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差別のない組織づくりへ意識改革と実践を

「解放新聞」(2023.09.15-3076)

 「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(「女性差別撤廃条約」)の中心理念は、性別の役割分担にたいする固定観念を変えることにあった。

 日本政府は「女性差別撤廃条約」を1985年に批准後、男女平等に向けたとりくみとして「男女雇用機会均等法」をはじめ、「育児介護休業法」の改正や、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(「女性活躍推進法」)を制定するなど、法整備をすすめている。

 しかし、現実には女性にたいする差別が存在しており、性別による役割分業は当然のようにある。育児や家事、介護の労働時間は女性の方がはるかに多く、男女の賃金格差、管理職における女性の比率、非正規雇用に占める女性の比率など、雇用の分野をはじめ、女性の社会進出における具体的な男女間格差の実態は改善されていない。夫婦別姓制度についても、1996年に法制審議会(法務省に設置される審議会)が「選択的夫婦別姓を導入すべきである」と答申を出したが、当時、自民党が法案提出を了承しなかったために法案は提出されなかった。今国会でも、夫婦別姓制度について、「家族の一体感が失われる」と発言する自民党議員の反対で、答申から25年以上たったいまも実現していない。

 国会議員が条約の具体化に真剣にとりくまなければ差別撤廃はすすまない。その国会議員においても、2022年7月におこなわれた参議院議員選挙では、全当選者125人のうち女性の当選者が35人で過去最多となったが、衆議院議員は、全議員465人のうち女性は46人で、国会議員全体でみると女性は15・4%と、いぜんとして少ない状況だ。

 これまで政治家や官僚が、女性や性的少数者(LGBTQ+)への差別発言をたびたびおこなっている。今年2月には、岸田首相や首相秘書官による同性婚をめぐる差別発言もあきらかになった。また、少子化に関連して同性婚には「生産性がない」発言や、「(女性が)子どもを産まないのが問題だ」などの発言もあり、背景には「性別役割分業」意識が根強くある。女性にたいする差別意識や、日常生活・メディアのなかに存在するジェンダーバイアスなどに気づき、身近なところから制度や慣習について見直すことができるような「ジェンダーにとらわれない意識」を積極的に形成していくことが重要だ。

 男女平等社会の実現に向けた運動の活性化をすすめるために、部落解放同盟では、第58回全国大会(2001年)で「男女共同参画基本方針」を策定、採択し、男女共同参画プロジェクトの設置を決定した。その後、「男女平等参画社会実現基本方針」の名称や「基本方針」の内容を議論し、改訂をおこない第65回全国大会(2008年)であらためて採択した。さらに、「基本方針」改訂や組織内目標などについて見直しの議論をすすめ、「男女平等社会実現基本方針」(第2次改訂)案をまとめ、第73回全国大会(2016年)で採択した。

 この「男女平等社会実現基本方針」(第2次改訂)には、自治体での条例づくりをすすめるなど具体的な六つのとりくみや、11点の組織内目標を掲げ、原則として10年ごとの見直しとともに、中間年に検証をおこなうこととしている。また、2016年には、各都府県連に女性部の結成状況や、男女平等社会推進本部の設置状況などのアンケート調査を実施した。

 2021年の中間年では、再度、各都府県連にアンケート調査を実施し、その調査結果を集計し、課題や問題点が明らかになった。2022年1月に、アンケート調査結果をまとめ、4月の中央委員会で報告した。

 アンケート調査の結果、2016年調査で男女平等社会推進本部の設置が6都府県連だったが、2021年調査では15都府県連で設置されていた。また、組織内目標の一つである全国大会での女性代議員3割以上の参加の実現に向けたとりくみは、第71回全国大会(2014年)以降から、3割以上の女性代議員の参画目標を達成している。しかし、人材育成の問題をはじめ、「男女平等社会実現基本方針」(第2次改訂)を使って学習会を開催している都府県連が2016年調査同様、2021年調査でも少ないことがわかった。男女平等社会の実現に向けて、男性も女性も学習を深め、相互の意識変革をすすめるとりくみが必要だ。

 今後も、「男女平等社会実現基本方針」(第2次改訂)にあるすべての組織内目標の達成に向けて運動を展開し、具体的な課題へのとりくみを一つひとつ確実に積み上げていくことが必要である。差別なき人権確立社会をめざす部落解放同盟にとって、男女平等の組織づくりは喫緊の課題である。

 組織内において女性が力を発揮できる組織運営、運動になっているのかなど、女性への差別待遇、イエ意識や男尊女卑的な考え方が組織のなかに現れていないか、一方の性に偏らないような機関運営を取り入れることも重要だ。また、相談窓口の設置とそのための人材育成はじめ、障害者や、性自認・性的指向の違いによる性的少数者(LGBTQ+)の課題にもとりくんでいかなければならない。現在、パートナーシップ条例の制定やパートナーシップ制度を導入している自治体も増加しており、まずは学習会などを積み上げていく必要がある。

 さらに、部落解放同盟としてこれまでも役員への登用や、全国大会や中央委員会など、政策決定機能を持つ機関会議への女性の参画に向けてとりくみをおこなってきた。一定の成果を得ることはできたが、さらに女性の参画を促すには、組織の変革とさらなる意識改革が必要である。

 女性の役割を重視する組織の仕組みや、女性の意見が反映される組織の位置づけなどについて、本部が提案している中央執行部と都府県連の体制強化、拡大や人材育成の議論について都府県連でもとりくみをすすめ、差別のない組織づくりを積極的にすすめよう。

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