「解放新聞」(2023.07.05-3069)
政府と東京電力(東電)は、福島第一原発事故により発生した「ALPS処理水」(=汚染水)について、放出に向けた海底トンネルと設備工事を6月に完了、真水を使った試験運転をすすめる。工事後の規制委員会の使用前検査、IAEA(国際原子力機関)の包括的報告書、韓国調査団の報告書などの結果をへて、夏から秋頃に汚染水の海洋放出の開始をめざす。
これに先立つ5月16日、福島県の市民団体「これ以上海を汚すな!市民会議」、「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」の共催で、「汚染水を海に流すな!5・16東京行動」がおこなわれた。この日、午前と午後に東電本店、岸田首相、衆院議長宛てに「理解と合意なき汚染水の海洋放出の中止を求める要請書」を提出。
「これ以上海を汚すな!市民会議」共同代表の佐藤和良さん(いわき市議)は、「4月のG7気候・エネルギー・環境相会合でドイツのレムケ環境相が「処理水の放出は歓迎できない」と明言した。海洋放出に反対の声が各国からもあがっている」と、東電に海洋放出しないよう訴えた。
一連の行動には、韓国から「脱核市民行動」の女性らも参加。韓国YWCAのユ・エスダさんは「韓国政府の汚染水海洋放出を容認するような態度に怒りを感じている。皆さんとともに反対の声をあげたい」。環境運動連合のチェ・ギョンスクさんは「韓国でも多くの市民が汚染水を心配している。海洋放出は、反対する多くの声を無視する「国家の暴力」だ。韓国視察団の派遣で海洋放出に「お墨つき」を与えるなら、韓国政府も共犯だ。いまからでも、海洋放出をやめて陸上での長期保管を決断してほしい」と訴えた。
夕方から、日比谷野外音楽堂での「汚染水を海に流すな!5・16東京集会」に、福島県や関東から500人が参加。韓国から市民団体の代表も参加した。
主催者あいさつで、「さようなら原発」よびかけ人の鎌田慧さんは「岸田首相はGX(グリーン・トランスフォーメーション)と言いながら、原発の汚染水をばらまいて環境を汚染しようとしている。金まみれの原発をふたたび推進しようとしている」と指摘。
「これ以上海を汚すな!市民会議」共同代表の織田千代さんは「汚染水の海洋放出は、「関係者の理解なしには如何なる処分もおこなわない」との福島県漁連、全漁連にたいする2015年の約束文書を反故にするものだ。放射能を拡散することは本当の復興とはいえない」と厳しく批判した。
福島県の小名浜(おなはま)機船底曳(そこびき)網漁業協同組合の柳内孝之さんは「12年前の原発事故で水産物は放射能に汚染され、漁業者は絶望の淵(ふち)に追いやられた。ようやく試験操業から本格操業への移行期だが、水揚げ量は事故前の2割にすぎない。タンクの汚染水漏れが起こるたびに福島の水産物は何度も拒否されてきた。この12年で福島産を除いた流通が確立してしまい、多くの仲買業者が廃業、福島の漁業再生を難しくしている。東電は漁業者などの理解なく「処理水」を処分しないとの約束を無視するのか。漁業者は納得していない」と漁業者として反対を訴えた。
終了後、日比谷公園から東電本店前と銀座を通ってデモ行進。「汚染水を海に流すな!」「海を汚すな!漁業を守れ!」などとシュプレヒコールをあげた。
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