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実践と課題を持ち寄り、第56回全研の成功を

「解放新聞」(2023.11.05-3081)

昨年の部落解放研究第55回全国集会のようす(2022年11月15日・鳥取県米子市)

昨年の部落解放研究第55回全国集会のようす(2022年11月15日・鳥取県米子市)

 部落解放同盟は実行委員会を組織し、今年11月14、15日の両日にわたって、和歌山市・和歌山県民文化会館を主会場に、部落解放研究第56回全国集会を開催する。

 部落解放研究全国集会(以下、全研)は、部落差別をはじめあらゆる差別問題・人権問題の解決に向けて、幅広い活動研究や実践交流を積み重ねてきた。昨年の全研では、全国水平社創立100年を迎え、過去の運動の大いなる意義を後づけるとともに、気候変動、コロナ禍、ウクライナ問題などの地球的規模の課題、経済の低迷や格差の拡大、超高齢化、人口減少、貧困問題などの国内課題が山積するなかで、101年以降の反差別・人権運動が向かうべき方向を提起した。今年は、鳥取ループ・示現舎裁判や狭山第3次再審闘争など、現下の重要課題とともに、厳しい状況下での運動のめざすべき方向を模索する必要がある。

  「人権・平和・いのちを守る協働の取り組みをすすめ、あらゆる差別の撤廃と包括的な人権の法制度の確立を実現しよう」。この集会テーマのもとに全体会と五つの分科会、フィールドワークが展開される。すでに全国で参加体制がつくられているが、それぞれの闘いの現場から問題意識を持ち寄り、主体的な参加で集会の内容をより豊富なものにしてほしい。

 1日目は午後から全体集会がおこなわれる。戦後78年を迎えた今年、広島市で、平和教育副教材「平和ノート」から漫画『はだしのゲン』が削除され、大きな波紋を広げている。原爆が投下された広島で、苦難の時代を生き抜こうとする少年を描いたこの作品は、累計発行部数1千万以上、世界各国で読み継がれてきた。国際社会を分断する戦争や紛争が激化し、平和教育の後退が危惧される今日、記念行事では、講談師の神田香織さんによる講談「はだしのゲン」を予定している。地元からは、部落解放同盟和歌山県連池田清郎・副委員長から「和歌山県水平社創立100年〜創立までのさまざまな出来事と水平社の闘い〜」について報告を受ける。

 2日目はそれぞれの分科会で、直面する課題についての報告がおこなわれる。

 第1分科会では、今年施行された二つの個別人権法に関して「多様な性をめぐる人権課題」について仲岡しゅん・弁護士、「入管問題と外国人差別」について指宿昭一・弁護士から講演を受ける。また、地元に関わる報告として、大阪公立大学の安竹貴彦・教授から「近世紀州の被差別民」について、地元地域の女性を中心に構成される「なのはな会」から朗読「水平社が生まれるまで」、そして西光万吉顕彰会の飯田敬文・代表理事から西光万吉文化・平和活動奨励賞の創設と今後のとりくみについて報告を受ける。

 第2分科会では、DPI日本会議から崔栄繁・議長補佐が改正「障害者差別解消法」について、和歌山県湯浅町から「部落差別解消推進基本計画」に関わる町民意識調査・生活実態調査の報告を受ける。

 昨今、「部落差別解消推進法」の不備を補うものとして、各地で特色ある「条例」制定運動がすすめられているが、この分科会では埼玉県、三重県から、それぞれ運動を牽引する部落解放同盟の小野寺一規・埼玉県連書記長、舘龍二・三重県連書記長の報告がある。和歌山県からは県行政のとりくみが報告される。グローバル化する社会にあって、グローバルな視点はもちろんのこと、その対極にある地方・地域のとりくみがますます重要になっている。各地で「条例」制定運動にとりくんでいる人たちには、大いに参考になる分科会になると考える。

 「部落差別解消推進法」によって、部落問題学習へのアプローチが求められているが、現実にはさほどすすんでいない。第3分科会では、若者の差別意識について関西大学の石元清英・名誉教授、連合が今年おこなった就職差別に関する調査報告を連合の森啓記さん、学校現場における部落問題学習の推進に向けた奈良のとりくみを天理大学の奥本武裕さんから報告を受ける。部落問題学習の推進に関心を寄せている人たちにとっては大いに刺激のある報告である。

 企業のとりくみについては、りそな銀行の関根昭之さんと和歌山同和問題企業連絡会からの報告がある。いま、国連では「ビジネスと人権」が大きなテーマとなっているが、部落問題に関わる企業の連絡会はそうしたとりくみの先駆けといえる。国際的動向と歩調を合わせ、この潮流を確固たるものにしていきたい。

 狭山第3次再審闘争では、三者協議を中心に弁護団と検察の攻防が続いている。最終局面といわれる狭山第3次再審闘争の勝利に向けて、第4分科会では狭山事件再審弁護団から報告と提起がおこなわれる。石川一雄さんからは「石川一雄さんが語る冤罪の真相」と題したインタビュー動画が用意されている。

 午後からは再審が確定した袴田事件について、姉の袴田ひで子さん、弁護団の小川秀世・事務局長、袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会の山崎俊樹・事務局長からの報告を受け、袴田事件再審の教訓から、えん罪事件の無罪判決への課題を探る。

 第5分科会では、大阪公立大学の廣岡浄進・准教授から「古地図と地名問題について」、和田献一・中央執行委員から「「個人情報保護法」改正にむけた課題」が報告される。

 午後は、師岡康子・弁護士から「ヘイトスピーチ根絶に向けて」というテーマで講演を受ける。実効性を伴わない「ヘイトスピーチ対策法」を補う形で、各地でヘイトスピーチ規制条例の制定がとりくまれ、罰則規定を盛り込んだ条例の有効性が実証されつつある。ヘイトスピーチの根絶に向けた現状と課題を共有しよう。そして、現在私たちの最重要課題の一つである鳥取ループ・示現舎裁判については、片岡明幸・中央執行副委員長から控訴審判決の評価と、上告審の見通しが報告される。

 以上、準備されている講演、報告はいずれも重要である。これらを軸に、各地の闘いを持ち寄り議論と交流が深まれば幸いである。第56回全研の成功に向けた現地和歌山のみなさんのご協力に深く敬意を表しつつ、それに報いる意味でも実りある全国集会としたい。各地から多くのみなさんが参加され、積極的な議論がおこなわれることを期待する。

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