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復刻版裁判控訴審・第2回口頭弁論に結集しよう

「解放新聞」(2023.01.25-3052)

 「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の控訴審における第2回口頭弁論が2月1日にひらかれる。口頭弁論では、双方がそれぞれの主張をのべるが、裁判はおそらくこの2回目の口頭弁論で結審となり、その後、判決が言い渡されるので、控訴審の最後の裁判となる見通しである。「全国部落調査」復刻版の出版を完全に差し止め、インターネットから完全に削除させるために全国から裁判に結集しよう。

 「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の控訴審は、昨年8月3日に東京高裁で第1回口頭弁論がひらかれ、11月17日に第2回口頭弁論がひらかれる予定になっていた。ところが一審被告の事情で出廷できないので中止するという連絡が2日前に裁判所からあって、第2回は延期になった。一審被告は、弁護士を頼まず自分で裁判をやっているので、出席しないと裁判が成り立たないという理由からだが、全国から裁判に参加する予定だった原告や傍聴者は大混乱となった。とくに航空券を予約していた九州や中・四国の原告は大きな損害を被った。

 東京高裁における控訴審は昨年8月に始まったが、一審被告は相変わらず荒唐無稽な主張をくり返している。

 1点目に、一審被告がくり返しているのは、身元調査の材料として悪用されるというリストの性格、機能を隠蔽して、『全国部落調査』はたんなる地名のリストであり、公表しても被害はないという点だ。

 東京地裁は2021年9月の判決で、部落リストに住所や本籍があると「被差別部落出身者として結婚、就職等の場面において差別を受けたり、誹謗中傷を受けたりするおそれがある」と判示し、プライバシー侵害を認めたが、一審被告は、「リストは単なる地名の羅列であって、個人の名前も情報も出ていないのだからプライバシーの侵害にならない」と反論した。しかし、このリストは歴史的社会的に一般社会から区別され、差別的な取り扱いを受けてきた地域の一覧であり、その公表が「自分たちとは違う、特別な人たちが住む地域」という差別意識を喚起するリストである。一審被告はこの本題を棚に上げ、たんなる地名リストだと問題をすり替えている。

 2点目は、部落差別の実態、つまり部落に住んでいる、住んでいたなど、被差別部落と何らかのかかわりを持っている人が部落出身者と〝見なされて差別される〟という現実をまったく無視していることだ。

 地裁判決は、リストに掲載された地名に住所や本籍を置いている人は部落出身者だとみられ、差別されると判断した。これにたいして一審被告は「少なくとも住所や本籍があることをもって部落出身とは判断できない」と反論してきた。もちろん『全国部落調査』に住所または本籍があるだけで部落出身と判断することはできないが、住所または本籍があることによって、その人が部落出身者と〝見なされ〟て差別の対象となることは事実だ。住所や本籍がなくても、親きょうだいや親族が住んでいた、住んでいる場合も部落出身者と見なされて差別されている。だから〝見なす材料〟となる『全国部落調査』が問題なのである。

 これにたいして弁護団および原告は、とくにつぎの3点を裁判所に訴えてきた。1点目は、『全国部落調査』は公表すること自体が差別を拡散助長するものであり、リストに出ているすべての都道府県を差し止めるべきだという点である。地裁判決は、25の都府県だけを差し止め、16の県を差し止めから外した。しかし、部落差別の実態からみて、これはまったく間違っている。部落差別は「部落民」とよばれる人たちに向けられる忌避・排除の行為であって、差別する側は、ある県の部落民は差別するが、隣の県の部落民は差別しないというようなことはない。したがって特定の県だけを差し止め、それ以外の県は差し止めないということは、部落差別の現実から大きくズレている。

 2点目は、そもそも一審被告が出版を企んだ『全国部落調査」復刻版は、法務省が差別を助長拡散する差別図書として摘発し、回収したうえで焼却処分にした文字どおり差別図書だという点だ。

 1975年、法務省は『部落地名総鑑』を差別図書として摘発したが、一審被告が販売しようとしている復刻版は、この『部落地名総鑑』と同じ内容の図書である。当時、法務省は差別を助長する図書として購入者を調査し、図書を回収したうえで焼却処分したが、一審被告は法務省が焼却処分したものを復刻して販売しようとしているのである。

 3点目は一審被告の悪質性の指摘だ。この裁判が始まる前の2016年2月に、東京法務局が被告をよび出して「インターネット掲載は、差別を助長し、又は誘発する」とのべ、「直ちに中止しなさい」と「説示」をおこなったが、被告はまったく無視した。また、2018年12月に法務省が「インターネット上の同和地区に関する識別情報の適示事案の立件及び処理について」という依命通知を出したが、被告はこの通知もまったく無視して、挑戦的な態度を続けている。

 昨年、東京地裁は、「ウェブサイトヘの掲載、書籍の出版、出版物への掲載、放送、映像化(いずれも一部を抽出しての掲載等を含む。)等の一切の方法による公表をしてはならない。」という判決を言い渡したが、一審被告は、その後も全国各地の被差別部落に潜入して動画を撮影し、インターネットに流し続けている。これにたいして11月、ユーチューブが一審被告の「部落探訪」を削除したが、しかし、一審被告らは新たな方法でこれを公開している。。

 一審被告の行為は、文字どおり差別の助長拡散である。最近、一審被告に触発されて、被差別部落をさらしものにする模倣犯があらわれている。裁判に負ければ、このような模倣犯がさらに増えていくことになる。絶対にこれらの差別扇動を削除させなければならない。この裁判は、部落差別の確信犯との闘いであり、ネット時代の部落差別との闘いでもある。そして、同和地区所在地一覧や差別情報を掲載することは犯罪行為として処罰する、という法律をつくるための闘いの一環でもある。2月1日の口頭弁論に全国から参加しよう。

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