「解放新聞」(2023.04.25-3062)
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岸田首相は2月26日の自民党大会で「子どもたちに、日本を着実に引き継ぐため、憲法改正にもとりくんでいく」と表明した。そして「自衛隊の明記」「緊急事態対応」などを挙げ、「いずれも先送りできない課題ばかりだ。時代は憲法改正を求めている」と強調した。たしかに近年の各社での世論調査では、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻などを受け、自衛隊の合憲化や敵基地攻撃能力の保持の必要性を求める声が強まり、改憲について「賛成」が「反対」を上回っている。しかし、岸田政権がすすめている「憲法改正」は自民党改憲草案がもとになっており、これまで積みあげてきた平和と人権をなし崩しにしかねない項目がふくまれている。
まず、基本的人権について、現行憲法では「人間として当然に持っているものとして尊重される」とあるが、自民党改憲草案では「国家から保障されるもの」と位置づけられ、「緊急事態条項」や「公共及び公の秩序」という、あいまいな基準によって制限される可能性をふくんでいる。
また、現行憲法9条には「戦争放棄」と「自衛隊の非武装化」が明記されていて、基本的に集団的自衛権の行使は認められていないが、自民党改憲草案では集団的自衛権を認めることになっている。これは、日本が他国と軍事同盟を結び、第三国との紛争に巻き込まれる危険性を高めることになる。
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岸田政権による安全保障政策は、戦後の安全保障政策を実践面から大きく転換するものだ。2022年12月に閣議決定された「安保関連3文書」では、以下のおもな点が示された。
このなかで、とくに問題なのは、敵の弾道ミサイル攻撃に対処するため、発射基地などを攻撃する「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有を明記したことだ。これは、憲法や国際法の範囲内でおこなわれるとしているが、実際には先制攻撃とみなされる可能性が高く、専守防衛の原則を逸脱する。また、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の行使に必要な判断基準や運用方法、装備品の種類や数量などが不明確であり、国会や国民への説明責任が果たされていない。
つぎに、防衛費を5年間で43兆円程度に増額する計画だ。これは、GDP比で2%に相当する規模であり、日本の防衛費は過去最高水準になる。しかし、この増額の必要性が示されず、「数字ありき」といわざるを得ない。さらに、財源の一部を増税でまかなうことも決めていて、国民の負担が増すことになる。
このような重大な決定を、選挙で国民の信を問うこともなく、国会での審議も十分におこなわずに強行したことは断じて許すことはできない。
3
「放送法」の「政治的公平」に関する総務省の行政文書が流出したことで、当時の総務大臣だった高市早苗・経済安全保障担当相に疑惑が浮上している。高市大臣は、総務省の幹部や職員から「放送法」の解釈について説明を受けたことを否定しているが、文書には、その説明の内容や日時が詳細に記されている。また、総務省は、文書の作成や流出について調査をおこない、文書の正確性を確認したと発表している。
高市大臣は、自身に関する文書は「捏造だ」、「(文書が)差し込まれた」、「公訴時効が過ぎている」などといってごまかそうとしているが、これは真相を隠そうとする不誠実な態度であり、説明責任を果たそうとする姿勢は見えない。
高市大臣は、「放送法」の「政治的公平」について、政権の意に沿わない番組を批判し、放送事業者に圧力をかけようとしたことが疑われている。これが事実ならば、言論の自由や民主主義の原則に反する行為であり、許されることではない。
この間の「森友・加計学園」問題や「桜を見る会」問題、「旧統一教会」問題などでも、真に潔白であるならば、みずから率先して国民にたいして疑惑への説明をおこなうことこそ国会議員の真の姿のはずだ。
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安倍、菅政権を引き継いだ岸田政権は、戦争をする国へと向かう改憲をもくろみ、格差拡大と貧困化をすすめるアベノミクスなどの政策を引き継ぎ、立憲主義に反する政治を続けている。
私たちは、戦争への道をつきすすむ岸田政権の暴挙を阻止するために、「戦争をさせない1000人委員会」と連携し、「集団的自衛権」の行使容認の阻止や「戦争法」廃止の闘いにとりくんできた。
「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」は、毎月の「19日行動」のとりくみ、「戦争法」にたいする抗議行動・集会、違憲訴訟支援のとりくみを広範囲な人々を巻き込みながら展開してきた。
また、「憲法記念日」の5月3日には、通常の開催規模に戻した「新たな戦前にさせない!守ろう平和といのちとくらし2023憲法大集会」(東京・有明防災公園)への大結集をよびかけており、全国各地でも同様のとりくみが準備されている。
戦争する国づくりをすすめ、新自由主義路線にもとづき貧困と格差を拡大する岸田政権と対決し、立憲主義と平和憲法を守り、人権、平和、民主主義の確立をめざし、すべての市民と連帯して闘い抜こう。
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