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NEWS & 主張

主張

 

全国水平社創立の原点に立ち返り、
101年目からの部落解放運動を切り拓いていこう

「解放新聞」(2022.12.25-3049)

 1922年3月3日、京都市公会堂(岡崎公会堂)で全国水平社創立大会が約1000人の参加者が集まって開催された。大会では、「部落民自身の行動によつて絶対の解放を期す」という部落民自身による自主解放、「絶対に経済の自由と職業の自由を社会に要求し以て獲得を期す」という生活権の獲得、「人間性の原理に覚醒し人類最高の完成に向つて突進す」という人間性にもとづく人類の重視を示した綱領と、部落民の全国的団結をよびかけ、人間にたいする尊敬と部落民の誇り・アイデンティテイを高らかにうたった「水平社宣言」を採択した。全国水平社は同情融和的な施策を拒絶し、部落民自身の自主的な組織的闘いをすすめ、部落差別からの解放をめざすことを宣言し、全国の部落民にその闘いへの結集をよびかけたのである。

 それから100年の本年3月3日、ロームシアター京都で全国水平社創立100周年記念集会を開催し、私たちは「部落解放同盟―新たなる決意」として①「人権の法制度」の確立をめざす、②部落差別と深く結びついた「社会的格差」と「社会的排除」に対する徹底した闘いを挑む、③「地球的規模の人類危機」に立ち向かい、「世界の水平運動」の本格的な展開、④国内外の被差別マイノリティと勤労諸階層との連帯と協働の促進、部落解放同盟を開かれた「未来志向の組織」へと改革する、という四つの決意を発表した。

 全国大会以降、「新たなる決意」具体化検討委員会を立ち上げ、人権の法制度確立に向けた運動の再スタート、狭山第3次再審・鑑定人尋問実現に向けた20万人署名全国一斉行動、ブロック別中央解放学校の開催、「水平社宣言」検討プロジェクトでの検討など、決意の具体化に向け、議論・とりくみをすすめてきた。

 鳥取ループ・示現舎や類似犯により、インターネット上で「被差別部落の所在地情報」が氾濫・拡散し、部落差別はいま、部落の地名や人物名を「あばきさらす」(アウティング)という形態も加わり、悪質化・陰湿化している。「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の東京地裁判決で、部落出身者のプライバシーを侵害する違法行為、出版・公開の差し止め、約500万円の賠償を認めながらも、16県の差し止めが認められず、「差別されない権利」が認められない判決となった。ひき続き控訴審勝利とあわせ、「部落探訪」などインターネット上の部落差別情報の削除に向けたとりくみも強化していかなければならない。

 インターネット上に部落の所在地情報や個人情報を本人の承諾もなしに一方的にさらす行為は、不当な部落差別である。私たちは「部落地名総鑑」差別事件、結婚や就職での差別身元調査事件をきっかけに、「部落差別規制条例」の制定や身元調査お断り運動を広範な人々と築きあげてきた。そうした努力を水泡に帰し、個人でも身元調査をおこなうことを可能にする行為であり、断固として許すことはできない。

 裁判闘争の勝利はもとより、地方自治体のモニタリング活動、部落差別撤廃条例やインターネット上の誹謗・中傷禁止条例の制定など、地方からのボトムアップの運動を盛りあげつつ、「部落差別解消推進法」の強化・改正、人権侵害の被害者救済や差別禁止法の制定など、人権の法制度確立に向けた運動をさらに強化していく必要がある。かつて「特別措置法」の延長や「部落解放基本法」制定要求運動を展開した以上に、国会質問への働きかけ・ロビー活動や与野党の人権政策推進議連への働きかけを強化していかなければならない。

 狭山闘争は、事件発生から半世紀以上が経過し、2016年に第3次再審を請求してから15年以上が経過している。狭山闘争はすべての部落民の課題であるとともに、「一人は万人のために、万人は一人のために」という合言葉のもと、労働組合や住民の会へと共闘が広がり、とりくまれてきた。09年に裁判所、検察官、弁護団による三者協議が開始されて以降、191点の証拠開示がおこなわれ、255点の新証拠が提出されている。とくに本年8月29日に弁護団は東京高裁にたいして11人の鑑定人の証人尋問と裁判官によるインク鑑定の実施を求めた事実取調請求書を提出した。11人は寺尾判決の有罪判決に即した新証拠の鑑定人で、脅迫状の筆跡・識字能力、指紋、足跡、スコップ、血液型、目撃、音声、万年筆、自白、殺害方法、死体処理について鑑定書を作成した科学者や専門家である。

 有罪とされた証拠の数々はこれら科学的な鑑定により証拠能力を失っている。再審開始の突破口である事実調べが実現するかどうかの最終局面といえる闘いを、私たちは全力でとりくむことが求められている。

 現在、狭山事件の再審を求める市民の会を中心に、裁判所に事実調べの実現を求め、全国20万筆を目標とした署名活動を、あわせて本年10月31日〜11月2日のインターネット広告を契機としてネット署名をよびかけている。多様な手法を用い、再審開始実現に向けた世論を大きく喚起していくことが求められている。

 1933年、全国水平社第11回大会運動方針において、部落民の日常的な生活要求を世話役活動でとりあげ、大衆運動を組織していこうという部落委員会活動が提起された。生活についての相談・世話役活動から、共同浴場、集会所、託児所、保育所、トラホーム治療所、無料診療所、生業資金・低利資金の無条件即時貸与、公営住宅の新設など、さまざまな生活擁護闘争がとりくまれた。これは戦後の行政闘争や隣保館における相談・世話役活動の原点ともいえる活動であった。

 特別対策としての同和対策事業が終結して20年が経過、2016年に「部落差別解消推進法」の成立をふまえ、同法第6条にもとづく意識調査などは実施されたが、全国的な地域住民の生活実態調査は1993年に総務庁が実施した「同和地区実態把握調査」以降、30年余実施されていない。新自由主義政策のもとで、あらゆる分野で経済的格差と社会的排除が拡大し、コロナ禍が続く今日、部落の高齢化、孤立化、貧困化と人口減少・流動化に加え、さまざまな社会的困難層の課題が部落に山積していることが予想される。

 地域住民の生活実態を把握するとりくみを創意工夫して実施し、自分たちの住むまちの地域課題を把握する現代版「部落委員会活動」を推進し、公的支援の要求をとりまとめ、みずからもNPO法人などの事業の受け皿づくり、各種助成金をはじめとした多様な資金調達や人材育成に挑戦していかなければならない。

 都市型、農山漁村型など、多様な部落の実態把握や地域運動づくりに向け議論・検討をスタートしているが、中央福祉学校などにおいて、先進的なとりくみをしている支部・地域の実践に学び、部落発の地域共生社会づくりをすすめていくことが求められている。

 部落解放運動は、第1期の糾弾闘争主導の時代、第2期の行政闘争主導の時代、第3期の共同闘争主導の時代を経て、多くの苦難を乗り越え、全国水平社創立100年を迎えるにいたった。

 今日的に同盟員の減少、高齢化がすすんでいるなかで同盟組織をどのように改革していくのか、部落の外で暮らし、日々差別と向き合う人たちと、どうネットワークをつくっていくのか、も問われて久しい。

 地域活動の担い手・人材不足、運動の停滞、同盟員の減少、財政問題などの課題を克服していくための議論やとりくみを、ブロックをはじめ全国的に議論していかなければならない。

 ついては部落解放同盟組織のあり方もふくめ、「中央理論委員会」を新たに設置・再開し、中央解放学校の開催をはじめ、ブロックや中央委員会で一つ一つ議論をすすめていきたい。

 これまでの部落解放運動の歴史をふまえ、「よき日」をめざし、水平社創立101年目からの部落解放運動を私たちの手で切り拓いていこう。

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