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人権・同和教育の前進へ全人教第73回奈良大会に結集しよう

「解放新聞」(2022.11.15-3045)

 第73回全国人権・同和教育研究大会が、11月26〜27日にかけて、奈良県奈良市・なら100年会館を主会場に開催される。2020年の年初からの新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、中止や変則開催を余儀なくされたため、3年ぶりの対面形式での開催となる。

 また、奈良県での開催は、第60回大会(2008年)いらい、14年ぶり8回目の開催となる。今年は、奈良県の被差別部落の青年たちが創立に中心的な役割を果たした、全国水平社の結成から100年にあたるとともに、折しも、奈良県人権教育研究会結成70年、奈良県人権教育推進協議会結成60年と、奈良の人権教育運動にとっても記念すべき年にあたる。

 この節目の年に開催される第73回奈良大会は、「むなつき坂をこえて、すべての人を包摂する社会の構築を奈良の地から」を地元大会スローガンに掲げて開催される。また、人権教育をさらに発展させることを目的に、「新しい様式によるコンパクトで持続可能な大会」、「70年におよぶ部落問題の解決を図る教育を振り返りつつ、リスペクト・多様性・寛容性をキーワードに、社会の変化や状況を鋭敏に捉え、20年後を展望できる人権教育・啓発の創造」を大会コンセプトに設定している。

 大会コンセプトにおいては、誰一人取り残されない社会をめざすSDGs(持続可能な開発目標)の17の目標ととりくみは、貧困・人権・福祉・環境・平和など、人類共通の課題であり、人権教育・啓発活動と重なるとしている。そして、SDGsにおいて世界のとりくみに学ぶとともに、人権教育の実践を発信する機会とすること。人権教育の実践によって、普遍的な価値としての人権の確立と包摂の社会の実現をめざすものであり、「予測困難な時代」といわれる今日の社会状況や新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大するなかにおいて、人間の尊厳と平等という価値を確固として保持するとともに、排除から包摂の関係性をつくりだす人権教育の真価が問われる、との認識が示されている。

 現在の(公社)全国人権教育研究協議会の前身となる全国同和教育研究協議会(以下、「全同教」)は、「個人の自由が奪われ、人格が無視され、甚だしく傷つけられる様な事態が存在するならば、民主教育は敢然としてこの事態と取組み、これと闘う教育でなければならない。即ち、民主教育は当然同和教育に高い位置を与える教育であるべきである」(結成趣意書)と宣言し、1953年に結成された。

 戦後、日本国憲法と「教育基本法」にもとづき、個人の尊厳と人権の尊重を基軸とした民主教育が開始されたにもかかわらず、多くの教員たちは被差別部落の子どもたちの長欠・不就学の状況を放置していた。こうした状況のなかで、一部の教職員が被差別部落への家庭訪問をくり返し、子どもたちの教育を受ける権利の保障の実現にとりくみ、「今日もあの子が机にいない」という報告書等をとりまとめた。これが同和教育運動のはじまりであり、今日の日本における人権教育の原点である。

 全同教は、教育のなかにある差別をとり除き、子どもと親、地域をとり巻いている現実から学ぶ必要があることを明らかにし、現在の大会テーマでもある「差別の現実から深く学び、生活を高め、未来を保障する教育を確立しよう」を基本的視点に据えて、教育実践を創造してきた。部落問題の解決をはかる教育実践を発展させ、さまざまな人権問題の解決をめざす教育・啓発活動へととりくみの幅を広げるとともに、外国籍、障害者など、各人権問題の解決をめざす教育・保育・啓発活動を牽引(けんいん)してきた。

 この間、「人権教育のための国連10年」(1995年〜)にはじまる人権教育の国際的な潮流や、「人権教育及び人権啓発に関する法律」の制定(2000年)など国内法の整備と基本計画の策定により、文部科学省も、人権教育は、すべての地域、すべての学校でとりくまれるべきものであるとの認識にある。

 だからこそ、いま、人権教育の内実と、その結果としての子どもの権利保障の現実が問われなければならない。

 「部落差別解消推進法」の立法事実として、情報化の進展にともなって部落差別に関する状況の変化が生じている、との指摘にあるように、インターネット上には、被差別部落、在日コリアン、障害者をはじめとする被差別マイノリティを攻撃する悪意に満ちた差別扇動があふれている。

 また、核家族化や高齢化などの進展、深刻化する家庭の貧困により、家事や家族の世話を日常的に背負わされ、修学の機会が十分に保障されていない「ヤングケアラー」とよばれる子どもたちの存在も各地で顕在化するなど、子どもたちが守られ、安心、安全に育つ環境が十分に保障されていないのが現実である。

 さらに、本年8月、国連・障害者権利委員会による第1回対日審査がおこなわれ、9月9日、日本政府報告書にたいする総括所見(勧告)が出された。そのなかで、日本でおこなわれている分離教育が厳しく批判され、分離教育からインクルーシブ教育への速やかな改善を促されたところだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大が、さまざまな面で、子どもたちに大きな影響を与えていることが徐々に明らかになってきている。とりわけ、「貧困」問題など、これまでも存在していた問題がより顕在化しているともいわれている。

 子どもたちの置かれた実態を家庭の責任や自己責任とする考え方を許さず、差別の現実や人権侵害の実態を厳しく批判し、権利保障と権利回復に向けたとりくみをすすめていこう。

 いまこそ、同和教育の原点に立ち戻り、子どもたちの教育を受ける権利の保障を基本に据え、同和教育を基軸とした人権教育をすべての学校、家庭、地域、社会において積極的にすすめていこう。

第73回全国人権・同和教育研究大会

▽主催/公益社団法人全国人権教育研究協議会、第73回全国人権・同和教育研究大会奈良県実行委員会▽期日/11月26日(土)、27日(日)▽会場/奈良市・生駒市・大和郡山市・橿原市

*従来の参加方法とは異なる。全人教のホームページで開催要項の確認を。

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