「解放新聞」(2022.11.25-3046)
中国・四国ブロックは11月4日午後、岡山市内のピュアリティまきびでひらき、9県連から70人が参加した。
学習講演は①「部落差別問題の現在」内田龍史・関西大学社会学部教授②「鑑定人尋問の実現を 狭山第3次再審勝利に向けて」片岡副委員長③「水平社100年とこれからの部落解放運動〜格差と社会的排除が覆い被さろうとする社会からの転換を」赤井書記長の3本。
歯朶山中執の開会あいさつに続き、主催者あいさつした西島委員長は、「狭山市民集会で鑑定人尋問を求める全国からの署名を提出した。年内にあと10万筆を提出し、各地で情宣などを活発に展開して世論を背に裁判所に迫っていきたい。尋問の実現はゴールではなく、かならず再審開始につなげよう」と強調。インターネット上の部落差別情報の拡散については、「自治体の首長による法務局への削除要請があいついでいる。削除要請のとりくみと「全国部落調査」復刻版出版事件裁判控訴審の闘い、また国会要請などをつみあげていこう」とのべた。つづけて、「同盟員の減少や高齢化など山積する課題・実態を共有しながら、部落解放の灯を大きく燃やし広げる部落解放運動の前進へ決意を固め、運動のあり方をともに考えていく解放学校としたい」とよびかけた。
学習講演①では国の意識調査などを示しながら、被差別部落への差別意識、インターネット上で拡散・拡大している部落差別情報が及ぼす、とくに若い世代への影響と、学校での同和教育の状況が報告された。
学習講演②では片岡副委員長が、狭山事件再審弁護団が東京高裁に求める鑑定人尋問のそれぞれの新証拠(鑑定内容)について解説をおこなった。片岡副委員長は、「闘いは最後の勝負に差しかかっている。再審開始を求める裁判のほとんどで鑑定人の尋問などは却下されてきた。しかし狭山はこれだけの石川さんの無実を示す新証拠をつみあげてきた。何としても再審の開始につながるよう、署名をはじめとするとりくみに力を入れよう」とよびかけた。
学習講演③では、赤井書記長が、社会全体に差し迫る社会保障問題や、人口構造・社会構造の変容によって顕在化する課題を示しながら、被差別部落からの若年層の流出や、単身高齢者・生活困窮者が地域外より高い比率であること、また被差別部落に生まれた当事者のアイデンティティを尊重したネットワークの構築など、時代や社会の変化とともに運動の足元からつぎの部落解放運動を考えていこう、と提起した。
近畿・東海・北陸ブロックは11月7日午後、大阪市・HRCビルでひらき、11都府県から141人が参加した。学習講演は、①「部落差別問題の現在」内田龍史・関西大学社会学部教授②「鑑定人尋問の実現を 狭山第3次再審勝利に向けて」片岡副委員長③「水平社100年とこれからの部落解放運動〜格差と社会的排除が覆い被さろうとする社会からの転換を」赤井書記長の3本。
主催者を代表し、あいさつした西島委員長は、「新執行部体制の前には、狭山や復刻版裁判をはじめとする運動課題、そして、全国的にも共通する、組織内の人材不足や同盟員の減少、財政的な課題などさまざまな課題が山積している。そのなかでも、部落解放運動を前にすすめようとがんばっていただいている。経験や課題に学び、また部落差別とそれを取り巻く社会の実態、変容を見据えながら運動の前進をかちとる、それに向けた決意を固める解放学校に」とよびかけた。「全国部落調査」復刻版出版事件裁判控訴審闘争については、「各地で自治体首長による法務局への削除要請もとりくまれてきたが、法規制がなければ表現の自由が優位となり、プロバイダも訴訟リスクをおそれて削除せず、部落差別を助長・拡散する書き込みや動画が削除されないままだ。法制定までの壁は高い。しかし、差別の実態を国、自治体に突きつけ、実現しなければならない」とのべた。
講演のあとの意見発表では、和歌山の参加者から、インターネットの問題に関連し、▽差別主義的な言動に賛同を示しながら、差別的な書き込みをより拡散する形で投稿する人物が何万人のフォロワーを持つという現状がある。そのなかで確信的な差別行為にどう歯止めをかけるのかが課題、と提起した。
学習講演①では内田教授が、インターネットのなかの部落差別はいますぐ手を打たなければならない状況と強調し、同和教育の状況などを意識調査の分析などをもとに報告。ネットの質問サイトなどで地名などを羅列しながら部落差別情報を拡散する確信犯的な差別行為では、差別する意識がなくても地名を検索することで部落差別にたいし無防備な状態で差別情報を知ることになることや、被差別部落を撮影した「部落探訪」など陰湿かつ巧妙な手法で部落差別が拡散・拡大されている実態が示された。
学習講演②では片岡副委員長が、狭山第3次再審闘争について、証人尋問と裁判所によるインクの実験の実施について、新証拠を解説。大きな山場にさしかかった狭山の闘いを、各地からの石川無実、再審開始の声で突き動かそうと訴えた。
学習講演③では、赤井書記長が、各地でとりくまれてきた人権のまちづくり運動の成果と同時に、被差別部落への人口流入や、若年層の地域外への流出、単身高齢者や貧困率の比率の高さなど、部落外の今後の社会的課題が、一足先に現在あらわれている被差別部落から課題解決を先進的にとりくむ、といった実践が必要と提起。またインターネットで各地の部落を暴く差別行為が横行するなかで、部落を離れた当事者にどう寄り添っていくのか、など課題を提起した。
九州ブロックは11月9日午後、福岡市内の福岡県部落解放センターでひらき7県連110人が参加した。
九州ブロックの組坂繁之・議長が「ウクライナではいまだに激しい戦闘が続くなど、人権・平和・環境の課題が大きく後退している。岸田政権のもとで改憲策動が強まっており、軍事費も増大しているなかで、人権侵害救済法の制定に向けて、人権確立を軸にした政治勢力の結集をすすめていかなければならない。さらに狭山の闘いなど、中央解放学校でしっかり学んで県連・支部に持ち帰って頑張ってほしい」とよびかけた。
第1講は、石元清英・関西大学名誉教授が「なぜ若者は部落にマイナスイメージをもってしまうのか―部落に対する誤解や偏見の実態について考える―」、第2講は、片岡副委員長が「第3次狭山再審闘争の勝利に向けて」、第3講は、赤井書記長が「水平社100年とこれからの部落解放運動」をテーマに講演した。
講演後の意見発表や質疑では、▽狭山再審署名を集めるために活用する教宣物の要望▽狭山の街頭署名をおこなうと若い世代が署名をしてくれる。狭山事件をインターネットで知るという新しい傾向がみられる▽第1次ベビーブーム世代(810万人)が75歳以上になる2025年問題を学習して対応してきたが、現実に地区内の高齢者が増え、支部の役員をする人がいない。子ども会で育った人でも、仕事の関係などで地区外に出ることも多い。どうしたらいいのか悪戦苦闘。高齢者を守るという生活課題では他の運動団体とも連帯している、などの発言があった。
西島委員長は、「「全国水平社創立100周年〜部落解放同盟―新たなる決意」を具体化していかなければならない。今後、プロジェクトをつくって作業をしていく。中央解放学校でも問題提起をして双方向で議論しながら、これからの部落解放運動のめざすべき方向を明確にしていくことが求められている。狭山の教宣物を活用して、緊急20万署名を年内に達成していこう。10月末から3日間、インターネットで狭山広告にとりくんだ。若者に向けたものだが、さらに世論を広げ、鑑定人尋問を実現していかなければならない。インターネット上の部落差別情報への対策も重要な課題である。人権侵害救済制度の確立は、2002年、小泉内閣の時代に「人権擁護法案」として閣議決定されて国会審議もされたが廃案になった。この人権侵害救済法のとりくみの妨害者という役割をはたしてきたのが旧統一教会である。いま、大きな社会問題になっているが、われわれは、人権と平和を軸にした政治勢力の結集に向けて全力をあげなければならない。そうした闘いを着実にすすめていくためにも、今後、組織のありようもふくめて双方向の議論をすすめるなかで、つぎの時代の運動の方向性をあらためて提起していきたい」とまとめた。
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