」を受ける。控訴審に突入した「全国部落調査」復刻版出版事件裁判(鳥取ループ・示現舎裁判)は、11月17日に第2回口頭弁論がおこなわれる。一審で基本的には勝訴したものの、原告のいない県については復刻版の出版などの差し止めを認めないなど、不十分な判決となっている。それを是正させることはきわめて重要だが、差別を禁止する法律のないもとでは困難さをともなう。
第55回全研では、地元報告を受けて鳥取ループ・示現舎の差別性を当初の経過から再確認し、裁判の必勝を期さねばならない。
また、狭山第3次再審闘争も、弁護団が事実取調請求書を提出し、東京高裁の判断を迫る重要な局面に入っている。再審開始に向けた決意を共有すべく、石川一雄さん、石川早智子さんからアピールを受ける。
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2日目は5つの分科会で、計19の講演・報告を受けて議論がおこなわれる。
水平社100周年、狭山事件、鳥取ループ・示現舎裁判などの重要課題をはじめ、差別をなくす法整備、インターネット上の差別情報、隣保館、「条例」、調査など部落差別にたいするとりくみを、さまざまな視点からとりあげる。
またハンセン病、沖縄、障害者、性的マイノリティー、えん罪、人権とビジネスなど、さまざまな人権課題にかかわって報告を受ける。
昨年の福岡全研はウェブ開催を余儀なくされたが、水平社創立100周年の今年は、対面開催となる。部落解放と人権確立を願う多くの人々が鳥取・米子の地に集い、豊かな学びと交流に参加されるよう、よびかけるものである。
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