「解放新聞」(2023.06.25-3068)
狭山事件の第55回三者協議が6月8日午後、東京高裁でひらかれた。弁護団が請求している鑑定人の証人尋問とインク資料の鑑定の実施について、検察官は2、3、5月と意見書を提出し、すべて実施する必要はないと主張。弁護団は、検察官意見書にたいする反論と事実調べの必要性を明らかにする意見書を提出することを伝えた。
三者協議には、弁護団は、中北龍太郎・事務局長、横田、青木、竹下、高橋、近藤、河村、七堂、小島、山本、指宿の各弁護人が参加。事前の弁護団会議には小野・弁護人もオンライン参加。中央本部の西島委員長もオンライン参加して署名提出を報告し、世論をいっそう高める決意を語った。
検察官は、2月と3月の意見書(3063号既報)に続き、5月25日、殺害方法・死体処理関係の新証拠への意見書を提出。鑑定人尋問の必要はないとした。今後、弁護団による反論の意見書の提出をふまえて東京高裁が事実調べについて判断することになる。次回は8月上旬予定。世論を高め、事実調べを実現しよう。
三者協議の前日の6月7日午後、「狭山事件の再審を求める市民の会」が、石川早智子さんとともに東京高裁を訪れ、事実調べを求める緊急署名―個人署名41万656筆と団体署名1320団体分を提出した。10月に提出した分と合わせると、個人署名は51万4577筆、団体署名は2344団体分になる。
提出には、鎌田慧さん(ルポライター、市民の会事務局長)、落合恵子さん(作家)、古今亭菊千代さん(落語家)、佐高信さん(評論家)らが参加。要請書を読みあげたあと、それぞれが訴えた。51万という署名が示している市民の声を受けとめて、狭山事件の事実調べ・再審開始をおこなってほしいと強く求めた。要請に同行した石川早智子さんも、一雄さんのえん罪を一日も早く晴らしたいと思いを訴えた。
署名提出時の要請書では、多くの新証拠が確定判決(1974年、東京高裁)の誤りと石川さんの無実を示しているにもかかわらず、確定判決以来、半世紀近くも事実調べがなく「公正・公平な裁判とはいえない」と指摘。鑑定人の証人尋問とインク資料の鑑定の実施を求めている。
提出後、東京高裁前で、メディアの質問に答えて、佐高さんは「誤審であることははっきりしている。過ちを正すことにはばかることなかれということを言ってきました」と報告。
落合さんは「なぜもう一回調べ直さないのか。こんなに長い放置は、人権、個人の尊厳からも理解できませんと話させていただいた」と。
古今亭さんは「証拠をそろえて、事件をもう一回見てくださいと言っていることがなぜ通らないと。ぜひ再審をとお願いしました」と。
鎌田さんは「裁判所はどれだけえん罪で絶望を与えてきたか。希望を与える裁判を。非識字者が脅迫状を書くなんてありえない。本人に会って、現地調査、証人尋問とか努力をして解決してほしい」と語った。
石川早智子さんは「石川一雄が、これまで60年、えん罪を晴らすため、精いっぱい生きてきた。その人生を本当の笑顔で終われるように。ぜひ鑑定人尋問、再審開始をと、精いっぱい思いを込めてきました」と語った。
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