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新年1月の三者協議に向けさらに10万筆の署名を

「解放新聞」(2022.12.15-3048)

 狭山事件の有罪判決の根拠の一つとされたタオルに関して、弁護団は証拠開示を求めていたが、11月7日、検察官は、弁護団が求める証拠は「不見当(見当たらない)」とする意見書を提出した。

 狭山事件では被害者の死体は、タオルで目隠しされて発見され、このタオルは東京の食品会社が関連する会社に贈答品として配ったものだった。配られた先の一つに、石川さんがかつて働いていた製菓会社の工場があり、野球大会の参加者に配られたという工場関係者の証言を根拠として、野球チームに入っていた石川さんは犯行に使われたタオルを入手可能だったとして、有罪の根拠とされたものである。

 しかし、石川さんがこの製菓会社の工場に勤めていたのは、1958年3月から1961年9月までの約3年半であって、その間におこなわれた工場の野球大会でこのタオルが賞品で配られ、石川さんが野球大会に参加し、タオルを入手したという確たる証拠は何もない。有罪判決の認定は、そもそも、きわめて弱いものと言わざるを得ない。

 また、このタオルの使い方について、自白は不自然に変遷しており、石川さんの自白が体験したことをのべた真実の自白ではないことを示している。証拠開示された取調べの録音では、タオルは何に使ったかと警察官に聞かれて、石川さんは目隠しではなく口をしばったと答えており、石川さんが犯人ではないゆえに死体がどうなっていたかをまったく知らなかったことが明らかになっている。

 タオルは犯人が被害者の死体を目隠しするのに使ったものであり、警察が事件直後から、同種のタオルの配付先などについて、徹底して捜査をすすめたことは間違いない。弁護団は、食品会社が、本件と同種のタオルをどこに、どれだけ配付したのかについての記録や資料、製菓会社の贈答品についての保管や各工場への配付についての帳簿等の記録など4項目の証拠開示を今年1月に求めた。これらの資料の証拠開示によって、石川さんがタオルを入手可能だったという判決に疑問が生じる可能性があるからだ。

 これにたいして検察官は、タオルに関する新証拠が提出されていないなどとして、証拠開示に応じる必要はないとする意見書を提出した。

 弁護団は反論の意見書を提出し、弁護団が開示を求めているのは、タオルを製造し、得意先に配付した食品会社、およびタオルの配付を受けた製菓会社(本社や各工場)における帳簿など客観的な資料であり、こうした資料の開示は新証拠のあるなしにかかわらず、おこなわれるべきだと主張した。

 4月におこなわれた三者協議で、裁判所は、客観的な証拠はなるべく開示してほしいというこれまでの裁判所の姿勢は踏襲するとのべて、タオルについても客観的な資料は出してほしいと開示を促した。

 こうした経緯を経ながら、検察官は11月7日付けで、弁護団が開示を求めるものは「見当たらない」とする意見書を提出してきたのだ。

 弁護団は、11月15日付けで反論の意見書を提出し、書類等の作成や保管の時期や範囲を限定せず開示を求めていることを指摘して、あらためて開示を求めた。

 しかし、11月24日におこなわれた三者協議で、検察官は、作成時期、範囲にこだわらず、弁護団の求めるものは「不見当」であると回答した。

 また、タオルと同様に裁判所が開示の検討を促していたスコップに関する資料についても、検察官は「開示に応じる必要はない」ということで対応済みとの回答に終始した。

 弁護団は、有罪証拠の一つひとつに新証拠を提出し、有罪判決に疑問が生じているとして再審開始を求め、それに関連して検察官手持ち証拠の開示を求めている。裁判所も客観的な証拠はできるかぎり開示すべきという姿勢で促しているのだ。

 それにもかかわらず、検察官は「見当たらない」と言うだけで、手持ちの未開示証拠のリスト(一覧表)さえ開示しようとしない。また、「開示の必要がない」と言うが、開示の必要性は検察官が一方的に判断すべきものではないはずだ。検察官の対応はきわめて不誠実、不当と言わざるを得ない。

 こうした証拠開示をめぐる状況を公正・公平なものに変えていくためには法律、制度を変えていくしかない。再審請求における証拠開示を検察官に義務づけることや、裁判所が再審開始決定を出したら検察官は抗告(不服申し立て)をできないようにすることなどを盛り込んだ再審法(「刑事訴訟法」の一部)改正が喫緊の課題だ。再審法改正を求め、国会に強く働きかけていこう。再審法改正を求める国会請願署名にとりくもう。

狭山再審へネット署名も

 11月24日、東京高裁で第52回三者協議がひらかれ、東京高裁第4刑事部の大野勝則・裁判長と担当裁判官、東京高等検察庁の担当検察官、弁護団からは、中北龍太郎・事務局長ら10人の弁護士が出席した。

 弁護団は、検察官が7月29日付けで提出した意見書にたいする反論として、血液型に関する法医学者や元科捜研技官の意見書を年内に提出することを伝えた。

 一方、検察官は、弁護団が提出した新証拠、補充書にたいする反論の一部を年内に提出し、その他の反論、および事実取調請求書にたいする意見書を来年2月末までに提出するとのべた。

 次回の三者協議は2023年1月下旬におこなわれることになった。

 弁護団が8月29日に、第3次再審請求で新証拠を作成した鑑定人11人の証人尋問とインク資料の鑑定の実施を求める事実取調請求書を東京高裁第4刑事部に提出した。これを受けて、狭山事件の再審を求める市民の会(鎌田慧・事務局長)は事実調べを求める緊急署名を開始した。さる10月28日には、全国から寄せられた10万筆を超える署名を東京高裁に提出することができた。再審請求人の石川一雄さん、早智子さんも、全国から多くの声が寄せられたことを喜ぶとともに、力づけられている。全国から署名を送っていただいたみなさんに感謝するとともに、さらに署名を広げるいっそうのとりくみをお願いしたい。

 まだ事実調べの実施が決まったわけではない。事実調べをおこなうかどうかの裁判所の判断は、2月末に出される検察官の意見書やそれにたいする弁護団の意見をふまえてなされる。それまでに、11人の鑑定人尋問とインク鑑定の実現に向けて、さらに署名運動を広げていこう。次回の三者協議がおこなわれる1月に、さらに10万筆の署名が提出できるよう署名運動にとりくもう。

 部落解放同盟中央本部のホームページに掲載されている石川さんのビデオメッセージやインターネットの署名サイト(左のカコミ記事を参照)を活用し、世論を広げよう。

 鑑定人尋問、事実調べを実現し、狭山事件の再審開始決定をかちとろう。石川さんの再審無罪判決を実現し、「みえない手錠」をはずすまで、石川さんと弁護団の活動を支援し、世論を大きくしていこう。

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