「解放新聞」(2023.07.15-3070)
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1974年の創設いらい、反差別と人権確立への貢献をめざす部落解放文学賞は今年で第50回を迎えることになる。
部落解放文学賞実行委員会の鎌田慧・代表は、つねに大衆運動とともにあった文学賞が減り、文化運動が弱くなってきていることが、いまの社会状況にあらわれているなか、部落解放文学賞の存在意義は大きなものがあり、今後も発展させていかなければならないと再三提起している。
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ここ数年は新型コロナウイルスが世界的に猛威をふるい、さらに追い打ちをかけるように昨年2月に勃発したロシアによるウクライナへの攻撃は終焉(しゅうえん)を迎えるどころかますます泥沼化しており、その戦争の残虐性は日々、目を覆いたくなるような悲惨で深刻な状況が続いている。さらにその戦禍によって世界の食料供給などさまざまなバランスが崩れ、世界的に大きな影響が起こり、燃料の高騰にはじまり日常的な物価上昇に多くの人々が困難を抱えている。
こうした状況に乗じて、国は国民の安全と安心を守るという都合のよい言い訳で軍事費を増大させ、平和憲法を実質上ないがしろにしようとしている。
そのことが原因かどうかは別にして、安倍元首相や岸田首相へのテロなど、驚くような事態がつぎつぎに起こっている。
5月に開催されたG7サミット(主要国首脳会議)は広島で開催されたこともあり、参加国のすべての首脳が原爆ドームを視察し一定原爆の悲惨を印象づけることはできたが、残念ながら核廃絶には結びついていない。ウクライナのゼレンスキー大統領もサプライズ参加をすることになった。しかし戦争終結には至らず結局は武器援助が中心となり、核の脅威は依然として解決には至っていない。
そして、それは人々の不安や焦りになり、不穏な事件が起きている。
人権の世紀といわれる21世紀に世界中が紛争をなくそうと努力を積みあげてきたにもかかわらず、悲しむべき事件や歴史に逆行するような事態にその背景を冷静に深く考察する必要があると考える。
そうした意味でも、部落差別をはじめあらゆる差別の撤廃に向け、反戦・平和と反差別・人権確立の立場から創作に励む人々が集う部落解放文学賞の重要性はますます高まっている。
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文学とは高い教育を受けた人の特別なものではなく、生活と密着した生活感あふれるもの、そして差別を受けてきた歴史や事実を語るものであり、その厳しい差別を懸命に生きてきたことを語ることで人間の尊厳を照らすものであるという考えのもとに部落解放文学賞は発足をした。生い立ちや日常生活のなかにある差別を捉え返すことで自分の生き方が大きく変わる。差別に満ちた社会変革のために、自己の変革をとげていく姿はまさしく部落解放の原点といえる。
さきに本紙で河内水平社の100年史を紹介したが、その100年史を識字生の「あゆんだ道」という文集をもって100年のあゆみとしたことは真に的を射たものであるとあらためて感じるものである。
これまで、反差別と人権確立を掲げてきた部落解放文学賞だからこそ生み出された作品も多くある。あらゆる差別をはじめ、それぞれの視点から苦しみ、喜び、いのちの尊さ、人権・平和への思いや願いをつづった作品を期待したい。
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