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第66回全国女性集会の成功に向けて女性部の運動を大きく前進させよう

「解放新聞」(2023.04.15-3061)

 2022年7月におこなわれた参議院議員選挙では、女性の当選者が35人で過去最多となったが、国会議員全体でみると女性は10人に1人と、依然として少ない状況だ。

 各国の議員たちでつくる列国議会同盟(IPU〈Inter-Parliamentary Union〉)が、2023年2月に世界の女性議員比率ランキングを発表している。調査した193か国中、女性議員が占める割合が最も高かったのは、アフリカのルワンダで、2位がキューバ、3位がニカラグア、4位はメキシコだ。日本は、150位だった。先進主要7か国(G7)では、最高位のフランスが35位、最下位から2番目のアメリカが74位だった。

 また、「世界経済フォーラム」が毎年発表している2022年版「ジェンダーギャップ(男女平等)」指数によると日本は146か国中116位であり、低順位が続いている。

 日本では1985年に「女性差別撤廃条約」を批准後に、国内法の整備に向けて、「男女雇用機会均等法」や「男女共同参画社会基本法」、「女性活躍推進法」等が制定された。これらの動きだけをみていると男女平等のとりくみが推進されているようだが、依然として国会議員や管理職に占める女性の割合が低く、働きたくても働けない女性が多くいる。

 男女がともに働き続け、仕事(ワーク)と生活(ライフ)の両立が可能となるような社会の実現をめざすためには、女性が出産や育児・介護においても、仕事を辞めずに働き続けることができる環境整備や、男性にも取得しやすい育児・介護休業や柔軟な勤務体制をはじめ各種休業制度の充実と待機児童の解消などが重要な課題だ。

 国連は、毎年11月25日を「女性に対する暴力撤廃の国際デー」と定め、11月25日から12月10日の世界人権デーまでの期間を「性差別による暴力廃絶活動の16日間」とした。

 性暴力には強制性交や強制わいせつ、DV(配偶者や恋人からの暴力)、子どもへの性的虐待、女性性器切除や戦時下の性暴力、セクシュアル・ハラスメント、ストーカーなどさまざまなものがある。また、セックスワーカーへの蔑視や、LGBTQへの攻撃などジェンダーにたいする暴力もある。

 警視庁が、公表した2022年のDV相談件数は、8万4496件で2021年と比べると、1454件の増加で、2001年10月の「DV防止法」施行後、最多となっている。

 現在、世界各国で、暴力やハラスメントをなくそうという動きが強まっている。しかし、日本においては、これまで官僚のセクハラ発言や大臣によるセクハラ擁護発言、国会議員によるLGBTQ当事者にたいする差別発言をはじめ、今年2月には、岸田首相や首相秘書官による同性婚を巡る差別発言が明らかになり、人権意識の低さが露呈された。また、性暴力を告発する「#MeToo」運動が世界的に拡がっている。日本においても各地で集会や抗議などをおこなっているが、これまであまり報道されていない。

 社会全体で暴力が人権侵害であり犯罪であるとの認識を共有するためには、地域・家庭・学校・職場だけでなく、あらゆる場での人権教育を充実させなければならない。また、被害を受けているのは女性だけではなく、被害男性もいる。現在、専門の相談窓口を置く動きも拡がっているが、暴力に苦しむすべての人にたいする支援体制の確立に向けて、「暴力・ハラスメント条約」の早期批准をかちとることが重要だ。

 部落差別や女性差別、障害者差別、LGBTQなどにたいする差別の撤廃に向けた闘いと、複合差別にもしっかりと視点をおいたとりくみが必要だ。

 2020年12月に「第5次男女共同参画基本計画」が閣議決定され、第6分野の「基本認識」「施策の基本的方向」「具体的な取組」のなかで「部落差別」が明記されたことは大きな前進である。

 私たちはこれまで同様、男女共同参画審議会委員の一般公募があれば積極的に応募し、委員会のなかで部落女性をはじめ、マイノリティ女性の声を反映させていこう。2022年5月に「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が成立した。今年2月、基本計画にたいするパブリックコメントが募集されていることをふまえ、中央女性運動部としてパブリックコメントを提出した。今後は、都府県、市町村で策定される基本計画にマイノリティ女性の声が反映されるように、とりくみをすすめよう。

 また、「旧優生保護法」によって強制された不妊手術の問題では、2022年2月大阪高等裁判所が国に賠償を命じる初めての判決を言い渡した。今後も、国家賠償訴訟を支援し、国の責任の明確化と謝罪を求めていかなければならない。ハンセン病家族訴訟においても、2019年6月に熊本地裁が国への損害賠償を命じたが、ひき続き、国の差別政策の誤りを明確にしていくために支援を強めていこう。

 さらに、夫婦別姓制度においては、今国会でも、「家族の一体感が失われる」と発言する自民党議員の反対で、法制審議会答申から四半世紀以上たっても実現していない。背景には「性別役割分業」意識が根強くある。身近なことから制度や慣習について見直すことができるような「ジェンダーにとらわれない意識」を積極的に形成していくことが重要だ。

 今日、新型コロナウイルス感染症が長期化し、失業者や年金生活者、パートやアルバイトなど不安定な就労実態にある女性の自殺者が急増するなど、格差や貧困、差別の問題がますます深刻化している。差別扇動や偏見による暴力事件を許すことなく、あらゆる差別の撤廃に向けて積極的にとりくむ必要がある。沖縄・辺野古の米軍基地問題においても、日本社会における差別構造の問題であることをしっかりと捉え、女性部としても反戦・平和の共闘運動を積極的にすすめていこう。

 第66回全国女性集会を5月20〜21日、兵庫県姫路市で開催する。すでに、兵庫県連女性部を中心に実行委員会が結成され、集会成功に向けたとりくみがすすめられている。

 オープニングには、ベトナムの子どもたちによるムーラン(ベトナムの獅子舞)が披露される。分科会は、7つの分科会にわかれて運営する。分科会によっては、学習講演形式の形ですすめる分科会もある。各分科会で、全国の部落女性のとりくみや課題を中心に、部落差別をはじめ、女性差別、障害者差別、ジェンダー平等をはじめ、複合差別にもしっかりと視点をおいた討論と実践交流をすすめ、活発な意見を出し合おう。

 女性をとりまく状況は大きく変化している。第66回全国女性集会での実践交流、討議の成果を活かし、部落解放運動だけではなく、さまざまな差別と闘う国内外の女性たちと反差別・反貧困のネットワークをつくることが求められている。

 昨年、私たちは全国水平社創立100年という大きな節目を迎え、あらためて「全国水平社創立宣言」の精神を原点に、新たな部落解放運動の展望を切り拓くために全力で闘い抜くことを確認した。今日、岸田政権は、長期化するウクライナ侵略戦争や激化する米中対立による「台湾有事」を口実に軍事大国化と大増税を強行しようとしている。このように、反人権主義、国権主義の政治が推しすすめられる状況に抗して、女性部が先頭に立って、憲法改悪に断固反対し、差別と戦争に反対する闘いを強化しよう。

 女性差別を許さず、ジェンダーによって役割を強制されたり、生き方を制限されたりすることのない男女平等社会の実現に向けて、部落女性の力を総結集し、第66回全国女性集会を成功させよう。

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