「解放新聞」(2023.02.15-3055)
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部落解放同盟第80回全国大会を2023年3月3日、京都で開催する。前回大会から約9か月しか経過していないことから、課題別運動方針は前回大会の方針を踏襲。今大会の一般運動方針(案)については、闘いの基調と課題を中心に各都府県連から選出された代議員の活発な討議をお願いする。
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2022年3月3日、全国水平社創立100周年を迎えた記念集会を開催。「部落解放同盟―新たなる決意」として①「人権の法制度」の確立をめざす、②部落差別と深く結びついた、「社会的格差」と「社会的排除」に対する徹底した闘いを挑む、③感染症をはじめ、地球温暖化、自然災害、環境破壊、戦争、核兵器、原発など、「地球的規模の人類的危機」に立ち向かう、④国内外の被差別マイノリティと勤労諸階層との連帯と協働を促進させ、部落解放同盟を開かれた「未来志向の組織」に改革する―を表明した。
第79回全国大会後、西島・赤井新体制のもとで「部落解放同盟―新たなる決意」具体化検討委員会(以下「検討委」という)を設立し、その具体化へ論議等を積みあげている。
1点目は、検討委の主要課題の一つである「人権の法制度」の確立をめざす闘いである。
現在、差別や人権侵害を受けた人たちにたいして迅速に救済し、差別を禁止する法制度はない。2002年の小泉政権時代の「人権擁護法案」、2012年の民主党政権時代の「人権委員会設置法案」はいずれも閣議決定されたものの廃案。あれから10年余、運動の到達点は変わっていない。
「障害者差別解消法」が公布(施行は2016年)されて以降、安倍政権では「ヘイトスピーチ解消法」「部落差別解消推進法」「アイヌ施策推進法」と個別法が整備された。全国各地で「部落差別解消推進法」の具体化を求める闘い等により「部落差別解消条例」等が制定され、同条例にもとづく施策等が実施・推進されていることは大きな成果である。
「部落差別解消推進法」は理念法でしかなく、鳥取ループ・示現舎に代表されるインターネット上での部落差別、被差別部落の所在地情報の流布・拡散問題の解決に「部落差別解消推進法」が役立っていない。
1月23日から通常国会がスタートした。包括的な人権の法制度を拒否し続けてきた「最長政権の影」が覆い被さっている面もある。ネット上の部落差別の禁止に向けた「部落差別解消推進法」の強化・改正を求めるのか、閣議決定された「人権擁護法案」や「人権委員会設置法案」をふまえた「人権救済機関」の整備を求めるのか。中央執行部として自民党を中心とする与党、野党の国会議員への働きかけをねばり強く続けて、院内でのとりくみを積みあげていく所存である。
今大会では、「部落差別解消推進法」にたいする基本的姿勢について意思統一を図り、被差別部落の所在地情報をはじめとする部落差別情報の氾濫・流布を禁止することを強く要求する闘いを通じた「部落差別解消推進法」の強化・改正、および人権侵害救済法や差別禁止法も視野に入れた運動づくりに関して代議員による討議をお願いしたい。
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2点目は60年目を迎えた狭山闘争である。第3次再審請求から16年超が経過、不当逮捕から「見えない手錠」をかけられた石川一雄さんは今年1月で84歳に。なんとしても再審開始をかちとらねばならない。
昨年9月に狭山事件再審弁護団は、東京高裁にたいし11人の鑑定人の証人尋問と裁判所によるインク鑑定の実施を求める事実取調請求書を提出。それに呼応して昨秋から狭山事件の再審を求める市民の会を中心に、東京高裁に事実調べを求める署名活動を展開。また3日間ではあるが「えん罪・狭山事件」の真相を伝えるインターネット広告を通じてネット署名をよびかけた。約3か月余りで全国20万筆を目標としてとりくまれた署名活動は30万筆を突破。全国各地で狭山住民の会や共闘団体の皆さんがねばり強く、石川一雄さんの無実と再審開始を訴えた賜物である。
足利事件など再審無罪判決をかちとった事件は、いずれも鑑定人尋問や裁判所による鑑定の実施など、新証拠の事実調べが再審開始の突破口となった。事実取調請求書を提出したいま、狭山第3次再審請求の最終局面といえる闘いだ。署名活動30万筆を突破したことを契機に、あらためて石川一雄さん無実の世論を大きく拡げていくなど不断のとりくみをすすめていこう。
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3点目は「全国部落調査」復刻版裁判闘争である。一昨年秋の東京地裁判決以降も、鳥取ループ・示現舎は「部落探訪」などで部落や人名をさらし続けている。
中央執行部によるロビー活動を通じて第210回国会の法務委員会で自民党の宮﨑政久・衆議院議員が「部落探訪」問題をとりあげて質疑がおこなわれたこと。アブダーク(ABDARC)による「被差別部落をさらす動画をYouTubeは消して!」オンライン署名の展開。全国各地のモニタリング行動と削除要請などの運動が結実。昨年11月30日、ユーチューブ(YouTube)は「ヘイトポリシーに違反した」として示現舎の動画チャンネルから「部落探訪」や関連動画などを削除した。
しかし、鳥取ループは別の動画サイトを立ちあげ、ほかでも被差別部落を「さらしあばく」サイトを立ちあげている類似犯は野放し状態である。
裁判闘争は2月1日の控訴審をもって結審し、6月28日に判決が出されることとなった。被差別部落の所在地情報が流布されることによる「心理的差別の現実」を全く理解しようとせず、公然と確信犯がおこなう差別行為にたいする怒りを、さらなる闘いへのエネルギーに変えていこうではないか。全国各地でインターネット上の部落差別の禁止、人権侵害の解消などが盛り込まれた条例が制定されてきている動きとも連動して、インターネット上の部落差別情報の氾濫、流布する行為を禁止する法整備を求める運動につなげよう。
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4点目は、検討委での主要課題の一つ、部落差別と深く結びついた「社会的格差」と「社会的排除」にたいする徹底した闘いである。
2020年から続いている新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」という)の感染拡大で、日本社会全般にわたって様々な矛盾が噴出した。部落にたいする偏見・差別と結びついた「コロナ差別」の横行・扇動や、ワクチン接種や各種給付金・支援金申請でもインターネット予約できない情報弱者の問題等々、枚挙にいとまがない。いま、ウクライナ侵攻などとも相まった原油高・物価高に伴い、非正規の就労者や年金生活者、ひとり親家庭など低所得者階層にも様々な矛盾等が集中。こうした影響は私たちの被差別部落にも襲いかかっている現実を直視する必要がある。
昨秋、各地方協議会単位で中央解放学校を開催したさいも、各地から地域課題に関する様々な意見等が出された。全国各地の部落大衆がどのような暮らしを余儀なくされているのか。暮らしに関わる様々な課題に対応する施策や必要とするサービスが「部落を素通り」していないか。各地域単位で現状と課題を把握し、部落問題と社会的課題の解決とを結びつけた闘いが求められている。今大会で代議員による討議を経て、検討委でも論議等を積みあげ、方向性を示したい。
そうした地域運動の活性化を図っていくためには、運動の担い手・人材不足、同盟員の減少、財政問題など山積する課題を乗り越えることが必要で、同盟組織の改革と強化は喫緊の課題である。
各都府県連および支部組織と運動の現状を直視しつつ、部落解放運動100年の意義と教訓を101年目からの運動にどう継承・発展させていくかを主眼として、部落解放同盟組織のあり方もふくめて代議員の活発な討議をお願いするものである。
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