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NEWS & 主張

「差別されない権利」認め 〜差し止め・賠償の範囲も拡大
東京高裁・復刻版裁判控訴審判決

「解放新聞」(2023.07.15-3070)

原告や支援者らに向け弁護団が「勝訴」を掲げる(6月28日・東京)

原告や支援者らに向け弁護団が「勝訴」を掲げる(6月28日・東京)

 東京地裁への提訴から7年あまりとなる「全国部落調査」復刻版出版事件裁判は、2021年9月27日の地裁判決後、東京高裁に舞台を移した。

 6月28日午後、東京高等裁判所第16民事部(土田昭彦・裁判長)が、地裁判決から損害賠償の対象と総額をさらに拡大し、地裁判決で認められなかった「差別されない権利」を実質的に認める控訴審判決を言い渡した。傍聴と判決報告集会には、24都府県から129人の原告・支援者らが参加。15都府県102人のオンライン集会参加をふくめ、参加者はのべ27都府県229人におよんだ。

控訴審判決報告集会にはオンライン参加をふくめ27都府県から229人が参加した(6月28日・東京)

控訴審判決報告集会にはオンライン参加をふくめ27都府県から229人が参加した(6月28日・東京)

 この裁判は、全国の被差別部落の所在地情報など一覧を「全国部落調査」復刻版と題する書籍として予約出版しようとし、出版差し止め仮処分後も、当該書籍の内容や「部落解放同盟関係人物一覧」と称する個人情報一覧の電子データをインターネット上に公表し続けていた示現舎にたいし、部落解放同盟と被差別部落出身者ら原告249人が、①「全国部落調査」復刻版の出版禁止と同電子データのインターネット上からの削除②「部落解放同盟関係人物一覧」のインターネット上からの削除③原告一人あたり110万円の損害賠償を求めたもの。

 一審判決では①の削除の範囲を25都府県に限定②の一覧はすでにネット上から削除済みだと認めず③原告の大半に5500〜4万4000円の損害賠償を認めたが、「プライバシー権の侵害」で判断し、原告が求めた「差別されない権利」は認めなかった。

 控訴審判決では①の範囲を25都府県から6県増の31都府県に拡大②は地裁判決を維持③の総額を488万6500円から550万円に増額した。また、憲法で認められた平穏に暮らす「人格権」が侵害されたとし、裁判例で初めて、原告らが求めていた「差別されない権利」を実質的に認めた、と弁護団は評価した。

 判決主文を聞いただけでは除外対象が多い印象で、一審判決から前進したのかどうか判然としなかった。弁護団が姿を現し、「勝訴」「差し止め範囲大幅拡大」と掲げると、待ち構えていた原告・支援者らがようやく喜びの声をあげた。

 日比谷公園内の日比谷図書文化館での報告集会では冒頭、西島委員長が「控訴審判決では「差別されない権利」が認められた。削除の対象も25都府県から6県増えて31都府県に。国会もこの判決に注目していた」とあいさつ後、片岡副委員長が原告代表あいさつ。弁護団から指宿昭一・弁護士、山本志都・弁護士、中井雅人・弁護士、河村健夫・弁護士が、判決とその意義について解説した。

 報告集会後、東京・霞が関の司法記者クラブでひらかれた記者会見には、指宿弁護士、河村弁護士、西島委員長、片岡副委員長が出席。4人の発言後、報道各社からつぎつぎに質問が出され、判決への関心の高さがうかがえた。

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